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2月17日
先週、初めて一人ドライブをしましたが今週も続けて行ってきました。毎週、二つ隣の駅にある北区赤羽図書館まで通っているのですが雨の日などはどうにも面倒になってしまうので、車で行けると便利です。駐車場があるのはすでに確認済みだったので車の空いている午前中に行ってきました。
とりあえずカーナビで調べてみたところ、図書館までの距離は十数キロ。河を越えて東京都へ入る辺りがけっこう面倒な感じではありましたが、誘導してくれるので簡単です。
土曜日の午前中という時間帯はいつも教習で乗っていたので慣れていました。ちょっと懐かしい感じですが教官がいないのでむしろ気楽です。
リバティ搭載のカーナビは自分が右車線にいるか左車線にいるかまで判定してできるだけ左折を優先にコースを決めるらしいのですが、家の周辺などではそれが余計なお世話。たいてい途中まで自分のコースで走ってナビに再計算させる事になります。とりあえず家の近くの中央道路を南へと直進して京浜東北線の川口駅の方まで行き、途中から国道122号に入って新荒川大橋を渡ります。道路は広いのですが少々渋滞気味でとろとろと走っていました。僕はまだあまりスピードを出さないのでそのくらいの方が走り易いです。
実は赤羽図書館、自転車では何度も行っているので道そのものはわかります。しかし、どうにでも進路を取れる自転車と自動車ではまるで感覚が違いますね。そもそも自転車だと広い道はあまり通りません。
よく知っているはずの道も車で走るとなかなか新鮮でドライブを楽しめました。新荒川大橋も流れがスムーズなど気持ちよく走れます。
結果、20分ほどで図書館まで到着。地下駐車場に車を入れました。家の車庫以外にはほとんど止めないので不安でしたが空いていたのとバックモニターのおかげで無事に注射完了。
帰りも少々渋滞という程度で楽に帰れました。カーナビを使えばこうやってどこへでも行けるのでドライブのしがいもあります。図書館は毎週、車で行こうか……なんて思ってみたり。しかし、交通費を考えると実は電車の方が安いですね。定期が効いている区間ですし。
そういう意味ではリバティの場合、ちょっと燃費が気になります。まあ、趣味だと思えばいいかな。
午後はいつものようにあちこち買い物へ行かされました。
しかし周辺のスーパーなどへ行くととにかく自転車の交通量が激しいです。
と、いうことで今週はけっこう距離を乗りました。
初心者マークが取れるまであと10ヶ月、どれだけ乗りこなせるようになるでしょうか。
2月18日
書感です。
「らんぼう」
著者:大沢在昌
出版:新潮文庫
定価:590円
初版:平成14年2月1日
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『新宿鮫』が書くバイオレンス刑事小説とでも言うべき作品です。『新宿鮫』とはまるで違うハチャメチャな世界が展開しています。
大柄で柔道部出身の刑事、大浦。彼とコンビを組むのは空手有段者の赤池。ウラとイケのコンビはとにかく凶暴で怒りやすい。理屈も情けもない二人が繰り広げる痛快短編小説集。
たいていの刑事小説は老人と若者、クールと熱血など対局にあるキャラクターをコンビとして出演させるものですが、大柄と小柄の違いはありながらこの二人はどっちも暴走役。一人が暴れたらもう一人も暴れるという刑事なので、誰もそれを止める人間もいません。二人がやくざ相手に大暴れしていたら、警官さえ知らんぷりです。二人の検挙率は署内トップなのですが、これは優秀と言うよりとにかく大暴れしているととんとん拍子にいろんな事件を解決してしまったり、暴力で無理矢理証言させたりといった感じ。
そんな無茶苦茶な短編が10編、収められています。
もちろん、ただバイオレンスなだけではなく『新宿鮫』などの根底にも流れる大沢テイストとでも言うか、街の裏側に生きる人々やそこに堆積する様々な想いが描かれてもいます。
ウラとイケも夜の街に生きる人間や、様々な事情がありながも懸命に生きている人間を守っていこうという意志があり、互いのそういう甘い部分をからかいながらも、そういう部分で通じ合っているようです。
