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1月16日

 書感です。

「捩れ屋敷の利鈍」
 著者:森博嗣
 出版:講談社ノベルズ
 定価:700円
 初版:2002年1月10日
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 この本を買って電車の中で読もうとしたら、何よりも驚いた事が一つ。なんとこの本、最初のページと最後のページが黒い紙で封印してあるんです。読もうとして折り目の付いているところから破り始めたら電車が揺れて思いっきりいびつに切れてしまいました。後で冷静になって見てみたら端と端にしっかり切れ目がついていました。
 今、講談社ノベルズのフェアでこういった「密室本」が他にも出ているらしいですね。
 さて、森博嗣の二大シリーズは犀川創平&西之園萌絵のS&Mシリーズと瀬在丸紅子のVシリーズですが、この「捩れ屋敷の利鈍」はVシリーズに属するものの、S&Mシリーズであるとも言えます。登場するのはVシリーズの語り手でお馴染み、表向きは何でも屋の泥棒、保呂草潤平。そしてゲストはS&Mシリーズの西之園萌絵です。泥棒と天才お嬢様という取り合わせですが、この西之園萌絵は割と常識人が揃っているS&MシリーズよりもVシリーズが似合うのかも知れません。

 資産家、熊野御堂家の当主が立てた「メビウスの輪」状の巨大なオブジェ、捩れ屋敷。招かれた保呂草潤平と西之園萌絵はそこに収められた時価数億円の美術的価値を持つ短剣、エンジェル・マヌーバを見せられる。その夜、ミステリファンであった当主は自らが作り出した密室の仕掛けの中で殺され、エンジェル・マヌーバも姿を消した……。

 この「エンジェル・マヌーバ」はVシリーズでしばらくの間、保呂草潤平が追っていた秘宝。その仮定で保呂草潤平は様々な事件に巻き込まれる事になります。今回も殺人事件に遭遇するわけですが、それ自体はけっこうあっさり。主眼は西之園萌絵と保呂草潤平のニアミスにあるようです。
 なにかあるごとに西之園萌絵の中に瀬在丸紅子との類似点を見つける保呂草さんが、どうも冷静じゃない感じがしてなかなかおかしいのです。しかし、この類似性はどうやら偶然ではないような印象があります。
 さて、読後の感想としてはかなり興味深い一冊だと思いはしましたがこれまでVシリーズとS&Mシリーズを読んで来なかった人にはあまり面白くないかも知れません。
 いや、トリックなどは実を言うと凝っているのかも知れません。しかし、それを感じさせないのが森ミステリですね。

1月17日

 書感です。

「おはなし おはなし」
 著者:河合隼雄
 出版:朝日新聞社
 定価:480円
 初版:1997年3月1日

 この本は平成4年の11月から1年間に渡って朝日新聞の家庭欄に連載されていたものだそうです。実家が朝日新聞を取っていて当時、家庭欄なども読んでいたはずなのですが、僕にはまったく記憶がありません。この手のエッセイなどは見逃さない方なのですが、読んでいなかったと思うと実に惜しいことをしたと思います。
 僕はエッセイが好きで様々なものを読みます。面白いエッセイには本当におもしろおかしいもの、自分との感覚の違いを楽しむもの、人の体験を楽しむもの、述べられている意見が面白いものなどいろいろありますが、この「おはなし おはなし」は著者が自分の専門や趣味などについてごく簡単に話をするというだけであるにもかかわらず、最高級に面白いエッセイとして仕上がっています。
 こういう作品を評価するのは実に難しいです。文章にユーモアがあるとか、話題の取り上げ方に特徴があるとか書けません。もちろん、そういう面白さはありますが、一つだけ取り上げてもごく断片的なものになってしまいます。
 ちなみに著者の河合隼雄氏は臨床心理学者で心理療法の第一人者でもあります。心理療法の専門家であると聞くと、それだけで話がうまいような気がしてしまいますが、よく考えてみるとまったくの逆で、はなしがうまく、人の心がつかめるからこそ心理療法の達人となり得るのではないでしょうか。
 文中にもその専門について述べられていましたが、心理療法とは相談を受けに来る人の自己治癒能力が最大限に発揮できるよう手助けをする、というのが有効だそうです。むやみに手を差し伸べるのではなく、悩みと正面から向き合って自分の力で立てるように、という配慮が大切のようですね。
 そういう職に就いているうちに人間への深い洞察が生まれ、自らも諦観の境地に達しているのでは、と思われますがそういった様子はまったく見せず、いつも面白い話をしてくれる学校の先生といった気軽な雰囲気があります。
 この本の中には面白い話が山のようにつまっているのですが、多すぎてどれかだけを取り上げる事はできません。
 ですが、内容は日本人の事、人間の事など誰でも接する事のある話題ばかりで、難しくならずごく平易に書いてあるので誰にでも読めます。
 と、いうことで是非お薦めしたい一冊です。

