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| 6月2日から3日の読書と生活 #0711 |
| ■書感『天使たちの探偵』 著者:原寮 出版:ハヤカワ文庫JA 定価:544円 初版:1997年3月10日 関連:レイモンド・チャンドラー ハードボイルド小説となると誰もが引き合いに出すのはレイモンド・チャンドラー。昔、大沢在昌や北方謙三を読み始めた頃にチャンドラーの「大いなる眠り」を読んだことはあったのですが、趣はあるものの訳があまり良くなくてあまり好きにはなれませんでしたね。 和製ハードボイルドが決して安っぽくないのは新宿鮫などを読めばわかることですが、向こうのように探偵が主役だったりすることは滅多にありません。優秀な警察組織がある日本では現実的に探偵の出る幕などない……というところなのでしょうが、この原寮はチャンドラーと真っ向勝負。 新宿に事務所を構える私立探偵、沢崎を主役にした短編集がこの『天使たちの探偵』です。前述したように、探偵が殺人事件の捜査をしたり人の悩みを鮮やかに解決したりする事はない……というのはもちろん大前提。主人公は警備員のバイトなどをやって稼ぎつつ、時々訪れる依頼人の相手をするという程度。金にならないと言いつつ、とことんまで調べて自分にとっての真実を探り当てなければ気がすまない沢崎によって、平凡な浮気調査や人捜しは一歩深い事件へと姿を変えます。 余計な事は喋らず、黙々と歩いては捜査を続け、何かあればそこそこタフで、クールだが人情味もあるという沢崎ですが、経験を積んだ彼にも人の心の中まではなかなか見通せません。 何のために探偵家業などを続けているのか、それを語らないところが何よりハードボイルドです。 (2002/06/02) ■ワールドカップ予選 土日のように家にいるとつい2、3試合見てしまいあっというまに時間が経ってしまいます。ドイツとサウジアラビア、イングランドとスウェーデン、スペインとスロベニア、イタリアとエクアドルなど強国の試合は見逃せませんが、こういうチームを見ていると日本がどれだけやれるのかちょっと不安になりますね。やはり予選のベルギー、ロシア、チュニジアというのはいい組み合わせかも知れません。 それでもベルギー、ロシアは格上。最低でもこのどちらかに勝ってチュニジアにも勝利しないと決勝トーナメント進出は難しい。アジア予選がなかったので何かがかかった試合というのは本当に久しぶり。プレッシャーの中、どれだけやれるでしょうか。もう試合は間近に迫っています。 (2002/06/03) |
| 6月4日から5日の読書と生活 #0712 |
| ■サッカー日本VSベルギー 日本の悲願はワールドカップ初勝利。決勝トーナメント出場も夢ではないグループに入った日本ですが、ベルギーもロシアも格上ということで、あまり楽観はしていませんでした。 特にグループH内でも1位通過が有力視されているベルギーが初戦というのはちょっときついですよね。仮想ベルギーということで試合をしたノルウェー戦で大敗しているだけになおさらです。 と、考えつつもやはり期待はふくらみます。結局、4日は会社を午後半休にしてベルギー戦を見てしまいました。 前半、予想通りに高いボールを入れてくるだけでなく、中央からの突破を図ったりするベルギーに対し、日本の攻撃はイマイチ。しかも後半に入ってすぐ、クリアボールの戻りから失点というもっともありそうだったパターンで、かなり気分が落ち込みましたが小野のロングボールから鈴木が走り込んで見事に押し込み、同点。 こうなると見ている方も気分はがぜん盛り上がり、日本の攻撃も急によくなって稲本が2点目を上げたときにはもうほとんど勝ったような気分でした。 しかし、そう甘くもなく、結局またセットプレイから何度も押し戻されて失点。 同点になってからも日本の志気は衰えず、稲本の単独とっpから得点して再び突き放す……と思ったらファールだったりしましたが、結局そのまま同点で終わりました。 負けるかもと思っていたベルギー戦を引き分けで終えた事は確かに嬉しいし、先取点を許して同点に追いついた事には満足ですが、こんな試合を見ると欲が出てきて勝って欲しかったと思ってしまいますね。 次のロシア戦は大きなポイント、ここで勝たなければ決勝トーナメントは難しいでしょう。 日曜日、頑張って欲しいです。 (2002/06/04) ■書感『夜明けのロボット 上・下』 著者:アイザック・アシモフ 定価:600円 出版:ハヤカワ文庫SF 初版:1994年6月20日 関連:アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』シリーズ 前作、『はだかの太陽』で壁に囲まれた都市を出て新たな大地の開拓に乗り出さなければ地球人は緩慢な滅びの道を歩むと悟った主人公のイライジャ・ベイリ。