短編と行っても最後、ちょっと余韻を残して終わっているので気になります。
是非、続編が欲しいところです。
2月19日
書感です。
「はじめの一歩 60巻」
作者:森川ジョージ
出版:講談社少年マガジンコミックス
定価:390円
初版:2002年2月15日
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『はじめの一歩』はそのタイトル通り、一歩一歩確実に話を進めていますね。決して一時の劇的な展開では話を進めないのが何よりの魅力でしょうか。
すべての試合がクライマックスです。
世界ミドル級チャンピオン、デビッド・イーグルとの試合に臨んだ鷹村はその完璧と言えるボクシングを前に苦戦する。だが、余裕を持っているかのように見えたイーグルも鷹村を相手には神経をすり減らすギリギリの勝負をしていた。わずかなチャンスを掴んだ鷹村が一気に逆転と思われたが、思わぬアクシデントが……。
生真面目なデビッド・イーグルのボクシングを後輩、一歩と重ねる鷹村。洗練された基本、確実に積み重ねたら練習。それがボクサーにとって最も有効な力だと実感する鷹村。しかし、右目を切るという鷹村のアクシデントに対し、傷口を狙わずにボディを打ち始めたイーグルに鷹村は激怒します。
一歩は性格が優しく、いろいろと考え込んでしまうボクサーですがリングに上がれば勝つことしか意識しません。一度は一歩と重ねたイーグルの見せた甘さは鷹村にとって裏切りにも等しく思えたのでしょう。しかし、イーグルはイーグルでその場の勝ち負けよりももっと大きなものを求めています。それまで自分が味わえなかった死闘という気分を求め、野獣と化した鷹村とあくまで正面から打ち合おうとするのです。
イーグルの姿勢はプロボクサーとして満点ではないかも知れません。しかし、真摯に強さを求めるという根本的な部分は一歩や鷹村と同じ。
前半とは打って代わって全力のぶつかり合いになったミドル級タイトルマッチの行方が気になります。
2月20日
書感です。
「日曜日のキッチン」
著者:小林カツ代
出版:大和書房
定価:1300円
初版:1995年9月25日
料理研究家として知られる小林カツ代のエッセイです。
この人、料理に関する本は山のように書いていますが純粋に文章のみで書いているものって数が少ないそうですね。
ですが、なかなか優しい感じの文章で面白く読むことができました。
「料理研究家」と言われてはいるものの、本人としては自分は「料理家」だと思っているそうです。つまり、いろいろと試したり試行錯誤して「研究」をしているわけではないという事。
料理は日々の暮らしと密接していて、その中で身に付けた事を本に書いているようですね。
読んでいて受ける印象でも、とにかく料理が大好きで、自ら楽しんで料理をしているという印象です。このエッセイは料理に限ったものではないので子育てや留学経験など様々な事について触れられていますが、そこに苦労があってもすべてが楽しげに書かれていて、ポジティブな性格を感じさせます。
実は結婚するまでほとんど料理をしたことがないという著者が現在こうして料理研究家として活躍しているというのはなんともすごい事ですね。
最近はテレビなどでも「〜研究家」と言われる人が多くて、いつもそういうのを見ては「近頃はちょっと工夫して有名になると研究家か」と思っていましたが、そう言われる人にはやはり普通とは違うパワーがあるのかも知れませんね。
そんなに英語ができるわけでもないのにアメリカへ留学してしまったり、和洋中なんでも使える食器が欲しいのにいいものがないと自分で企画して作ってしまったりというエピソードは読んでいるだけで爽快です。
僕自身、昔から料理は興味あるのですがなかなか億劫で手が出せずにいます。何かのきっかけでこの著者みたいに料理ができたらいいな……なんて考えている時点でそんなにやる気がないのかも知れませんが。
2月21日
書感です。
「消されかけた男」
著者:ブライアン・フリーマントル
訳者:稲葉明雄
出版:新潮文庫
定価:552円
初版:1979年4月29日