1月19日

 書感です。

「からくりサーカス 21巻」
 作者:藤田和日朗
 出版:小学館少年サンデーコミックス
 定価:390円
 初版:2002年2月15日
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「真夜中のサーカス」中心部にしろがね達を送り込むために犠牲となり、瀕死の重傷を負った鳴海はしろがねトーアとロッケンフィールドの手術、そして散っていった仲間達の血と人形の部品によって蘇る。最古の四人と戦い、ついにフランシー濡人形の元へたどり着いた鳴海が知る真実とは……?

 感情を制御し、戦うだけの人形と言われるしろがねになる事を嫌った鳴海は失った両手足の代わりに人形の手足を取り付けられます。その姿は人形であるアルレッキーノにすら揶揄されるようなもの。しかし、蘇った鳴海は身体だけではなく強靱な精神を持って復活しています。
 ただ人形を破壊する事しか考えていないと嫌っていたしろがねの中に自分と同じ様々な思いが溢れていると知った鳴海は、ついに本当の意味でしろがねの一員になるのです。
 復活した鳴海にもはや敵はありません。しかし、読者としては何より引っかかっているのがもう一つの第二部「サーカス編」の存在です。しばらくスポットの当たらないマサルとしろがねエレオノールですが、今回のラストではついに「サーカス編」と「からくり編」が一つに結びつきます。
 しろがねを一カ所に集めて全滅させようという自動人形たち。その自動人形を足止めし、一気に殲滅しようというしろがね。まさに全面戦争といった様相を呈したこの戦いの決着が今、まさにつけられようとしています。
 待っているのは両者全滅という結果なのでしょうか?

 鳴海の復活と活躍はとにかく爽快でしたが、同時に結末に対してのやりきれなさもあります。藤田和日朗の漫画は、どれだけ重いものがあっても最後に底抜けの明るさと笑顔で締めくくられ、救われていくのですが、果たして今回も期待して良いのでしょうか?
 いずれにせよ、次巻の新展開に期待です。

1月20

 書感です。

「図書館警察(Four Past Midnight II より)」
 著者:スティーブン・キング
 訳者:白石朗
 出版:文春文庫
 定価:914円
 初版:1999年8月10日

 恐怖小説と言えばこの人、というくらいの大家、スティーブン・キング。これまでいくつかの作品を読んできていますが、この人の小説の特徴は、作品がただ怖いという事に留まらず、その恐怖を克服していく過程がエンターテインメントになっているという事でしょうか。
 つまり、厳密な意味ではホラーとはちょっと違うような気がします。キング小説という一つの立派なジャンルを作っているというところです。読んでいる途中は怖くても、読み終わってしまうとその恐怖はあまり尾を引かないんですね。

 地方都市ジャンクションシティの不動産・保険屋であるサムはある日、代役でクラブの公演を引き受ける事になる。それまでまったく無縁だった役所に挑戦するはめとなった彼は、秘書の薦めで図書館へ行き、公演の心得とジョーク集を借りるが、それは恐怖の始まりだった。返却を遅らせるとやってくる図書館警察とは……?
 本を返さない子供、借りた本を汚したり破いたりする子供、図書館で騒いだりする子供のところには図書館警察がやってきて罰を与える……。

