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3月31日

 本の紹介
「よかった、会えて」
 田辺聖子/実業之日本社

 中高年を主人公にしたユーモア小説集です。
 全編、テーマとなっているのは「出会い」
 作中の様々な人間が人生の中で誰かに出会
い、そこに生まれるふとした感情をリアルに
描いています。どの主人公もその辺にいそう
でありながらどことなくユーモラス。内心の
描写などが特に笑わせてくれるのですが案外
自分が考えていることも人から見ると面白い
のかもしれないと思わせます。
 僕はまだ学生で、社会に出ていないのです
がこの小説の主人公達は皆、社会に出てから
十数年〜数十年のベテランばかり。社会に対
する感情やささいな不満、生き方など、先に
広がるものをかいま見るようなリアルさもあ
ります。ユーモア小説と銘打たれていますが、
そのおかしさはどちらかといえば、苦笑とい
うところ。この作者は初めてなのですが、人
生の機微を知っているといった印象を受けま
した。


3月28日


3月25日

 今日は推理小説傑作選の紹介
「そして謎解きへ」
 山前譲 編/双葉者

 傑作短編集です。
 推理小説の短編は簡単にすっきりと読めるの
が長所ですね。最近、決まった作者のものしか
読んでいないので傑作選を借りてみました。

「タイタンの殺人」有栖川有栖

 土星の衛星、タイタンで起きた殺人事件。
 容疑者3人は皆、特殊な能力を持ったエイリ
アン、真犯人は誰!?
 という作品。宇宙人という要素を取り入れた
異色作品ながら推理はオーソドックス。やはり
設定が笑えます。星新一を思い出しました。

「トラップ アンド エラー」井沢元彦

 脅迫者を葬り去るための完全犯罪を企てた主
人公の誤算。
 過程もオチも面白く、なかなかの読み応え。

「陰画の構図」内田康夫

 人気番組のスタッフに降りかかった殺人事件。
 レポーターである主人公が事件を推理する。
 オーソッドックスな推理もの。ただ、被害者
の人物像が面白い。

「トルストイ爺さん」草野唯雄

 探偵役は文豪、トルストイ。
 ロシアの田舎で起きた殺人という変わり種。
 内容は単純なトリックものですが、設定に
よって読めます。

「青い地上」笹沢佐保

 プレイボーイの主人公に惚れていた令嬢が
殺され、容疑は主人公に。
 内容は単純ながら、プレイボーイの女性観
察眼から犯人を割り出すというのが面白い。
 ちょっと浮世離れした雰囲気も良いです。

「村で一番の首吊りの木」辻真先

 母子の手紙のやりとりで事件を語る。
 正直、手紙がリアリティーに欠けるし、事
件もベタ。母親の書いた手紙を読み返すと、
なるほど、と思えるのが少し面白いです。

「動く密室」中町信

 自動車教習所で起きた事件。車内密室殺人
と舞台がちょっと異色。
 内容も事件もちょっと単純か?

 と、いう感じでした。
 面白かったのは「トラップ アンド エラー」
と「青い地上」、あとは「タイタンの殺人」が
記憶には残りますね。豪華さには欠けるものの
小粒の楽しみがあった1冊。笹沢佐保は長編も
読んでみたいです。


3月23日

 ちょっと更新が滞ってしまいました。
 さて、本の紹介です。
「またたび回覧板」
 群ようこ/新潮文庫

 群ようこのエッセイです。
 何度も書いていますが僕はエッセイが好きで
いろんな人のを読んでいます。
 まじめなもの、ユーモラスなもの、趣味を書
いたもの、料理の話題。様々なものがあります
が読むときの感覚はだいたい同じ、おしゃべり
感覚なんです。
 筆者のおしゃべりを延々と聞いて、頷いたり
首を傾げたりするのが基本。特に感性の合う作
者だとそれまで疑問に思っていた事を解決して
くれたりするので楽しみは倍増です。
 まあ、疑問と言っても言われてみれば、とい
う程度のものですけど、下らないことほど面白
いんですよね。
 群ようこのこの本は爆笑エッセイ。
 お腹を抱えて笑えるのですが、それはやはり
自分の失敗を平気で書いてしまうからなので
しょう。この日記もエッセイのようなものなの
ですが、僕の失敗はとても書けないようなひど
いものなのでなかなか爆笑エッセイとはいきま
せん。作者のように陽気な失敗をしたい……か
どうかは微妙なところ(笑)


3月19日

 本の紹介。
「ポケットモンスターSPECIAL」
 シナリオ:日下秀憲
 まんが :真斗

 ご存じ、ポケットモンスターのコミックです。
 ゲームのノベライズやコミックは大抵、好き
になれないのですが、この作品は何故か買って
しまいました。普通、原作と違う人が絵を描く
とがっかりするものですが、真斗の絵柄はむし
ろ原作より好みで、ポケモンもかわいく、かつ
ダイナミックに描けています。
 さて、内容ですがゲームのポケモンは力押し
のRPGとひと味違い、手持ちのポケモンを繰
り出しそれぞれの得意な技を使わせて攻撃した
り相手を封じたりといった駆け引きが重要です。
 コミックはその部分を緻密に描いていて、頭
を使ったバトルが楽しめます。また、ポケモン
というものが単なる戦闘の道具やペットではな
く生態系に組み込まれた生き物として描写され
ており、しっかりと練り混まれた世界観を感じ
させてくれるのです。
 現在のところ、4巻まで出ており、3巻まで
の第一部に引き続いて第2部が始まっています。
 ポケモンを知らない方でもきっと楽しんで読
めるはず。お勧めです!