名前だけは前から知っていたフリーマントル。図書館でその代表作であるこの『消されかけた男』を見つけたので手にとってみました。これは本当に傑作です。
風采の上がらない英国諜報部員チャーリー・マフィンは組織改革のため諜報部に入ってきたエリートたちに邪魔者扱いされ、活躍の場を与えられないがKGBの大物スパイであるベレンコフを逮捕し、東側スパイ組織に大打撃を与えた腕利き。
そのベレンコフの親友、カレーニン将軍が西への亡命を望んでいるという情報を手に入れた英米の情報部は協力して事態に臨むが、チャーリーは疑いを持っていた……。
時代はまだソ連があり、ドイツが東西に別れていた頃。
冒頭、若い部員二人と共に行動するチャーリーは彼らの素人ぶりと自信過剰にうんざりしています。ですが、チャーリーはただ古き良き時代を懐かしむ年輩の男ではありません。本物の腕利きである証拠に、チャーリーを捨て駒にしようとした英国諜報部をも出し抜き、見事に帰還して見せます。その風采の上がらない、よれよれの外見が人にどんな印象を与えるのかという事まで計算しつくした彼は、新任の情報部長が何を考えるのかくらいすべてお見通し。しかし、古い人間として実力に合った扱いを受ける事もできず、経費さえも削られてしまします。
そんなチャーリーがたまらなく不憫であると同時に、チャーリーのあらゆる警告を耳に入れず、事態を単純にとられ自分たちが優秀だと信じる「エリート」たちへのイライラもつのります。
KGBの大物を巡って、共同作戦を取るものの自分たちが主導権を取るために暗闘する英国情報部とCIA。彼らの関心は自分たちの出世であり、組織内での地位にあります。情報部を愛し、あくまで国に忠誠を誓うチャーリーとはまったく根本から違う人間なのです。だからこそチャーリーが共感できるのは自分の同僚や上司よりも逮捕したライバル組織のスパイだったりもします。
自身に満ちたエリートたちと違い、チャーリーは常に恐怖感を感じながら仕事をし、あらゆる事を疑い、あらゆる可能性を計算しています。そしてそれが、最後の最後で読者の誰もが予想しない大きな勝利を収めるのです。それまでの不遇に対する同情も、イライラもこの結末の前にはすべて吹き飛んでしまいました。
フリーマントルの名前は伊達じゃありませんでした。エスピオナージ小説としての舞台、雰囲気作りはもちろん上手ですがチャーリーというキャラクターの造形、すべてが揃ってこそ持っていける結末で、他の作家が同じ筋で書いたら反則だと叩かれるかも知れませんね。
これは他の作品も読んでみなければなりません。
2月22日
書感です。
「眠れぬ夜に読む本」
著者:遠藤周作
出版:光文社文庫
定価:495円
初版:1996年9月20日
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遠藤周作のエッセイです。前に読んだ『勇気ある言葉』に比べるとかなり真面目に書いているという印象が強いですが、変に面白おかしく書かれるよりこっちの方が良いです。正直、あんまりベタベタにとぼけた調子で書かれると読むのが辛いですからね。
関係ないですが、この文庫本は装幀がすばらしいです。
遠藤周作の本らしくないデザインとも言えますが、この装幀だけで遠藤周作を敬遠していた人も手に取らせてしまう力がありそうです。カバーデザインは亀海昌次と書かれています。
ちょっと心に留めておきたい名前です。
この本は「生と死について考える」「自分と他人と動物について考える」など様々な事柄に関して、著者の考えが書かれています。実を言うとあまり目新しい事は書かれていなくて、これまでに読んだ他の著作でも同じような事を言っていたな……という印象があります。ですが、途中で著者が自らの事を聞き上手と言い、インタビューにかけては自信があるらしいという事を書いていただけあって、人の事を書いたものはなかなか面白いです。遠藤周作は、興味を持てない人間にはとことん興味がなさそうというか、むしろバカにしているような節がありますが自分の認める相手、興味を持った相手には深く踏み込んでいく人のようですね。この本が出た当時の著者は72、3になっているはずですが、とても年齢を感じさせないバイタリティを感じます。