 タイトルの「図書館警察」はアメリカの都市伝説のようなものらしいです。キング自身も子供の頃、図書館警察が怖くてたまらなかったとまえがきに書いています。
 無縁だったはずの図書館にサムが感じる恐怖。それは心の奥底にあって封印されている記憶なのです。図書館に潜む圧倒的な存在との戦いは、サム自身の人生を変えた過去の何かとの戦いでもあります。
 超常現象かトリックかという疑心暗鬼を描く事の多い和製ホラー小説の傾向はミステリのブームから来ているのでしょうが、キングは追われる恐怖とそれと戦う勇気を正面から堂々と描いています。「超自然のものにはかなわない」とする日本の小説と「超自然を克服する」というスタンスの違いが興味深いですね。
 さて、この『図書館警察』は700ページ近い分厚い文庫本で「図書館警察」は400ページ。もう一作「サンドッグ」という長編が入ったなかなか贅沢な作りになっています。「サンドッグ」の方はいずれまた。

1月21

 書感です。

「ARMS 20巻」
 作者:皆川亮二
 出版:小学館少年サンデーコミックス スペシャル
 定価:486円
 初版:2002年2月15日
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 前巻から新章に突入した「ARMS」
 これまでの経験から言っても確実に物語のクライマックスと思われる場面を迎えながら続く作品は、その後それを越えることはできないものですが、この「ARMS」はどうでしょう?

 ニューヨークを炎に包んだアリスとジャバウォックの消滅と同時に、高槻涼たち4人のオリジナルARMSは沈黙した。エグリゴリは壊滅し、普通の学校生活を始めた涼たち。だが、赤城カツミがエグリゴリ残党とキース・ホワイトに拉致され、姿を消してしまう。その行方を追った涼たちはやがて、すべての始まりであった鐙沢村へとたどり着く……。

 初期の頃、ARMSの面白さは自分たちよりも強大な力を持ったサイボーグや超能力者たちと限定された力をうまく使いこなして戦う、というところにありました。しかし、ARMSが最終形態に進化してしまってからは圧倒的な力を持つのは主人公達オリジナルARMSで、敵がその逆転を突こうとする立場になりまったく逆転。常に敵の策に乗せられて動き回るという展開にはフラストレーションがたまったものです。
 そういう意味で、今回の新章突入は手に入れた力をリセットして戦うという点では面白くなっています。現在のオリジナルARMSたちは肉体的にまったく普通の人間。相手の隙を突き、公道を読んでチームワークによって攻めていかなければ相手にならないのです。
 もはや強大な組織ではなく、キース・ホワイトに率いられた少数の集団となってしまったエグリゴリ。そしてニューヨークのエグリゴリ本部襲撃の際に大きく戦力ダウンしてしまった太閤組織ブルーメン。両者の対決も新しい局面を迎えようとしています。
 少なくとも20巻を読んだ限り、これからの展開には多少期待させてくれています。それを裏切らないようにしばらくは続けてほしいものです。

1月22

 書感です。

「西洋骨董洋菓子店 1巻」
 作者:よしながふみ
 出版:新書館ウィングスコミックス
 定価:520円

 テレビドラマ「アンティーク 西洋骨董洋菓子店」の原作となったコミックです。ドラマの方では個性的な顔ぶれと毎回登場する豪華なケーキでなかなか楽しませてもらいました。原作を読んでみるとあのドラマ、配役も脚本もなかなか原作にある味をうまく醸し出している感じです。ですが、コミックの方が笑って楽しめる度合いはずっと大きいですね。

 街角のケーキ屋「アンティーク」は装飾と食器はすべて骨董品、店員は男だけという一風変わったお店。
 伝説のケーキ職人と言われるゲイのパティシエ小野、大財閥の御曹司である女好きのオーナー橘、元世界チャンピオンでボクサーを引退したケーキ好きの青年神田の3人が店を切り盛りしている。店を舞台に繰り広げられるケーキをからめたドタバタ劇を描いたのがこの「西洋骨董洋菓子店」です。

