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| 5月14日から16日の読書と生活 #0702 |
| ■サッカー日本VSノルウェー レアルマドリッドと戦に続き、日本代表欧州遠征の第二戦目です。通称「タワーズ」と呼ばれ、平均身長183センチという高さを誇るノルウェー代表に対し、日本代表は連携で攻める……となるはずだったのですが、いざ試合が始まってみると日本はボールをキープできず、攻められっぱなし。FW陣の決定力の低さを考えると、少ないチャンスを活かさなければならない試合ではあまり勝てる気がしません。 後半に入ってなんとかペースを掴んできた……と思われて矢先にラインの押し上げを読まれ、失点。レアルマドリッド戦とまったく同じパターンだったのでがっくり。 なんとか反撃して欲しいという願いも虚しく、立て続けに2失点して3-0で退廃しました。高さと速さで攻めるノルウェーのサッカーが前半はあまり面白くなかったのですが、後半になるとシンプルなサッカーが本領を発揮。細かくパスを回しながらなかなかチャンスを作れない日本代表も、見習って欲しいところです。しかし、これだけの大敗は久しぶり。勝てるかもと思っていた試合だけに悔しさも大きいです。 (2002/05/15) ■書感『散る朽ちる落ちる』 著者:森博嗣 出版:講談社ノベルズ 定価:840円 初版:2002年5月8日 関連書感:森博嗣 森博嗣のVシリーズ最新作です。 超音波研究所で起きた殺人事件を解決した瀬在丸紅子だったが、今度は封印されたその地下で死体が発見される。 だが、それは単独の殺人事件には終わらず、紅子は何者かに襲われる……。 S&Mシリーズのときと違い、こちらは巻を重ねる事にだんだんミステリという印象が薄れています。何よりミステリなのは事件やトリックよりも、レギュラーメンバーの人間関係なのかも知れません。 語り手である保呂草潤平が徐々に人間味を増してきているのと反対に、シリーズの探偵役、瀬在丸紅子やますます謎が深くなっていきます。 今回もトリックはあっさり味なのですが、冷静になって考えると凄まじいという森流です。説明してしまえば簡単なんですが、普通はそんな事を考えないというパターンですね。 また、S&Mシリーズや短編も含めて話がつながり、大きな流れを作っているのも気になります。S&Mシリーズと違って何かを目指して進んでいそうなこのVシリーズ。 やはり続きが気になります。 (2002/05/16) |
| 5月17日から18日の読書と生活 #0703 |
| ■書感『ダック・コール』 著者:稲見一良 出版:ハヤカワ文庫JA 定価:600円 初版:1994年2月28日 関連:稲見一良 稲見一良の短編小説集です。 ダックコールというのは鴨の鳴き声を出す笛のこと。 このタイトルから想像できるように、収録されたのはすべて鳥にまつわる作品。鳥を見る人、狩猟する人、日本であったり外国であったり、本当に様々な人物と場所、時代で鳥にあこがれを託した短編が続きます。 この前読んだ『男は旗』では荒唐無稽な冒険を披露してくれた稲見一良ですが、僕としては稲見作品にはまった『セントメリーのリボン』のハードボイルドぶりを期待していたのでちょっと残念。しかし、続けて読んだこの『ダック・コール』は大当たりでした。 収録された六編の中で特に面白かったのは第三話の『密猟志願』と第四話の『ホイッパーウィル』 『密猟志願』は現代の日本を舞台に金持ちの屋敷から鴨を根こそぎ捕ってしまおうという話。大病で社会復帰ができない中年の主役と、奔放に生きている子供の間に生まれる友情、そして密猟という大きないたずらに臨む緊張感がさわやかに書かれています。現代日本で冒険ものを書くのは難しいと言われますが、子供でなくとも未知の事に挑戦するのはみな、冒険と言えるのでしょうね。 『ホイッパーウィル』は太平洋戦争帰りの日系アメリカ人が山に逃げ込んだ脱獄犯たちを狩る話。脱獄犯もそれを追う側も人間は様々。追われる方に凶悪犯人もいれば、追う側に狩りをゲームのように楽しむ面々もいます。そんな中、主人公のケンはダムに沈んだ故郷に帰ろうとする囚人の一人に共感を覚えていきます。 稲見一良の小説は、人の内面を言葉で語りません。