3月17日

 本の紹介。
「天使の卵」
 村山由佳

 この作品は、平たく言えば恋愛小説です。
 満員電車で出会った女性に一目惚れした主人
公は美大を目指す浪人生。精神病院に入院中の
父を見舞った彼は、そこで一目惚れの相手と出
会う。しかし彼女は、現在の恋人の姉で……。
 という話。最初からなんとなく悲恋を感じさ
せる設定なのですが、透明感のある文章が先に
待ち受けるであろう困難を、読者に忘れさせて
しまいます。
 主人公、歩太は浪人生で自分の将来もはっき
りしない不安定な状態。恋人はいるものの、先
に大学に受かってしまった相手に対してなんと
なく冷めてしまっています。
 そんな中で出会った恋人の姉を想うことで、
主人公の人生は突然、歯車がかみ合って前に進
み始めるのです。
 恋愛小説というものにはやはり作者の恋愛観
が出るのだろうと思いますが、村山由佳の書く
恋愛は本当に前向きで作者のポジティブな部分
を感じさせます。
 しかしながら、ただうまくいくだけの恋愛で
は小説になりません。そこに困難を作ったり壊
してしまったりして話を作るのは源氏物語の昔
から同じです。
 僕は自分で恋愛小説を書こうとはないです。
 自分の理想のようなものはあっても、それを
書いてどうなるというわけではないし、ただ生
ぬるくてだらだら続く小説になってしまうよう
な気がします。そう言う意味で、恋愛小説とい
うものは高見にある気がします。
 この本を紹介してくれた人は、結末まで読ま
なければ良かった、と言いました。
 それに関しては全く同感です。しかしたぶん、
この結末がなければ、恋愛小説ではないのだと
も思いました。


3月15日

 本の紹介。
「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」
 松本零士/秋田書店

 「宇宙の海は俺の海♪」
 というアニメ版の歌詞は有名です。
 西暦2992年。地球を開発し尽くした人類
は科学技術による平和におぼれ、堕落した日々
を送っていた。しかし、宇宙という名の海に自
分のロマンを見いだしたただ一人の男は、親友
と共に宇宙戦艦アルカディア号を建造し、宇宙
へと乗り出してゆく。その男の名はハーロック。
 外宇宙からの侵略者、マゾーンの存在に気づ
いたハーロックは堕落した人間を憎みながらも
愛する故郷の星、地球を守るため、仲間と共に
アルカディア号ただ一隻で戦いを続ける……。
 というストーリー。
 黒地に白い髑髏を刻んだ海賊旗、黒いマント
に顔の傷、そして眼帯とまさに海賊スタイルの
ハーロックは松本漫画の中でも特に開拓者精神
に富んだキャラクターです。宇宙最強の船と言
われるアルカディア号と共に、他の作品にも英
雄として登場する彼こそがおそらくは作者理想
の英雄像なのでしょう。
 ロマンや夢だけでなく悲しい過去や敵に対す
る哀れみの心を持ち、海賊と言うには繊細な彼
は女性人気の高いキャラクターでもあります。
 松本作品に共通する放浪という要素の他に、
侵略者マゾーンと人類の過去に対する謎解きや
ハーロック自身の過去を絡めたストーリーもな
かなか面白く、引き込まれます。惜しいのは未
完であること。続きを描いて欲しいです。


3月12日


3月9日


3月7日

 本の紹介
「東京見聞録」
 原田宗典/講談社文庫

 地元の名所は良く知らない、というのは誰で
も同じ事で、僕自身もネットの知人が東京へ来
たりする事でもなければあちこち行ったりはし
ませんでした。
 この本は、東京に長く住んでいる作者が東京
の原風景を求めてあちこちを訪ね歩くという内
容。結論から言うと、原風景が何なのかは全く
わからず、ただ混乱するだけなのですが、本当
に同感。東京という街は一貫性がないと言うか、
とにかくなんでもあります。しかも、訪ねてみ
るとどことなく変な感じのする場所が多いので
す。まあ、それはよく聞く有名な地名がすぐ近
所にあるというギャップから来るのかも知れま
せん。
 この前、僕は渋谷をぶらぶらしてきたのです
がこの作者も同様に、歌舞伎町、六本木、銀座、
浅草などを回っています。
 さて、この本、東京のガイドブックとしては
まるで役に立ちません。しかし、東京近郊の人
間でもそうでなくても読めばきっと笑えますし、
東京という変な街に対する理解が少しは深まる
かも知れません(笑)