 以下、ちょっとネタバレが入ります。
 さて、コミック版とドラマ版の最大の違いは、天才パティシエである小野のキャラクター。ドラマではどこか影のある女嫌いというだけでしたが、コミック版ではゲイという設定。しかもただのゲイではありません。高校三年生の時に同級生であったアンティークのオーナー橘に告白してふられ、その後、知らずに橘の店に来てしまったという因縁があります。しかも今の小野は、ゲイでなくとも気に入った相手を逆に惚れさせてしまうという魔性の魅力の持ち主。普段はおとなしく、真面目な職人なのですが、魅力的な男を見つけた時の豹変ぶりがたまりません。オーナーの橘、見習いの神田は逆にドラマと比べるとちょっと弱め。特にドラマの橘は椎名桔平の演技が際だっており、面白かったのですが三者三様という描き方を考えればコミックの方がバランスいいかも知れません。
 ケーキに関するノウハウもふんだんに盛り込まれており、実際の映像で見せられる魅力にはかなわないと思っていたのに、その解説文だけで食べてみたくなるものばかりです。
 一般の青少年向けコミックしか読まない男性読者にとってはこのゲイという設定はかなり敷居が高いものですが、女性作家が描くかっこいいゲイのキャラというのはギャグマンガの漫画の中ではかなり冴えます。
 この「西洋骨董洋菓子店」はそういう面白さも含めてかなり楽しめるので男性読者も読んでみて損はありません。

1月24

 書感です。

「サンドッグ(Four Past Midnight II より)」
 著者:スティーブン・キング
 訳者:白石朗
 出版:文春文庫
 定価:914円
 初版:1999年8月10日
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『図書館警察』と同じく『Four Past Midnight II』に収録されていたのがこの「サンドッグ」です。こちらは少年を主人公にその成長と戦いを描いた作品。
 少年が誕生日にもらったポラロイド・サン660は現実ではなく、どこか異世界を写すカメラだった。シャッターが押されるたび、そこに写った犬はカメラに近づき、この世ならざるものへと変貌していく。やがてそれが現実世界へ飛び出てくると知った少年は……。
『図書館警察』が過去を乗り越える物語だとすると、こちらは少年が大人へと成長していく話。あるいは、父親を越えていく話だと言えます。
 誕生日のプレゼントとしてもらったカメラが「悪いもの」だと感じた少年は、理性を重んじて超常現象だと信じてくれない父親ではなく、そういうものに詳しい雑貨屋の老人を訪ねる事になるのです。しかし、世の中はそう簡単に進まない。あこぎな金貸しとして生きてきた老人は少年に好意的なふりをしつつもそのカメラを自分のものにしようとたくらみます。
 主人公は15歳という年齢の割に幼く弱虫という印象でしたが物語が進むうちに、信じる事や行動する事を学び、成長していきます。そして最後は父親さえできなかった勇気ある行動によって平穏な日々を勝ち取るわけです。
 最初は親子の話かなと思ったのですが、終わってみると父親は脇役になってしまったという感じです。途中、父親の過去の話があり、それが少年の現在とも関わってくるのですが、父親はうまくそこを乗り切れていないのが見ていて微妙に歯がゆいです。それと比較しての少年の成長ぶりがすがすがしい。
 この『サンドッグ』は話があっさりしている割にページ数が長く感じます。それだけ情景描写や心理描写に割かれていて、少年をリアルに描き出しています。映画にしたら1時間程度でしょうが面白いものになるかも知れません。
 さて、タイトルの通りここに出てくる「怪物」は犬です。
 犬は身近な動物で、親しみがありますよね。話が通じるという感じがするからかも知れません。そういう動物だからこそ狂って襲いかかってくるのが恐ろしいのでしょう。キングの有名な長編には「クージョ」という作品があります。
 車の中に赤ん坊と共に閉じこめられて狂犬病にかかったクージョという犬に追いつめられるという話ですが、この映画版を見て犬がトラウマになった知人などもいます。
 サンドッグもキング自身、もしかしたら犬に恐怖感を感じる事もあるのではないかというくらい力の入った怖さです。
『図書館警察』と『サンドッグ』は共に、ホラー一辺倒でなくファンタジックな部分を含んだ作品として仕上がっています。
 その辺りがキングらしい味で、なかなか楽しんで読めました。「Four Past Midnight」の1巻に当たる『ランゴリアーズ』も読んでみたいところです。