『寅さん』シリーズで知られる山田洋二監督との対談や、遠藤周作の小説『梅と毒薬』の映画化をした熊井啓監督との話などは特に、著者自身の映画に対する想いが溢れているようです。
逆に、ちょっと違和感を感じてしまうのがユングの言う同時性や輪廻転生などの思想に傾倒している事でしょうか。
この辺りはやはり簡単に共感はできませんね。しかし、年を経るに従ってそれまでは見えなかったものが見え、感じられなかった事が感じられるのかも知れないと理解しています。
数多くの話題の中に面白いものも、それがどうしたと思うものもありますが、それは逆に、一人の人間の思考を紙面のうえに余すところ無く展開しているからかも知れない、と思ってしまいます。狐狸庵先生、やはりただ者ではありません。
2月24日
近頃、と言うかここ数年、運動不足が激しいのでなんとか解消しようと思って走り始めました。
きっかけは単純で、ユニクロでトレーニングウェア上下とそれを入れる袋が3990円で売っていたからです。手袋をなくしてしまったのでそれの代わりをと思ってお店に行って見つけたので、思わず購入。
どういうわけか昔から力だけは人並み以上にあって、あまり運動しなくても筋力などは衰えないのですが、一応、腹筋、背筋、腕立て伏せなどの運動はやっています。でも、それだと筋肉はついても脂肪は落ちないんですよね。
脂肪を落とすにはちゃんと汗をかくような運動をしないといけません。と、いうことで前々から走ろうと思ってはいたのですが平日は無理だし、土日はやはりゆっくりしたいという事でなかなか実行できずにいました。
走るからには効果を上げたいし、それにはちゃんと習慣化してやった方がいいと思い、当初は朝、早起きして走ってから会社に行くというスケジュールを考えていたのですが、出かける前に走って風呂に入るのは時間的にけっこう厳しいです。
と、いうことで結局、土日の夕方、風呂に入る前に一走りする事にしました。時間にしてせいぜい30分程度ですけどね。
家の近くには青木公園という運動公園があって、陸上競技場やテニスコート、プールなどが揃っています。そこにはちょうど一周1kmのマラソンコースがあって小学校の持久走大会などで使っていました。
青木公園まで走って行くと500m程度なので往復で1km。あとは公園を何周するかで距離が決まります。
とりあえず初日なので公園は一周だけにして走ってきました。走り出して思ったのですが、走っている途中に知人に会ったりするとちょっと恥ずかしいかも。やはり走るなら夕方に限るかな。
後でばてそうなので最初はゆっくり走っていたのですが、あまりにも楽で汗もかきそうになかったので途中からペースアップ。青木公園に入ってからは走りやすいので、もうちょっと上げてみました。以外と走っている人は少ない、と言うか一人も見なかったのですがウォーキングをしている人はかなりの数がいるようです。そのマラソンコースを走るのは実に十数年ぶりくらいで懐かしいと思いながら走っていると、マラソンコースを一周する辺りでだんだんと汗が。
考えてみると中距離を走ったのは大学一年の体育が最後なのでもうかなり前です。その時は1.5kmでもけっこうばてた憶えがあります。
そのままペースを落とさないで家まで帰りましたが、たどり着く頃にはなかなかいい汗をかいていました。
その後、ゆっくり風呂に入って夕食となりましたがちょっと太股が張った感じになってます。明日、筋肉痛になっていなければいいのですが。
2月25日
書感です。
「大掴源氏物語 まろ、ん?」
作者:小泉吉宏
出版:幻冬社
定価:1300円
初版:2002年2月10日
「大掴源氏物語」とはつまり、要約でざっと源氏物語の内容が「比類なき美貌を持つこの男」という書き出しで始まるこのコミックですが、そこに描かれているのは栗の顔の男。しかも何も考えていなさそうなのほほん顔です。もう最初のページから笑いが止まりません。この本では主人公の光源氏は「まろ」と呼ばれます。「まろ」だから「マロン」つまりは栗になるわけですね。
誰もが知っている源氏物語ですが、きちんと全部読んでいる人はほとんどいません。僕自身も解説した本などはいろいろいろ読んでいますが、原文はおろか、現代語訳で読み通した事もないです。有名なエピソードはほとんど知っているという程度でしょうか。