しかし、登場人物の行動や鳥に対する想いが何よりもその人柄を語ります。短編は幻想的であったりハードボイルドタッチであったりと様々ですが、どれも不思議と心に残る作品でした。 ■映画『スパイダーマン』 監督:サム・ライミ 主演:トビー・マグワイア ずっと期待していた映画『スパイダーマン』を早速、見てきました。まあ、もともとヒーローものには弱いのですが、ほんと面白かったです。 『スパイダーマン』は『スーパーマン』や『バットマン』とちょっと違い、恋愛や将来など自分の人生の問題を抱え、ヒーローとしての力に悩みながらも活躍するという物語です。 まあ、こういったパターンは日本のヒーローでは元々ある傾向なので特に新しいわけではないですよね。 冴えない高校生がある日、突然すごい力を身に付けるというのは黄金パターン。しかしピーターはその力で一儲けしようと目論見ますが、そのために一人の犯罪者を見逃し、そのために両親のいないピーターを育ててくれた叔父を失ったしまいます。「大きな力には大きな責任が伴う」という叔父の言葉を噛みしめたピーターは高校を卒業後、ニューヨークに出てスパイダーマンとして町の平和に貢献します。もちろん、派手なコスチュームに身をつつみ、警察と無関係に活躍する彼をすべての人々が歓迎するわけではありません。 「何のために人々を助けるのか?」という疑問はどんなヒーローにもつきもの。 しかし、ピーターには叔父の言葉があります。力を持っているならそれを役立てるのは当然、という強い意志が気弱なピーターをスパイダーマンにしているのです。 もう一つ、ピーターを突き動かすのが大事な人を守りたいという気持ち。幼い頃から隣に住んでいるメリー・ジェーンになかなか自分の気持ちを伝える事はできないものの、彼女を守りたいという意志がピーターを強くします。 さて、ストーリーばかり語っていますが、やはり映画の中心はスパイダーマン独特のウェブスリングアクションでしょう。 ゴムのような糸を飛ばしてビルからビルへ飛び移る動きはまったく他にないものです。猛スピードで移動するカメラの中で動き回るスパイダーマンの異様な動きは原作のコミックそのもの。空を飛ぶより走ったり跳んだりする方がずっとすごいですね。 さて、きっちり完結はしているこの映画でしたが、次作への余韻はしっかり残しています。スパイダーマンとして活躍し始めたピーターですが、人生を送っていくうえではまだ完全に大人とは言えません。これからその成長が描かれていきそうです。続編、強く希望してしまいます。あと、アクションシーンのメイキングは見てみたいところ。DVD出たら買うかも知れません。 |
| 5月19日から20日の読書と生活 #0704 |
| ■書感『灰夜』 著者:大沢在昌 出版:光文社ノベルズ 定価:838円 初版:2001年2月25日 関連:大沢在昌「新宿鮫シリーズ」 舞台が新宿ではなく、鮫島以外のレギュラーキャラクターは誰でも出てこない今作はシリーズでも異色の作品。ですが、鮫島の奮闘はこれまで以上と言えます。 かつて自殺した同僚、宮本の法事に出席するため、九州の一都市を訪れた鮫島。宮本の親友だったという古山との出会い、麻薬取締官寺島との接触。町に不穏な空気を感じた鮫島だが、何者かに拉致監禁されてしまう……。 キャリアでありながらコースから外れ、警部でありながら一介の刑事として孤軍奮闘を続ける鮫島。精神的にも肉体的にも超人的にタフなわけでもない鮫島を奮い立たせるのは警察官としての自覚だけです。 地元暴力団や悪徳警官の不穏な動きを感じつつも、地元の警察さえ信用できず、鮫島は本当に孤独な戦いを続けます。 拉致監禁された鮫島を助けたのは、街で成功者となっている古山。自分の手腕だけで商売を広げてきた古山は様々な方面に顔が効きますが、決して悪事には手を染めず、暴力団の介入を許す事もありません。道は違っていても鮫島に似たものを持つこの古林に、鮫島は友情を感じるのです。孤独な鮫島にとって、自分と同じ匂いを持つ者が存在するというただそれだけの事が何よりの慰めなのかも知れません。 さて、今回は特にハードな話となった『灰夜』は鮫島の警察官としての原点を再確認する話。これが最新作『風化水脈』にどう繋がっていくのか楽しみです。 (2002/05/19) ■ワールドカップ開催間近 ワールドカップもあともう少しと迫ってきました。 日本各地のキャンプ地には各国代表がやってきてますね。 この時期に面白いのがワールドカップ前哨戦で、出場国どうしの試合も見られます。 日本が初戦で当たるベルギーはなんと優勝候補のフランスに2-1で勝利。韓国も好調のようです。 テレビでも連日ワールドカップ特集。淡路島ではイングランドを迎え、たいへんな歓迎ぶりでした。アルゼンチンのキャンプでは練習を見に来た熱心なアルゼンチンサポーターがフーリガンと間違えられて通報されたりしたそうです。 日本で試合をするとは言え、まったくチケットが手に入らずテレビ観戦となってしまっていたのであまり実感が湧いていなかったのですが、大会期間中の横浜あたりに行って外国人観光客でにぎわう様子を見てくればワールドカップ自国開催の気分を味わえるかも知れません。 (2002/05/20) |
| 5月21日から22日の読書と生活 #0705 |
| ■書感『騙す人ダマされる人』 著者:取偉孝昭 出版:新潮文庫 定価:514円 初版:平成10年8月1日 関連:『奪取』 『奪取』のあとがきで偽札に関する本として紹介されていたのがこの本。偽札だけではなく、様々な詐欺の手口などについて書いています。僕は元々、ジェフリー・アーチャーのコンゲーム小説などが好きなのでかなり面白かったです。 本で文字として読んでしまうと「なんでこんな騙され方をするんだろう」と、いう程度のものが多いのですが、人間お金がからんでしまうと冷静にはなれず、あまりにスケールが大きいと多少常識にはずれていても目をつむってしまうんですね。 巨額の詐欺をたくらむ人間は用意も周到。偶然を装って何度も接触したり、まったく別方面で事件を起こして目をくらませたりと小説ばりの活躍です。小説の方が本当の事件を元にしているのかも知れませんね。事実は小説より奇です。 騙された当事者にとってはたまったものではないのでしょうが、読んでいると刺激的。真保裕一が偽札をテーマに小説を書いたのもうなずけます。 誰もが詐欺の世界とは言えません。株にだって骨董品や絵画収集にだって、騙そうと手ぐすね引いている人間は潜んでいるのです。自分は騙されない……と思っている人間こそ引っかかってしまうと言いますね。何にも手を出さないのがいちばん確実なのでしょう。 (2002/05/21) ■書感『ジュン』 作者:石ノ森章太郎 出版:メディアファクトリー 定価:690円 初版:2001年5月21日 関連:石ノ森章太郎 石ノ森章太郎が小学館漫画大賞を取ったという短編作品集。 ジュンという青年が遭遇する様々な幻想を描いた実験的な漫画です。読んでみて第一の感想は「?」でした。収録短編には明確なストーリーはなく、台詞も音も非常に少ない抽象的な作品が多いです。浮かんでは消えていく夢のような景色、とらえどころのない登場人物たちは石ノ森章太郎の内面を具現化したものかも知れません。 正直に言えば、石ノ森章太郎も若かった……という感じでしょうか。他の石ノ森作品と比べてもかなり異色。これまで表現しなかった、あるいは表現できなかったものを漫画として描き出そうとしたのではないでしょうか。ジュン』で描き出される幻想世界は今となるとちょっと古いです。 この漫画が評価されるとすれば、石ノ森章太郎がこういった表現の先駆者となった事でしょう。 そしてこの漫画からインスピレーションを得た漫画家は数多くいて、現在の漫画につながっているのではないでしょうか。 晩年の石ノ森章太郎作品の高い完成度とこの『ジュン』の未完成さ、危うさは現在の漫画の発展を実感させてくれます。 (2002/05/22) |
| 5月23日から24日の読書と生活 #0706 |