3月5日

 本の紹介
「身辺怪記」
 板東眞砂子/朝日新聞社

 「死国」の作者、板東真砂子のエッセイです。
 さて、ホラー小説の作者でこの題名、さぞか
し奇怪な体験を数多くしているのだろうと思い
きや怖い体験というのは最初の一回だけで後は
まあ、普通のエッセイでした。
 ですがやはり、いろいろな事に対して感覚が
鋭敏で生まれ育った高知にいるときから郷土の
神や自然などに対して、畏怖のような気持ちを
持っていたようです。
 「死国」がお遍路によって死者を蘇らせる話
であったように、郷土の風習には土地神に対す
る畏れ、そして親しみが込められています。
 海外でも同様で、作者は旅行先のアイルラン
ドやサイパン、グァムなどで感じた郷土感覚に
ついて書いています。
 僕はずっと首都圏なのでそういうものにはあ
まり縁がないのですが、それでも「死国」など
では土地の恐ろしさを感じるのですから、そう
いう感覚というのは生来備わっている原初的な
ものなのかも知れません。
 さて、次あたりにはいよいよ「死国」を読ん
でみようと思います。


3月4日

 本の紹介
「古武術からの発想」
 甲野善紀/PHP

 僕は剣道をやっていたせいか、武術好きで時
代劇などが同様の理由によるのですが、戦うと
いう事に魅力があるのではなく、武術自体にそ
のおもしろさがあるのだと思っています。
 もちろん、相手を倒すことを前提にしない武
術には意味はないのですが、剣道などでも上級
者になると肉体の鍛錬と言うことではなく、人
間の能力の高さを思い知らされます。
 もちろん、力や速さによって強くなることは
できます。それは誰にも自明なのですが技の凄
さというのは体感してみないとなかなかわから
ないものです。
 この本を読んで思い出したのは高校の頃の柔
道の先生の話で、作者の甲野氏と同様、武術に
とどまらずあらゆる事にその考え方や発想を用
い理路整然と話をする人で、武術家と言うとや
はりそういうイメージがあります。
 武術的発想というと、精神論のようなものが
思い浮かぶかと思いますが、武術というのは技
ですからそれを追求するには論理的な考えが必
要です。しかし、科学的に追求するというのと
はまた違います。この本の中にも科学者とやり
とりする話があるのですが、科学というのはま
た物事を一定の枠に当てはめることであるわけ
で、今までにないものを新しい見方で見ること
はなかなかに難しいとわかります。それは、武
術に関してもまた同じで、伝統という古い型に
はまってしまい、発展がなくなるばかりか本来
の意味まで失われてしまったりします。
 この本は古武術について語った本なのではあ
りますが、古武術を紹介すると言ったものでは
ないのです。その分、敷居が高くはありますが
武術そのものに興味のない人でも、甲野氏が古
武術を研究する過程で得たものを断片的ながら
知ることは出来ます。
 温故知新といいますが、科学という先入観に
よってかえって硬直してしまいがちな思考を一
新してくれるかも知れません。


3月2日

 本の紹介
「塗仏の宴 〜宴の支度〜
      〜宴の始末〜」
 京極夏彦/講談社ノベルズ

 京極堂シリーズの最新刊です。
 この本は、とにかく厚い!
 上下巻あわせて1200ページを越える大長
編です。
 上巻、宴の支度はぬっぺらぼう、うわん、お
とろし、ひょうすべ、わいら、しょうけらとい
う六つの妖怪の名を冠した短編。そこで語られ
る事件はあるおおきな流れをそれぞれの主人公
から見た視点で語っています。しかしこれらの
話は統合するとつじつまがあいません。それを
読み解くことのできる京極堂こと中善寺秋彦は
完全に沈黙。しかし、この話はいつもと違い、
彼の友人である小説家、関口巽が巻き込まれて
いるのです。怪しげな宗教団体、拳法の道場、
占い師、企業……。様々な人間が、消えた村を
巡って跳梁跋扈しながら下巻の「宴の始末」に
続きます。
 で、読み終わった感想なのですが、どうも
うさんくさい(笑)
 まあ、屁理屈というか、詭弁を弄する京極堂
に振り回されるのは読者も同じなのですが、こ
の作品は今までのものとは勝手が違い、仕組ま
れたものであり、京極堂はその呪いを落とすべ
く行動するわけです。
 しかし、京極堂のような存在は一人だからこ
そ魅力なのであり、同様な能力を持った人間が
他にも出てくると世界観そのものに納得がいか
なくなってしまいます。
 読んで楽しめないわけではないですが、どう
にも疑問の残る作品でした。


3月1日



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