もちろんこの本も全部を忠実に描いているわけではなく、大掴というわけだってずいぶんと大ざっぱな要約をしてありますが、全体の流れにそって話を進め、和歌の解説や系図、階級などがうまくまとめられているためだいたいの把握をするにはかなり便利。
しかし、そんな実用的な事よりも作者の源氏物語に対するコミック的な解釈が何より面白いです。
美貌で様々な学芸に秀でたまろこと光源氏は次々に女性に手を出して、どれも本気であるにも関わらず多くを不幸にしてしまうわけですが、栗頭ののほほん笑顔で「○○もいいな〜、でも○○もかわいい」みたいに描かれるとほんと笑えます。
もちろん、いろいろと悩んで反省もするのですが、やはりしばらくするとけろっとしてまた新しい恋にうつつを抜かすわけです。興味本位で手を出してみたり、妻となった葵の上を放っておいて亡くなる寸前まで本当は愛らしい女性だと気づかなかったり、引き取って育てた紫という存在があり、それを大切にしながらも浮気をしたりと、本当にどうしようもない男という感じですね。これを真面目に漫画に描いたら光源氏をきちんとした人間として説得力を持たせるのはかなり難しいかも知れません。まあ、実際は劇中でもかなり長い時間が過ぎているお出そんなにひどくはないのかも知れませんが。
前半はこのまろのろくでなし加減がかなり目立つのですが、話はだんだんとまろの出世や息子、夕霧の方に移っていき、最後の宇治十帖のあたりは、ドラマチックな展開をなかなか楽しんで読むことができました。
このコミックの大部分はまろのキャラクターと描き文字ののほほんとした台詞。お見せできないのが残念ですが、源氏物語に興味を持ちながら手が出せない人はこの本を入門書にすると本格的なものにも入りやすいです。
2月26日
書感です。
「危険な童話」
著者:阿刀田高
出版:新潮文庫
定価:400円
初版:平静3年4月15日
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阿刀田高のちょっとブラックな短編集です。
面白おかしいエッセイ集とは裏腹に、この人の短編集は本当にぞっとします。ホラーではないので怖がらせようと様々な演出を凝らすわけではなく、人の夢や希望、美しい情景描写から一気の人間の残酷差さへと持っていくような短編が多いです。
収録作品の中で最も傑作と思ったのは「茜色の空」という作品。50を過ぎて小学校の同窓会で集まって面々の中に昔の親友を見つけ、その想い出に浸るというものです。二人で交わした「困ったときには助け合おう」という約束は大人になっても有効なのですが、いったいどのように「助け合う」のか。
やはりこういった作品は、オチを語らずに作品の面白さを表現するのが難しいのでもどかしいです。
しかし、今回、短編集を読み通して思ったのが作品のオチそのものはそんなに特異なものではない、という事でした。もちろん、どうなるのかとドキドキしながら読み進め、最後に驚きがある事には変わりありません。しかし、予想を見事に裏切ってくれる結末とはちょっと違います。阿刀田作品を読み慣れていれば、最後には「ああ、やっぱり」という感覚があるかも知れません。短編の面白さの多くはオチにあると言っていいかも知れませんが、真に重要なのはそのオチを活かすためにどれだけのものを積み重ねていけるか、という事にあるのでしょう。
阿刀田高の短編の魅力は、オチに至るまでに展開される阿刀田ワールドへの没入にあるのだと再認識しました。
今回の短編集は過去を振り返る話が多いようです。登場人物達の子供の頃の記憶や、どこか郷愁の漂う舞台などが数多く出てきます。しかし、美しい想い出と現実とのギャップは必ずしも人を幸福にはしないようです。むしろ、美しい何かが非現実への引き金を引いてしまうのかも知れません。
日常の隣に潜む非日常への入り口へ、阿刀田高は案内してくれます。
2月27日
書感です。
「ときどき起きてうたた寝し」
著者:阿川佐知子
出版:文春文庫
定価:457円
初版:1998年8月10日
エッセイスト、阿川佐知子が週間文春に連載していたものをまとめたのがこの本。奥付を見てみると初版は1998年なのですが、連載は1990年だとのこと。もう12年も前になるわけです。