| ■書感『今夜すべてのバーで』 著者:中島らも 出版:講談社文庫 定価:500円 初版:1994年3月15日 関連:中島らも(小説) 荒唐無稽でありながら、どこかブラックな小説を書く中島らも。この『今夜すべてのバーで』はアルコール依存症で肝臓を壊し、入院した男の体験を書いています。中島らもとしては経路の変わった作品ですね。 同じようにアルコール依存症で入院している老人や無愛想な医者、腎臓が悪い少年など、登場する入院患者たちは多少デフォルメされているものの、主人公の入院体験は妙にリアルで生々しくなっています。中島らも自身、アルコール依存症や鬱病などで入院したことがあり、その体験が元になっているのでしょう。 「35まで」と周囲から言われていた主人公は本当に自分の人生を35までだと思いこむようになり、痛飲を繰り返して生きてきたわけです。入院し、自分の身体が回復していくのを喜びながらも、それからの酒のない人生は想像つかない。いや、ちょっとくらい飲んでも大丈夫かも知れない。そんな思考に陥っていく様子が恐ろしくもあります。 中島らもの小説のブラックさはこういった人生観から来ていようのかも知れません。言うなれば中島らもの原点と言える小説でしょう。 (2002/05/23) ■書感『はじめの一歩 61巻』 作者:森川ジョージ 出版:講談社コミックス 定価:390円 初版:2002年5月17日 関連:森川ジョージ(コミック) 二階級制覇を賭け、デビッド・イーグルとのタイトルマッチに臨んだ鷹村だが、完璧を誇るイーグルのボクシングに苦戦。 しかし、鷹村の反撃により、試合は泥沼の打ち合いへと変化していく……。 野生と理論が融合したと言われる鷹村守のボクシング。前回のタイトルマッチでは野生で鷹村を上回るホークが鷹村を追いつめました。しかし今度はその反対。誰よりも練習を重ね、正確無比なパンチと試合運びを身に付けた理論派のイーグルは紙一重のところで鷹村のボクシングを上回っていきます。 これまで一敗もしたことのない鷹村ですが、今度ばかりは読者の目でみても負けがあり得ると思って読んでいます。 コミックにこういう無敵のキャラが出てくるとつい「どうせ最後は勝つのだろう」と思って読んでしまうものですが、主人公の幕ノ内一歩も日本チャンピオンを賭けた戦いで敗れていますし、ここまで描かれてきたデビッド・イーグルの強さには説得力がありました。 圧倒的な劣勢から生み出される奇跡の逆転より、どちらに転ぶかわからない本当の勝負を描いていける森岡ジョージの力がこの『はじめの一歩』を面白くしています。 そして次は一歩の後輩、板垣学の新人王戦。こちらもかなり楽しみな展開です。 (2002/05/24) |
| 5月25日から26日の読書と生活 #0707 |
| ■サッカー 日本VSスウェーデン 25日夜に行われたワールドカップ前最後の日本代表戦。 相手はFIFAワールドランキング19位のスウェーデン。 日本の成果を試すためにはもってこいの相手です。 スタメンは柳沢の1トップでMFが6人の3-6-1というフォーメーション。普段は左の小野も今回は右でした。ここまで来てトルシエ監督は新しい陣形を試すのかとちょっとがっかり。結局のところ、最後まで絶対に勝ちにいくという姿勢の試合はやってくれませんでした。まあ、それはワールドカップ当日に見られるでしょう。 で、試合はと言えば可もなく不可もないという感じでした。 ノルウェー戦のときもそうでしたが、FWの決定力が低いとチャンスの少ない試合ではまったく勝てる気がしません。 結局、前半のうちに1失点。 後半、アレックスのクロスに中田が届かず、それが相手DFに当たって一点を返し、結局そのまま1-1で試合は終了。 ノルウェー戦に続いて予選が不安になる試合でしたが、考えてみれば格上の相手ばかりなので当たり前と言えば当たり前なのかも知れません。 唯一勝てそうなのはチュニジアでしょうか。大分トリニータに2-1、ガンバ大阪に3-0で破れたチュニジアはここのところほとんど得点を取っていないようです。しかし、前大会のジャマイカ戦のように勝てると思っている相手に敗れる事もあり得るので油断はしないで欲しいですね。 (2002/05/25) ■書感『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』 著者:島田荘司 出版:集英社文庫 定価:457円 初版:1987年10月25日 関連:島田荘司 島田荘司の長編ミステリです。 タイトルかの通り、夏目漱石がロンドン留学中に怪事件に遭遇し、シャーロック・ホームズに相談するという奇抜な内容です。島田荘司は御手洗作品の中でも何度かシャーロック・ホームズについて言及しており、ホームズ物語のつじつまがあわないのはホームズのほら話や妄想をワトソンが無理矢理まとめたためだという説を披露したりもしていますが、実は島田荘司本人が何よりのホームズファン。