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書感です。 「バトル・ロワイアル」 著者:高見広春 出版:太田出版 定価:1480円 初版:1999年4月15日 関連:映画「バトル・ロワイアル」 2月の中頃に見に行った映画「バトル・ロワイアル」の原作小説です。本作の書感は映画との比較抜きには語れないな、と思います。 太平洋戦争に敗北しなかったもう一つの日本。そこでは軍の実験プログラムとして毎年中学生50クラスの生徒に殺しあいをさせていた。主人公、七原秋也のクラスもその一つに選ばれ、修学旅行の途中に政府に拉致され、瀬戸内の孤島へと連れて行かれる。最後の一人となった者だけが生き残れるバトルロイヤル。彼らは本当に殺し合うのか……? バトルロイヤルと言うのは元々、格闘技の試合形式の一つ。 複数の人間が戦って最後に残った一人だけが勝者となるものです。どんなに強くても残り全員が団結して襲ってきたらひとたまりもない。弱くても巧妙に立ち回り、疲労した人間とだけ戦えば勝てるかも知れない。強い者が勝つとは限らないのがこのルールなのです。 さて、この作品は元々ミステリー小説賞やホラー小説賞などに応募された作品です。前者では一次選考も通らず、後者では最終選考まで残っていながら「不愉快」という評価を受けて選に漏れています。 映画「バトル・ロワイアル」では監督の深作欽二が自分の戦争体験を投影してメッセージ性の強い作品に仕上げてはいますが、原作の方は高見広春自身が述べているように完全なエンターテインメント作品なのです。 映画や小説にサバイバルものというのは数多く存在しますね。それらの中ではもちろん殺しあいが行われ、多くの人が死にます。そして主人公が最後に生き残る。小説「バトル・ロワイアル」においてもその基本は何も変わりません。 ただ、主人公達が中学生であること。そして、本人の意思に反して殺し合いをせざるを得ない状況に追い込まれる事です。 通常の状態ではどんなに憎んでいてもまず相手を殺そうなどとは思いません。しかし、それが許可されていて、しかも相手の生存=自分の死だったらどうなるのか。殺したくないと思っていても相手が襲ってきたらどうするのか。 恐怖や疑心暗鬼が生徒達を蝕んでいきます。 小説「バトル・ロワイアル」はもちろん、映画よりも登場人物達の内面などが深く掘り下げられていて設定なども細かくなっています。映画では中学生離れした知恵と楽天的な正確で大活躍した三村も小説では様々な葛藤に悩まされます。また、容赦なく人を殺していった相馬光子にはそうなるだけの理由があり、人間的な一面を覗かせる場面もありました。また、最大の敵となる桐山は小説だと何もかもに天才的な才能を発揮する人間という設定で、サバイバル小説のライバル役としては魅力的な役所です。 「バトル・ロワイアル」は小説として面白い作品です。 しかし、同時にとてつもなく嫌な作品であることに代わりはないのでしょう。ですがこういった作品が問題小説として世に出なくなるのなら、世の中にあるアクション映画やホラー作品なども同列なのではないか、と思います。 そう、結局は書く方ではなく見る方の問題なのです。 書感です。 「陰陽師」 著者:夢枕獏 出版:文春文庫 定価:476円 初版:1991年2月10日 関連記事はこちら NHKのテレビドラマも「陰陽師」も終了したので早速、原作を読んでみました。ドラマの方は当初、雰囲気は悪くないと思っていたのですがこれといったところもないまま終わってしまったという感じです。予算があまりなかったのかセットや鬼の表現などがいまいちだったのはまあいいとして、脚本に面白みがないのは残念です。 さて、原作を知っていた人は口をそろえてドラマ、陰陽師を酷評していましたが読んでみて納得。実を言うと夢枕獏の作品を初めて読んでイメージが大きく変わりました。 夢枕獏=伝奇ロマンという固定観念があって菊池秀行のような作風を想像していただけに平安時代というゆっくりとした時の流れを感じさせる「陰陽師」に酔ってしまったような気分。 平安時代、陰陽師と呼ばれ鬼や霊といった闇の存在を相手にする人々がいた。その中でも並はずれた力を持つという安倍晴明は親友、源博雅と共に様々な事件を解決する……。 ドラマ「陰陽師」では稲垣吾郎が演じ、孤独感の強い陰のある人物として描かれていた晴明ですが、原作の方では以外と陽気で飄々とした人物として描かれています。 鬼は人間の心の闇から生まれます。晴明が陰陽師として優れているのはその闇を知り尽くしているからとも思えます。 それでいて、世を捨てずに人と関わり合っていられるのは博雅というあまりにも真っ直ぐな人間が側にいるからです。