1月25

 書感です。

「西洋骨董洋菓子店 2巻」
 作者:よしながふみ
 出版:新書館ウィングスコミックス
 定価:520円
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 ドラマ「アンティーク」の原作コミック第2巻です。
 この巻からオーナーの橘の幼なじみで橘家の家政婦の息子である千影が登場します。
 ちなみにドラマでの配役は橘が椎名桔平、小野は藤木直人、神田が滝沢秀明、千影が阿部寛となっています。
 ドラマでは阿部寛の演技でけっこうキャラの濃かった千影ですが、原作の方では大柄でかっこいいのに何をやってもダメな弱々しい人物として描かれています。

「アンティーク」にやってきた黒ずくめの男は橘家から派遣されて橘の様子を見に来た幼なじみの千影だった。ゲイの小野はその千影を見た瞬間、一目惚れ。「魔性のゲイ」と言われたその力で千影を魅了してしまう。そんな騒動の後、辛党である橘がケーキ屋にこだわった理由の一端が明らかに……。

 今回のポイントは何より小野と千影のからみ。1巻でも橘に自分の本性を明かすという展開でずいぶん笑わせてもらいましたが、気の弱い千影を理性ではダメだと思いながらもつい誘惑してしまう小野の葛藤がおもしろいです。ドラマでもやって欲しかったと思うのですが、これこそ「漫画ちっく」なところなのであのいい感じの雰囲気の中に組み込むのは難しいでしょうね。
 もう一つ、ストーリーの展開で重要となるのは橘の過去。
 大財閥の会長の孫である彼がケーキ屋をやっているというのもなんとも妙ですが、決して家族に対する反発などがあるわけでもなく、家族を大切にしつつ自分の道を歩んでいるという橘の態度に感動させられます。
 しかし、親の出資でケーキ屋を開いたりフェラーリに乗ったりしているのは間違いないので、やはりお坊ちゃんと言えばお坊ちゃん。まあ、金持ちには金持ちの苦労があるという事なのでしょう(笑)
 そしてこの巻でも食べたくなるいようなケーキがどっさり出てきます。クリスマスの回で登場した「ブッシュ・ド・ノエル」なんて一度味わってみたいものです。

1月26

 新車の納車が2月の頭になりそうです。
 今のカリーナEDで練習できるのもあと少し。
 と、いうことで新車を傷つけないためにもこの土日は特訓という事になりました。まあ、あちこち乗って歩くだけなんですけどね。
 実家の両親は朝からテニスへ出かけたのですが、お昼頃そば屋でごはんを食べるからと呼ばれて行ってみたら、両親とも昼からビール大ジョッキ。つまり、車を持って帰れという事らしいです。家までは車で3分くらいなのですが、テニスのボールやテニスバッグなどを積むのでいつも運転して行くんですね。
 通常は両親のどちらかが、車を家まで持ち帰ってから自転車でテニス仲間と昼食に行くのですが、僕が免許を取ったためにその必要がなくなったようです。しかし、これから便利に使われそうな気がします。
 さて、家まで車を運転するだけではあまりに短いのでついでに買い物へ行く事になりました。実家の駐車上は庭の一画を整地してあるだけで、下が土なので雨が降るとぬかるむし、長年使っていたのでもう平らではなくなってしまっています。
 新車が来る前にもう一度整地して砂利を敷き、場合によってはブロックなどを置こうという事でホームセンターへ。
 行ってみたものの具体的なプランは決まっていないのでとりあえず砂利を45キロ買って帰ってきました。
 家で砂利を下ろして今度は母親の買い物をするため、近くのスーパーへ。そこは屋上に駐車場があるので坂を上って行くのですが、僕はそれがけっこう好きです。ついでに、昼過ぎくらいの時間だと空いているため駐車の練習ができます。
 最近は車庫入れもずいぶん慣れたので一回できっちり止め、母親が買い物をしている間にお店で無料で配っているイオン水を容器2つに入れていました。僕が免許を取る前は自転車で3.8リッターの水を入れた容器を運んでいたのでけっこうきつかったものです。
 その後、両親のテニス仲間のお宅に届け物。けっこう距離があるのでそこそこ運転のしがいがありました。JR京浜東北線の線路を陸橋で越え、お隣の戸田市までドライブ。道が狭く、路上駐車も多いのでのろのろ運転をしていたら、軽自動車に強引に入られたりしてけっこう怖かったです。近所の人かと思うのですがさすが運転しなれているだけあってうまいです。
 腹が立つよりも、運転技術に感心してしまいました。ぎりぎりの幅でも減速ほとんどせずに通っていってしまいます。
 しかし、こちらの運転次第では事故になるのでやめて欲しいものではありますね。
 帰りには行きつけの酒屋さんによって日本酒を購入。
 そこはかなり種類も豊富で、お酒の瓶にはいちいち解説もついているのでつい長居をしてしまいます。そこで辛口の日本酒を一本買って帰宅。
 もう暗くなっていましたがさすがに実家の車庫は完全に慣れてしまったので簡単です。こういうときに、運転が上達したと実感できます。
 あとは油断しないように気をつけて安全運転をしていきたいものです。