しかし、読んでいる途中にはまったくそんな事には気づきませんでした。
エッセイのテーマとなっているのはごく日常的な事ばかりなのですが、それでも時代を感じさせないというのは、著者の目がより普遍的な人間の根本の部分に向いているという事なのでしょうか。
実は僕は阿川佐知子という名前こそ知ってはいましたが、どんなことをしていてどのくらいの年齢の人なのかという予備知識はほとんどありませんでした。だから、このエッセイが第一印象になります。文章からは猛烈に忙しい生活を送っていながらも、その中に目を光らせていろいろなものを見ているな、と感じました。もちろん、文章にしなければいちいち意識しないような事も多いのでしょうが、こういった視点は人を楽しませるだけでなく、自分の生活も面白くするのではないかと思いますね。
時々出てくる家族の話や幼少の頃の豊富な体験談などは、好き嫌いがはっきりしていて活動的で、世話好きなのにどこか間が抜けていて、交友関係の広そうな著者の人格が育った事を納得させます。
初めて読む作家のエッセイはいろいろとその作家像を想像しながら読む楽しみがあります。
阿川佐知子のエッセイは、読んで感心したり、新しい知識を得たりする類のものではないですが、ものを楽しく見る視点を教えてくれるような気がしました。
2月28日
書感です。
「探偵ガリレオ」
著者:東野圭吾
出版:文春文庫
定価:476円
初版:2002年2月10日
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この作品、本屋でタイトルを見ただけでけっこう気になっていました。探偵ガリレオ……探偵役は物理学者なのです。
警視庁捜査一課の刑事、草薙は不可解な現象に出会ったとき、必ず訪ねるのは大学時代の友人、湯川学を訪ねる。
物理学者である彼は、持ち前の観察眼と得意の実験で現象を再現して見せるのだ。物理学者と刑事のコンビが数々の難事件に挑む……。
複雑な人間関係、不可能と思われる犯罪。それを解き明かしていく 探偵たち。ミステリは様々なものを題材に書かれていますが、専門性の強い物理トリックは通常、あまり歓迎されません。突然出てくる隠し通路や聞いたこともない薬品の話などが出てきたらそれは反則です。しかし、それはあくまで一般的な話。それを料理する作家の腕さえ良ければ、いくらでも面白く仕上がるのです。
この『探偵ガリレオ』は特別な調理法やスパイスを使っていない代わりにバランス良く仕上げた傑作という印象でしょうか。
出てくるトリックはあまり一般的ではないですが、それなりに知識がある人ならば知っているという程度。いわゆる理系と言われる人なら予想は付くかと思います。
最近思うようになったのは、ミステリの面白さはオチの意外さだけにあるのではないという事。どんな結末になるか予想がついていても、そこに向かってうまく話を運んでくれれば面白いのです。
短編だからという事もあって構成はシンプル。しかし、トリックというアイディアがあってもそれだけでは済まさず、きちんと人間関係を書き込み、あくまで最後の関門として物理トリックを用意しています。割と色々なパターンで犯罪が起こっていますが、刑事の草薙にはあまり深く人間関係に踏み込ませず普通に刑事としての職務を全うし、三人称の神の視点でそういうところを描写していくのがテレビドラマっぽいです。
ところで著者略歴を見ていたら東野圭吾は元エンジニアだそうです。技術的な要素に強いのも納得。
さて、この本の解説は佐野史郎がしています。湯川学のキャラクターは佐野史郎がモデルだからなのだそうですが、彼は特命リサーチ200Xに出演しているため、そういう役柄にもぴったりな気がしますよね。しかし、この『探偵ガリレオ』は特命リサーチの開始と同時期で、番組から発想を得たわけではないそうです。佐野史郎も解説で不思議がっていますが、これこそユングの言う同時性というものでしょうか。
『探偵ガリレオ』はまだ続いているそうですから続編に期待しています。
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