武士としての剛直さと音楽を愛する風雅な心を併せ持った博雅もまた、晴明に負けないだけのヒーローなのです。 「陰陽師」のストーリーは基本的に晴明と博雅の会話でほとんどが進みます。博雅の話す宮中の噂や誰かの困り事。晴明の語る陰陽の蘊蓄や事の真相。二人で酒を飲みながら夜が更けていくという時間の流れに乗って、読者は平安時代の空気を楽しめます。 「趣のある」という言葉がぴったりくるこの「陰陽師」 時にはミステリのような推理を交え、時には本物の鬼と遭遇し、と言った具合にまるで飽きさせません。ゆるやかにはじまり、余韻を残して終わるという話運びは短編としてよく出来ています。傑作と言われるだけの作品です。 書感です。 「ドラゴンクエストVIIのあるきかた」 著者:CB'S PROJECT 出版:エニックス 定価:1238円 初版:2001年4月23日 関連はこちら ドラゴンクエストVIIに夢中になっていたのは去年の夏のこと。早いものでいつの間にか10ヶ月が経過しています。 この本はいわゆる攻略本ではなくて、とにかくドラクエをやりこんでいろいろ調べてみようという企画ものです。述べ5000時間におよぶその作業量には脱帽です。 読んでみるとほんとに懐かしい言葉ばかり。自分で遊んでいたときに苦労した事や、楽しかったことを思い出してしまいます。しかし、そんなドラクエも「モンスターを全部なつかせる」とか「一度の戦闘で経験値100万をかせぐ」などの目標を掲げてのプレイとなるとほとんど苦痛としか言いようがないでしょう。もちろん自分ではそんなことやりませんが、そこまでやってそれを出版しようという企画が成り立つ事そのものがドラクエというゲームの偉大さの証明ではないでしょうか。 本としてはただそうやって時間をかけただけではなく、普段なにげなくやっていても気づかない事や、ドラクエならではの芸の細かさ、そしてあちこちにあふれた遊び心などを紹介していきます。生き生きとした仲間たちや作りこまれた村や街のおかげでプレイヤーは深くゲームに没入できるのですね。 モンスターの生息地域を調べて、その時代による移り変わりに歴史を見たり、全世界の人口を調べたりといったコーナーでは執筆者達も自分の想像を楽しんでいるように思えます。 最近はゲーム雑誌などでも自分のやりこみを投稿するコーナーがあったりしますが、ただレベルを上げたり早く解いたりといったプレイだけではなく、自分で想像を広げて楽しくするという事をこの本は教えてくれるような気がします。 それこそドラクエのプレイにおいては王道ではないでしょうか。ドラクエをやっている人ならば読んでみて損はないと思える一冊でした。 書感です。 「陰陽師 飛天の巻」 著者:夢枕獏 出版:448円 定価:448円 初版:1998年11月10日 関連書感はこちら 先日紹介した「陰陽師」の二巻です。同じシリーズの本は続けて読まないという傾向があったのですが、これは面白かったのでつい手が伸びてしまいました。続きものではないのでゆっくりと楽しんだ方が得かな、とは思うのですが。 平安の都を闇から守る陰陽師、安倍晴明と親友の源博雅。 二人で酌み交わす酒の席には様々な相談事や怪異が話題となる。「ゆくか」「ゆこう」平安のゆったりとした時の流れの中、友情で通じ合った二人は次々と事件を解決していく……。 陰陽師は古今東西の術に通じ、天皇に仕えて都を守る職業。 しかし、短編中では晴明の宮仕えの様子は最初に少し紹介されたきり出てきません。 宮中の噂を仕入れて晴明に話すのはいつも博雅。しかし、不思議と晴明はあらゆる話に通じています。 「式神か」「そんなものだ」 博雅自信も、晴明の使う術についてはほとんど知識がありません。それでも晴明は博雅を自分と対になる存在として認めています。「教えられなくても真理を知っている」というのが晴明の博雅評。 この「飛天の巻」ではそんな博雅の「良い漢」ぶりが際だっています。それは晴明にとってだけではないのです。ドラマの「陰陽師」では嫌な権力者の代表として書かれていた藤原兼家も原作の方では博雅の人柄についつい甘えてしまうというような描かれ方。博雅の笛は万人の心を慰め、素朴でまっすぐな人柄は男女の分け隔てなく好かれています。 シャーロック・ホームズに対するワトソン、という役割ではないんですね。人の心の闇に通じた晴明は、ともすれば忘れがちになる人の良さというものを博雅から感じているのではないでしょうか。憎しみや怒りは、あくまで人間の闇の部分でしかありません。光があるからこそ、闇も生じるのです。そのよどんだ闇を始末する陰陽師とコンビを組むのに、これほどの人物は他にいないでしょう。 希代の陰陽師、安倍晴明と共に、源博雅の活躍もまたあるのです。 