1月27

 書感です。

「ぼくが医者をやめた理由 青春編」
 著者:永井明
 出版:角川文庫
 定価:476円
 初版:平成11年4月25日
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 この人の書く文章からは自信のない、穏やかな印象を受けるのですが子供時代から学生時代までを見ると、どうもそうではない様子。学生運動に参加するなどの一面も持っています。

 10年間を医者として過ごし、病院という職場、医者という職業に対して言葉に出来ない違和感を感じた著者、永井明は突然、医者をやめてしまう。『ぼくが医者をやめた理由』『ぼくが医者をやめた理由 つづき』に続いて、医者としての原点を追ったのがこの『ぼくが医者をやめた理由 青春編』です。

 すべての人を平等に救うことができないとはわかっていても、それを実感してしまうのがやりきれない著者はまた、そういった現実を変えていこうと何かをするわけでもありません。
 それは悪いというわけではないのでしょう。きっと多くの医者がそうやって疑問を感じながらも、自分の活動できる範囲内で自分の役割を全うしているわけです。
 著者、永井明の持つあきらめのような気持ちは元々、かつて参加していた学生運動にあるのかも知れません。
 同じ目的で活動していながらも思想の違いで対立する活動家たちに著者は参道することはできません。かと言って彼らを説得しようという気持ちはなく、活動から脱退すれば仲間だった人々に非難されてしまいます。後年の著者からも感じるこの「居場所がない」という感覚はここにもあるようです。
「青春編」では実際に職について、人の命に関わる仕事をしていた時ほどの重いテーマはなく、どちらかと言えばエリートとは言えない医学生の日常を面白おかしく書いているという面が主なのですが、後に医者をやめてしまうという事を知って読んでいるためにいろいろ考えさせられます。
 知人にも医学生や実際に医者となった人間が大勢いますが、やはりそれぞれに現代医学や医療体制、行政などに対して疑問を感じ、主張を持っています。だからこそ、この著者のように医者をやめて欲しくないですね。
 永井明に関しても、こういう人が医者を続けていけなかったのは非常に残念だと思います。
 この「やめた理由」シリーズは、現代の医療に対して何かの解決策を示してくれる作品ではありません。
 しかし、医者という職業が「たいへんだけど高収入」というだけではいけないという事はまざまざと感じさせます。

1月28

 書感です。

「お父さんのバックドロップ」
 著者:中島らも
 出版:集英社文庫
 定価:340円
 初版:1993年6月25日
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 奇妙なタイトルを持つこの短編集は以前『白いメリーさん』で紹介した中島らもの作品です。

 朝日新聞の「明るい悩みの相談室」で奇妙な質問に対し、本気とも冗談ともつかない返答をし続けた中島らもだけに、小説もおかしな作品ばかりです。
 下田くんのおとうさんは有名な悪役プロレスラー。そんな父親がイヤで仕方ない下田君のために、お父さんは最強の空手家と対戦する事に……。