この作品もホームズへの愛があふれたものになっています。 語り手は漱石本人とおなじみワトソンの二人。漱石が語る章は現代仮名遣いで書かれてはいるものの、漱石特有の文体やちりばめられたユーモアなど、まるで本人が書いているかのような出来です。漱石の目から見たホームズは「おかしなイギリス人」以外の何ものでもなく、恐れを感じてすらいるのですが、何故かトントン拍子に事件が解決してしまいます。ワトソンの章と交互に事件は語り進められていきます。微妙に重なる部分もあるのですが、漱石とワトソンの視点ではまるで解釈が異なるというか、ワトソンがホームズを多分に美化して書いているのがおかしいです。もちろんこれは、ワトソンがホームズの事件を読み物として世の中に出しているからで、本人もホームズの変人ぶりには手を焼いています。 しかし、物語の進行と共に漱石とホームズ、ワトソンの間には友情が芽生えていき、ホームズはその出会いをきっかけに多少おかしくなっていた精神の均衡を取り戻します。最終的に漱石の前にいたのはまさしく、僕らが知っている名探偵シャーロック・ホームズでした。漱石が彼らと別れ、日本へ帰る場面には涙を誘われます。 コナン・ドイル亡きあともホームズものを書いている人間は数多くいますが、日本のシャーロック・ホームズと言われる御手洗潔を生みだした島田荘司だけにその出来は絶品。 普段の島田荘司とはひと味違う、コナン・ドイル的な事件の作りと解決は見事でした。 (2002/05/26) |
| 5月27日から28日の読書と生活 #0708 |
| ■書感『はだかの太陽』 著者:アイザック・アシモフ 出版:ハヤカワ文庫SF 定価:600円 初版:1984年5月31日 関連:アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』 『鋼鉄都市』シリーズの第二弾です。このシリーズ一見、独立したもののように見えますが、『われはロボット』から続くロボット史と『ファウンデーション』シリーズの未来史の中間に当たり、『ファウンデーション』シリーズを読んでいると歴史の流れが見えてきます。 地球人の捜査官イライジャ・ベイリは惑星ソラリスで起きた殺人事件の調査のため、宇宙へと派遣される。そこで彼が再会したのは、かつてパートナーとして共に殺人事件の調査に当たったロボット、ダニール・オリヴォーだった。捜査の過程で、ベイリは地球人類の未来に何が重要かを悟る……。 『鋼鉄都市』シリーズにおいて、地球は宇宙開拓民(宇宙人と呼ばれる)に取り残された世界に過ぎません。宇宙人の発展に寄与したロボットを恐れ、太陽に照らされた広い空間を嫌って閉鎖された都市に暮らす地球人は、はるかな未来、『ファウンデーション』の世界の滅び行く帝国首都、トランター人に似ているかも知れません。 惑星ソラリスは人類社会で最もロボットかが進んだ世界。 すべての人間が広大な領地を所有し、ロボットを働かせ、自らはちょっとした仕事と趣味の研究を生き甲斐として暮らします。階級の差もなく、物質的な欲望はすべて満たされたソラリス社会では、直に人間と会う事はまずないのです。 そんなところで何故、殺人事件が起こるのか? 事件のあり得ないソラリスからの要請を受けた地球は、その事件に宇宙人社会のゆがみを察知し、ベイリを送りこむわけですが、同時にベイリは地球社会のゆがみについて考えを巡らせる事になります。 ちょっと残念だったのは今回、ダニール・オリヴォーの活躍があまり見られない事。最も力を持った宇宙国家オーロラの最先端ロボットであるダニールは、今回のような任務を背負ったベイリにとってある意味、敵とも言える存在です。 しかし、今回の『はだかの太陽』でのベイリの言動は、オリヴォーに影響を与え、後の人類の歴史が変化していく事になりますが、それはシリーズ次作『夜明けのロボット』で。 (2002/06/27) ■書感『スパイダー・マン 1〜2巻』 作者:池上遼一 出版:メディアファクトリー 定価:619円 初版:2002年5月19日 関連:映画『スパイダーマン』 映画『スパイダーマン』の公開で文庫化されたのがこの池上遼一の『スパイダーマン』 他にも平井和正原作の『スパイダーマン』などもあり、過去に日本上陸した頃には影響が大きかったようですね。