さて、僕は結局のところ、iBookを買ってしまいました。 「しあわせのわけまえ」 著者:浅川純 出版:講談社文庫 定価:580円 初版:1995年7月15日 予備知識もなく適当に見繕って借りてきた本が面白いと世の中にはまだまだ傑作があるんだろうなって思います。この本もそんな中の一つです。 朝から晩まで猛烈に働く日本の会社員。上司に部下、顧客といった会社の人間関係だけでなく、家族の中にもそれぞれの思惑があって人は生きている。ビジネスマンとその家族を襲う突然の事件を描いた短編集。 解説の部分ではこの本、「カイシャイン・ミステリー」と紹介されています。ミステリと言っても殺人や誘拐など犯罪的な事が起こる事件はまるでなく、登場人物達の意図が交錯しながら事件が進んでいくというところに面白さがあります。思惑があるのは自分だけではない、騙し騙されるというコン・ゲームのような展開です。しかし、不思議と勝ち負けがなくて、痛み分けというよりはお互いにうまくやったという結末に落ち着くことが多いのがうまいところ。表題作の「しあわせのわけまえ」などはまさにそういった感じの話です。 中でも良かったと思うのは「キャンドルサービス」という短編。東大ででありながらアルバイトでバーテンを続けている若者が自分に心を許してくれる客のため、自分の頭脳と様々な情報、コネを駆使して活躍するという話です。 他の登場人物達が会社や家庭という枠組みに縛られている中、彼だけは完全に自由な人間。株価の操作を仕組んだのも資産運用に失敗して首が危ういお客のためなのですからかっこいいです。 「熱砂のほとぼり」は中東へ出張へ行っているサラリーマンの元に奥さんが離婚届を突きつけにいくという話。しかし、不運な事に湾岸戦争が勃発し、人質となってしまいます。お互いが難いわけではない、しかし仕事も大事、自分の幸せも大事という難しい状況。安易に家族の絆を振りかざさず、普通の家庭に戻っていく様子がリアルでした。 360ページの文庫本で6編なのでどれもそこそこの長さがあります。一片一片はアイディアだけでなく、背景などもよく練り混まれており、浅川純は丁寧に話を作る人だと感じました。 代表作の「社内犯罪講座」も探してみようと思います。 今日はゲームの紹介です。 最近はまってます。 「ファンタシースター オンライン ver.2」 機種:ドリームキャスト 開発:セガ ジャンル:ネットワークRPG 関連:ディアブロII ちょうど1年ほど前、パソコンのネットワークRPG、ディアブロ2にはまっていました。僕はパソコンゲームってほとんどやりません。ゲーム専用機の方が操作しやすいし確実に動きますからね。それでもやってみるくらいネットワークRPGというジャンルへの興味が強かったわけです。 ですからセガが「ファンタシースター オンライン」を出したときはかなり興味を惹かれました。「ファンタシースター」は元々、セガの名作RPGのシリーズ名です。それをオンラインで復活させたのがこの「PSO」僕がプレイしているVer.2はその改良版に当たります。 異なる惑星への移民のため、派遣された宇宙船パイオニア1は地表の調査を終え、本格的な移民船パイオニア2が母星から飛び立った。パイオニア2がパイオニア1との交信を始める寸前、突如起こった大爆発によりパイオニア1は沈黙。事態を重く見たパイオニア2の総督はハンターズと呼ばれる賞金稼ぎに惑星ラグオルの調査を依頼する……。 プレイヤーはハンターズの一員となって惑星ラグオルの探索に加わります。ポリゴンで作られた3Dの世界で、主人公を自在に操作して敵と戦います。ネットにつなげないオフラインモードでは一人で探索を続ける事になりますが、一度ネットにつなげば自分と同じように惑星ラグオルに降りようとしているハンター達が大勢います。友達同士でプレイしたり、知らない人とのコミュニケーションを楽しんだりと遊び方は多彩。 チャットを楽しむためにドリームキャスト用のキーボードまで買ってしまいました。 僕はこれまでセガのゲーム機と相性があまり良くなくて、多少やりたいゲームがあってもセガのマシンは買いませんでした。しかし今回はPSOのためだけにドリームキャストを購入。 もちろん値段が9800円まで下がっていることもありますが自分でも驚きです。しかし、実際始めて見るとセガという会社を見直さざるを得ません。今まで食わず嫌いだったような気もします。特に優れていると感じるのはネットワーク接続の機能でしょうか。最初から付属のソフトを使って本体に接続のための情報を記録するので、ゲームごとに設定する必要もありません。ネットワークへの対応を見越した設計ですね。セガにはこれからもあちこちでがんばって欲しいと思います。 