 表題作をはじめ、奇妙なおとうさんを主役にした短編4編を収録。
 ここに出てくるお父さんはプロレスラー、落語家などちょっと変わった職業の人ばかりではなく、息子のために珍しいペットを探して走り回る魚河岸の大将やいたずらを仕掛けては子供を困らせる子ともっぽいお父さんなど、とにかく一風変わったお父さんばかり。
 子供達の反応はそれぞれですが、どれも子供かわいさに普通ではない行動で愛情を示そうとします。
 特に表題作の「お父さんのバックドロップ」などは本当に感動ものの短編です。
 中島らもというのは日常に奇妙な世界を持ち込むのが得意な人で、下町感覚あふれる作品を書きます。日常に持ち込まれた突飛な空想をそのまま小説にしてしまったような作品は、中島らもの軽妙な語り口によって爆笑ものの短編として仕上がるのです。短編の一つに、売れない中年落語家が子供のために新人賞を目指すというものがありますが、この短編集そのものが落語的な味わいを持っているような気がします。
 電車の中で読んでいて笑いをこらえるのが大変だった作品は久々でした。

1月29

 書感です。

「やぶ医者のねがい」
 著者:森田功
 出版:文春文庫
 定価:486円
 初版:1998年10月10日

 永井明の「ぼくが医者をやめた理由」に続いて、医療をテーマにした別なエッセイも読んでみようと思って手に取ったのがこの「やぶ医者の願い」です。ちなみにこの「やぶ医者」はシリーズとして出ており、ビッグコミックでも引野真二が作画で漫画になっています。そもそも、医者ものに興味を持ったのもこの漫画版からだったかも知れません。

 60を過ぎて東京の郊外で小さな診療所を営む著者は病弱な身体を押して近所へ診療に出る町医者。そんな著者が医療活動を通して近所の人々と交流を続けていく……。

 途中で医者をやめてしまった永井明とは対称的に、普通の職場なら定年を迎える年齢になっても町医者を続ける著者は広島出身で戦争を経験し、友人を失い、自らも原爆で被爆したという過去を持っています。
 戦争が終わり「戦後は余生」と書く著者ですが「やぶ医者」と言われながらも近所の人々に親しまれ、頼りにされて充実した生活を送っているようにも思えます。
 町医者の仕事は主に診察。本格的な疾患を抱える人を治療するには診療所の施設では足りず、他の病院を紹介する事になります。触診と聴診器のみで患者を診る著者は時に、大学病院などの検査でも見落としがちな病気の兆候を見つけて送り込んだりもします。普段から患者の事を知り、接している町医者と本格的な設備を持ち、検査や治療を行える大病院という連携がうまく機能するとき、大きな貢献となり得るのです。
 しかし、時には病院の医師の、時には患者の理解が足りない事もあります。医療に対する知識の欠如や世間に流布している常識の間違いなどからうまくいかない治療があったり、患者に無用の不安を与えてしまったりと問題点も数多くあります。
 また、自らも老境という事で老いについて、寿命について考える機会の多い著者は末期の治療についてもいろいろと述べており、寿命は自分で決めたいというような事も書いています。
 しかし、家族の生き残って欲しいという願いも理解できるだけに難しいところのようですね。どれだけ議論がされてもこういう問題は結局、個人の意志が問題となるわけです。
 著者はすでに亡くなっており、遺体は解剖献体として提供されたようです。自らの人生の最後のぎりぎりまで医療に従事し、自分の死後の事なども処理して亡くなったという事で、そこに医者としての立派な最後を見たように思えます。

