「チェーン・スモーキング」
沢木耕太郎/新潮社また、沢木耕太郎のエッセイです。
この人の書くものにはやはり強く惹かれると、読んで再確認しました。
この作者の周囲には、様々な人生が渦巻いています。作家という職業上、様々な人間と出合う機会はあるでしょう。しかし、エッセイに書かれているのは必ずしも有名な人間のことではなく、タクシーの運転手であったりバスでシルバーシートに座り、老人に席を譲らなかった男性だったりするわけです。
結局、いろいろなものに出会うために必要なのは行動だけではなく、眼であり耳であるのだと感じます。
レストランで他人の会話を耳にしたり、ふと知らない誰かの人間関係を垣間見たりする事によって、他人と自分の人生が交錯することもあるとのでしょう。
さて、このエッセイ、題名の意味が全く謎です。作者は煙草を吸わないし、別にニコチン中毒の人間が出てくるわけでもないです。
しかし、沢木エッセイにははまります。きっと、図書館へ行ったら次も沢木を借りるでしょう。僕にとっては、そんな意味を持つ題の本でした。
「11人いる!」
萩尾望都/小学館文庫いまさらという気もしますが、萩尾望都の名作SFコミックです。
宇宙大学の試験会場、10人のチームを組んで宇宙船に乗り53日間のサバイバルを行うという最終過程で、宇宙船に乗り込んだメンバーは11人いた。果たして、11人目の余計なメンバーは誰なのか?
そんな状況下で様々なトラブルが一行を襲う……といった内容。
物語の中心となるのは直感によって人の嘘を見抜くことが出来る少年タダ、そして女と見まがうばかりの美少年、フロル。
猜疑心に満ちた中に少しずつ生まれる友情や信頼。少しずつ明かされたり深まったりする謎。目の離せない物語の展開に、すっかり虜になってしまいます。
実はこの作品、題名も内容も知っていながら今まで読んだことがなかったのです。
が、これまで萩尾望都の作品を読んでいなかったというのがあまりに悔しくなるほど素晴らしい作品です。
次は「スター・レッド」を読んでみる予定です。
「御手洗潔のダンス」
島田荘司/講談社有名な御手洗潔を初めて読んでみました。
なるほど、御手洗は日本のホームズと言われたわけがよくわかる作品でした。
その変人ぶり、博識ぶりはホームズで植え付けられた「探偵」のイメージそのもの。
友人の石岡君が事件を書き残しているというのもホームズシリーズを彷彿させます。
こういった形でホームズを引きずっている御手洗シリーズは決してオリジナルを越えられない。しかし、それはもちろん作者も承知のはず。それだけ作者はホームズを認めているのだと言うことでしょう。
さて、この作品で面白かったのが浅草周辺の地名がそのまま出てくること。
浅草は何度も言っているのですが、印象的な建物が多く、文章で書かれても目に浮かぶようで親しみやすいです。
起こる事件は荒唐無稽なものばかりで、登場人物も現実に存在するとは思えないほど存在感の濃い人間ばかりです。
しかし、ミステリに求められるのは現実感ではなく、非日常性なのだと実感できる1冊でした。
「ばかのたば」
わかぎえふ/集英社文庫中嶋らもの主催する劇団「リリパットアーミー」をご存じでしょうか?
著者わかぎえふは中嶋らものマネージャーにして女優なのですが、この人はこれまで山のように転職を繰り返し、その時の経験を著書「OL放浪記」で語っています。
僕は元々、中嶋らものファンで、この作者の本は中嶋らものコーナーで見つけました。
しかし、弟子だからと言って師匠に劣るなどとんでもなく、どちらの書いた本も抱腹絶倒もの。中嶋らものナンセンスさもすばらしいのですが、わかぎえふの豊富な失敗、見聞も捨てがたく笑いたいときには必読です。
さて、この「ばかのたば」は著者が劇団の知人の馬鹿さ加減を書いたもの。ですが、そのレベルたるや想像を絶するものがあるのです。そんな知人を笑いながらも自分の失敗などを披露し、同列に並べてしまうのはさすがに女優、と思ってしまいます。
人に語って笑ってもらえるなら、自分もバカでいいですよね?(笑)
「スタートレック〜叛乱〜」
アメリカの有名SFテレビドラマ、スタートレックの劇場版です。
未知の宇宙を調査し、連邦や異なる文明を持つ種族間で起こる様々な事件を解決する宇宙船、USSエンタープライズを部隊に繰り広げられるドラマを描いた作品は、日本でこそそれほどメジャーではありませんが魅力アル世界観や人物にはトレッキーと呼ばれる熱心なファンがついています。
僕はTVシリーズを全部見ていると言うほどではないのですがスタトレ好きで、今回も映画に誘われて行ってきました。
人口わずか600人の惑星へ調査に赴いたエンタープライズのアンドロイド、データが暴走。彼を止めるために現地へ到着したエンタープライズ号のピカード船長は連邦の陰謀を察知。非人道的な作戦を止めさせるため、たった5人の乗組員と共に叛乱を起こす…、というストーリー。
感想としては、いつものスタートレックが長くなっただけなのですが映画ならではの特撮やロケ、そしてアクションシーンは見応えがありました。いつもは船上で指示を出すだけの船長も、今回は自ら惑星に降りて大活躍です。恋あり、冒険ありの豪華な出来には大満足。
テレビシリーズのスタートレック・ネクストジェネレーションは、関東地区なら月に一度、深夜にやっています。
機会があったら見て下さい。
病みつきになること間違いなし!
「まどろみ消去」
森博嗣/講談社ノベルズ森博嗣の短編集です。
実を言うと、犀川創平シリーズと思って借りたのですがそうでなくて少しあてがはずれてしまいました。少しは出て来るんですけどね。
さて、この短編集、ミステリかと言われると難しいものが多いです。しかしながら、登場人物が奇妙に論理的な世界にはなかなか、はまります。この作者は言葉で人を騙すのが好きというか、物語的には謎でもなんでもないのに読者は先入観を持つことによって勝手に彼のトリックにはまってしまうわけです。
特に好きなのは「優しい恋人へ僕から」で森博嗣独特のロマンチック(笑)な世界を読むことが出来ます。
人を煙に巻いたような本で、森博嗣初心者にはあまりお勧めしませんが、ファンなら楽しめるはずです。