PSOのためにけっこう出費をしてしまっていますが、この後半年くらいPSOで遊んで取り返す予定。 もしプレイされている方がいらっしゃったら声をかけて下さいね。 書感です。 書感です。 書感です。 書感です。 親戚に子供が産まれたので、プレゼントに絵本を買いに行きました。まだ生後十数日なので、もちろん読めるようになるには時間がかかるでしょうが、人間が生まれて始めて目にする本を選ぶ、というのは貴重な体験ですよね。 「寛永武鑑 本伝御前試合」 著者:吉川英治 出版:講談社 定価:1800円 初版:1997年9月7日 これは吉川英治、幻の作品らしいです。 本の背表紙にも吉川英治と並んで、霜田史光という名前があります。借りるときは合作かとも思ったのですが、どうやら解説を読むと吉川英治が霜田史光名義で書いた作品ということのようです。霜田史光というのはあまり聞き慣れない名前だと思いますが、詩人であり大衆文学作家であった人で剣客ものの小説などを書いていたらしく、霜田史光病気の折りに吉川英治が代わって「本伝御前試合」を執筆したとの事。そのいきさつだけでも本になりそうですね。 寛永十一年、全国各地より名だたる剣豪が柳生但馬守の屋敷へと集まった。武家大名、町方、そして将軍家。始まる試合に皆が胸を躍らせる。やがて始まる試合はどれを取っても天下に恥じない名勝負ばかり。しかし、そこにたどり着くまで、彼ら剣豪達には様々な苦労があった……。 実在、架空の剣客を合わせて十数名もの人物が登場するこの「本伝御前試合」は剣豪小説と言うより人情時代劇といった雰囲気が強いです。剣で名をとどろかせる者といえども人間。 師匠や親、妻や子など周囲には様々な人々がいて、それぞれに負けられないだけの理由があります。ある者は死んだ親の無念を背負い、ある者は一家の行く末を賭けて試合に臨むのです。試合の描写からそれぞれの回想へと移る手法はなんとも映画的。語り口調は講談そのままで、少しレトロな時代劇を見ているような気分になります。 一勝負ごとに短編になっていて、一冊の中で七番の勝負について語っているのですが残念なのは七番目の勝負が途中で終わってしまっている事ですね。霜田名義で書き続ける事ができなくなったのでしょうか? こうなると吉川英治という人物そのものについても興味が出てきます。数多くの歴史ものを手がけた氏ですが、その本人にも歴史ありというところですね。 「バガボンド」などで割と時代劇について興味を持っている人も多いのではないかと思います。ちょっと人情が鼻につくかも知れませんが、ただ強さを求めるだけではなく、武士道というものにロマンを描いた面白い作品になっているので読んでみる価値はあると思います。 書感です。 「墜ちていく僕たち」 著者:森博嗣 出版:集英社 定価:1500円 初版:2001年6月30日 さて「スカイ・クロラ」に続いて森博嗣の新刊。 ハイペースでありながら毎回違うものを書いていける作家ってなかなかいないですね。この「墜ちていく僕たち」はこれまでのミステリシリーズとも「スカイ・クロラ」や「女王の百年密室」などとも全く違う作品になっています。 「墜ちていく僕たち」は突然異性に変わってしまうというテーマを共通とした中短編小説集です。昔から、男女の入れ替えというテーマは数多くあります。主人公や周囲の混乱ぶりをコミカルに描いた作品が一般的でしょうか? 性転換というテーマだと今度は重いものになりますね。 しかし「墜ちていく僕たち」はやはり森流。登場人物達もひと味違うようです。 それぞれの主人公達の生活は様々で、普通に大学生活を送っていたり同人作家をやっていたりします。皆、似ているのは流されやすいというところでしょうか。なんとなく環境や周囲に流されてしまう彼、彼女らは男女が変わってしまっても段々とそれに適応してしまいます。 人間の精神というのは器が変わってしまえば変わってしまうものなのか、それとも社会が男女という形を作っているためにそこにはまってしまうのか。 性別が変わることで彼らはメンタリティも変化します。 そもそも、個人をその人たらしめているものはなんなんでしょうか。「スカイ・クロラ」でも書きましたが、森博嗣の小説には人間の連続性に疑問を感じさせられるようなものが多いです。奇想天外な内容でありながらも、もしかしたら人はこんな状況においてこういう反応をするかも知れない、と思わせるような微妙なリアリティがあります。 「我思う故に我あり」という言葉がありますが、個人を個人としているのはそれに対する疑問なのではないでしょうか。 そもそも個人という概念そのものが、それが何かを問うためにだけ存在するのかも知れません。 |
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