1月30

 書感です。

「医者が尊敬されなくなった理由」
 著者:永井明
 出版:集英社文庫
 定価:380円
 初版:1995年4月25日
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 しばらく医療関係の本が続いています。
 この本は、『ぼくが医者をやめた理由』の永井明が現代の医療制度の実態を書いたもの。
「やめた理由」シリーズでは、著者自身に医者という職業について割り切れないところが多かったためか、体験記としては面白いもののイマイチ歯切れが悪いところがあります。まあ、さんざん議論されても結論の出ない問題について考えているのですから当然ですね。しかし、本書は著者が本人の経験を交えながらもあくまで医者という世界の外側から眺め、現役の医師の話や様々なデータを示しながら論じていて読み応えがあります。タイトルに「医者が尊敬されなくなった」とあるように、かつては医師という職業の地位がどれほど高かったかという話から始まって、現代人の医師に対するイメージなどを語ります。しかし、実際のところ言われるほど医師そのものは変わっていないようです。詳しくは省きますが、その原因が国民健康保険にあるというのも興味深いです。
 他にも「お医者さんの功名心」「お医者さんの息子はどうして医学部に行くのか」など、一般的に言われる疑問などについてほとんどの事がわかりやすく明快に解説されています。
 ただ、この本はよくある医療批判とはちょっと違います。
 もちろんですが、医療制度や病院の体勢はきちんと医療をするためにあるわけで、悪いことだらけではないわけです。
 現状のままではうまくいくこともいかない事もあり、特に欠点の方は放っておくわけにはいかないがどうしようという目標もないという感じのようですね。
 全般に言えるのは、医者が患者に対して理解がないというだけではなく、患者となる一般の人間も病気や医者に対して理解がないという事でしょうか。
 制度そのものは政治的な働きがないと変わりませんが、両者の歩み寄りというのは個人の個人努力よって可能となります。
 著者の永井明は、エッセイを通しての医者と患者の橋渡しという役割に自分の存在意義を見出しているのかも知れません。
 読後、自分が病院にかかるときにも、ちょっと違う意識で行けそうに思えました。

1月31

 書感です。

「重力の影」
 著者:ジョン・クレイマー
 訳者:小隅黎・小木曽絢子
 出版:早川文庫SF
 定価:780円
 初版:1996年8月20日

 久々に本格ハードSFを読みました。
 何を以てハードSFとするかはなかなか難しい問題ではありますが、この作品は書かれた当時には最新であった理論物理学の最先端、超ひも理論を軸に展開する科学小説と言えます。

 高温超伝導物質の結晶構造の中に発生するホロスピン波の観測をするために、物体に回転する磁場をかける実験装置を設計していたデイヴィッドとヴィクトリアは、その実験中に未だかつてない現象を目撃する。回転する磁場に閉じこめられた物体は何の痕跡も残さずに消え失せてしまうのだ。この実験を巡り、さまざまな思惑が動きだし、彼らは危機に陥る……。

 超ひも理論について説明するとそれだけでたいへんに長くなってしまうので省きます。それに、真に面白いSF小説というのは物語と共に舞台となるジャンルの面白さも教えてくれるものです。海外の小説によくありますが、この「重力の影」も著者は実験物理学者です。だからと言うか、理論だけでなく出てくる学者達や組織などが実にリアルな感じで書かれています。物体の運動や性質について研究するのが職業の物理学者はあらゆる現象を観察し、様々な運動の結果を予測します。デイヴィッドなどはまさにその見本のようなもので、日常生活にもその物理学的思考は浸透しています。そしてそれが、様々な思惑に翻弄される中、咄嗟の機転で危機を救うことになるのです。前半の政治的な展開とうって変わって、後半はなかなかの騒動。スリルとサバイバルの世界に突入していくのです。
 惜しむべくは学究的な部分は前半で終わってしまい、後半は盛り上げるためにエンターテインメント的な要素を盛り込んだという感じがしてしまう事でしょうか。
 クラークあたりだと物語の鍵となる理論やテーマそのものが後半に向けて盛り上がっていく展開をしてくれます。最初にクラークから入った僕としては、それこそがSF小説。SF的な要素が満載されていても主軸がそこに来ないものは、SFテイストの小説という事になりますね。SFと言って紹介する小説はほとんどがその「SFテイスト」の小説です。
 しかし、それはこの作品に対する不満ではありません。出てくるキャラクターにもどんどん先を読みたくなる展開にしても小説としての完成度は非常に高いです。
 超ひも理論というまさに理論上にのみ存在する物理学が、実験物理学者によって実証されるという展開は、著者が理論物理学に対して見る夢なのかも知れません。
 他の作品が和訳されているかどうかを調べて、読んでみたいと思わせるデビュー作でした。


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