巨大ロボットが登場する和製の特撮ドラマ『スパイダーマン』もありました。 ヒーローとしての力を持ち、人のためにそれを使っても感謝されるとは限らない……原作で描かれたヒーローと日常の両立に、人間の暗黒面を加え、よりハードにしたのが池上遼一の『スパイダーマン』です。 ある日、突然に超能力を身に付けた主人公ユウがヒーローとしてその力を使うというところまでは同じ。しかし、日本を舞台にしているからか、偽善者とののしられ、誹謗と中傷を浴びる姿はより生々しいものとなっています。善意は曲解され、力を悪用する他の超人達と同列にしか扱われない事で、ユウの精神は追いつめられていきます。 敵として現れるのは、様々な事情で超能力を身に付けたり、改造されたりした人間たち。ユウはそこに社会のゆがみと、自分の未来を見てしまいます。誰よりも孤独で、誰よりも追いつめられたヒーロー。 自分の強大な力はピストルを持ち歩いているに等しいと考え、追いつめられた事によって芽生える暴力的な衝動と戦うユウの姿は痛々しいです。 まだ完結まで出ていないので、続きが気になります。 (2002/06/28) |
| 5月29日から30日の読書と生活 #0709 |
| ■書感『海の短編集』 著者:原田宗典 出版:角川文庫 定価:390円 初版:平成9年2月25日 関連:原田宗典 タイトルそのまま、海をテーマにした短編集です。 原田宗典はエッセイだと妙なノリというか、ハイテンションの人なのに小説はどこか不気味な雰囲気を漂わせているものばかりで、そのギャップがどこから来るのか謎です この短編集の場合ほとんどが海を訪ねた観光客が主人公。そこで出会った不思議な人や聞いた話などが語られます。。海をテーマにと言うと海に出たり潜ったりという話を連想しがちですが、それがないのは原田宗典自身にそうした体験がなかったからでしょうか。 美しく、魅力的でありながらどことなく不安を誘う場所。原田宗典は海をそんな風に描いています。 元々はラジオドラマのためのショートショートだったらしいのですが、それを書き直して新しく一冊の本にしたという事です。ラジオでは語りが余韻を残し、より不思議な感覚を味わえてかも知れません。 ■書感『取引』 著者:真保裕一 出版:講談社文庫 定価:854円 初版:1995年11月15日 関連:真保裕一 この本、文庫で660ページの大作でしたが、なんと一日で読み終わってしまいました。まさに息もつかせぬという言葉そのままの展開で読ませてくれます。 公正取引委員会審査官の伊田は、フィリピンで行われているというODAでの不正を内偵するため、マニラへと飛ぶ。ターゲットは伊田の旧友、遠山。かつての友を捜査のために利用する事に後ろめたさを感じる伊田だったが、二人は予想もしなかった大事件に巻き込まれる……。 冒頭、いわれのない汚職の嫌疑をかけられるところでは、真保裕一のいつものパターン……と思ったものですが、さすがに同じカードは何度も使わないようで、話は思ってもいない大きな展開へ繋がっていきます。 真保裕一は過去に何か引け目があって、そのために影を背負った主人公が多いですが、この主人公、伊田は上のやり方に反発し、閑職へ回された熱血漢。他の登場人物とのやりとりや仕事に対する姿勢などにもこれまでとちょっと違った情熱を感じます。 フィリピンへの派遣、巻き込まれる大事件、そして意外な展開と一気に物語は進みますが、少し不満があるとすれば中盤で本道を外れてしまい、ほとんど終盤までそれが続いてしまう事でしょうか。ODAの内偵調査というよりは、フィリピンで巻き込まれた事件の方がメインになってしまっています。 『震源』でも途中で主人公の職業とは関係のない世界へ物語が展開していきましたが、せっかくあまり馴染みのない職についている主人公を出すのなら、その世界で話を進めて欲しいところです。 しかし、物語のボリューム、仕掛け、展開のスピードなどには文句なし。もちろん楽しめる大作として仕上がっています。 |
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