SFとミステリ要素を見事に融合させたうえで長編でありながら、壮大な人類史の一幕を構成するのがこの『夜明けのロボット』です。 惑星ソラリスでの殺人事件を解決し、一躍英雄となったベイリはやがて地球人を宇宙へ送り出すため、若い世代を野外に親しませる運動を行っていた。だが、宇宙国家の中心である惑星オーロラでかつてのパートナーであるロボット、ダニール・オリヴォーの生みの親、ファストルフ博士がロボット殺しの容疑をかけられ、窮地に立たされていた。地球の命運を握る博士を助けるため、ベイリはオーロラへと派遣される……。 『われはロボット』から続くロボット史を受け継いだこの『鋼鉄都市』シリーズ三作目でポイントとなるのは陽電子頭脳で思考するロボットの心理。人間を絶対的に守護し、尽くすために刷り込まれたこの法則をどう解釈させるかがロボットを思い通りに動かすうえでもっとも重要なのです。 『われはロボット』の時代に開発された原始的なロボットと違い、この時代の三原則はより多くの要素を判断し、適用されます。個々のロボットの性質、性能、そして命令した人間などによって複雑に変化するこのロボットの心理を理解するため、ベイリは苦心します。 しかし、この『夜明けのロボット』では、ロボットの心理を人間心理と絶妙に対比させ、人間という生き物を深く描き出していくのです。クールで紳士的なのが当たり前の宇宙国家において、ベイリのように感情の起伏が激しく、時に滑稽で情けない振る舞いをする地球人こそ読者の目にはもっとも人間的に映るでしょう。そしてパートナーのダニールこそ、ベイリがもっとも頼りとする理想的な「人間」なのです。 そして、何より驚愕するのが作品のラストシーン。ミステリではなく、SFなんだと実感するようなオチではありますが、凡庸な解決なんてもちろんアシモフには求めません。 ロボット史、そしてファウンデーションを読んでこその感動かも知れませんが、ひらめきと粘りこそは優れていても冴えない捜査官に過ぎないベイリが人類史を動かす瞬間がそこにはあります。 アシモフはやはりアシモフ。こういう作品を書いてくれる唯一の作家です。多くの作品を読めば読むほど、その価値がよくわかります。 |
| 6月6日から7日の読書と生活 #0713 |
| ■書感『ソー・ザップ!』 著者:稲見一良 出版:角川文庫 定価:417円 初版:1993年6月 関連:稲見一良 様々な武術に秀でた者たちが集まるパブ・パピヨン。手裏剣と小太刀の達人ハヤ、元警察官で射撃の名手の金久木、元レスラーのベアキル、そして元ラグビー選手、大型獣ハンターにしてサバイバルの達人ブル。常連の中でも最強の4人にレッドムーンと名乗る男が挑戦する。人気のない山中を舞台に、もっとも危険なゲーム、マンハントが始まる……。 武術とは詰まるところ、人を倒すための技術。本当にその力を試そうと思ったら、最後は殺し合いに行きつく事になります。この『ソー・ザップ!』に出てくる5人の達人たちが戦う理由はただ一つ。死力を尽くして戦ってみたいという、ただそれだけです。 生き残るための必死さは冒険小説を盛り上げるために必須といっても良い要素ですが、この物語にはそういったものが一切ありません。限界を極めた肉体と精神のぶつかりあいが全て。 サバイバルと銃器に関する細かいディティールはこの戦いの冷酷さを際だたせます。 何にもならない、後には何も残らない。しかし、決闘という言葉にはそんなむなしさを越えた興奮があるのです。 (2002/06/06) ■映画『少林サッカー』 主演:チャウ・シンチー 今、話題の香港アクション大作です。 香港映画というとジャッキー・チェンのように笑いとアクションを併せ持った作品を真っ先に思い浮かべまず。なぜそんな取り合わせなのか、考えてしまいますよね。お笑い映画なら細かい理屈抜きでアクションが楽しめるからでしょうか? 少林拳を学び、そのすばらしさを世界に認めてもらおうと活動を続けるシンは鋼鉄の右足と呼ばれる強力な蹴りを持つ男。 努力も実らず貧乏暮らしを送る彼は、元サッカー界のスターであったファンと出会い、サッカーを通して少林拳のすばらしさをアピールしようとチームを結成する……。 もうこの映画の圧倒的なおかしさを前にこんな解説は無意味。妙な演出、真面目だがおかしな主人公、わざとらしいがそれを堂々と見せてしまうワイヤーアクション。映画は技術がすべてではないと実感させてくれます。 ワールドカップのまっただ中の今の時期に、センターラインからシュートを打てば決まってしまうシンのサッカーにはもう笑うしかありません。 かつてシンと共に修行した兄弟子たちも長年の貧乏ぐらしですっかり一般人と化してしまっているのですが、目覚めてしまえば目のさめるような技術とパワーで普通のチームを一蹴します。しかし、この映画はそんなおかしさだけではありません。 見ていると馬鹿馬鹿しい少林拳の技の数々ですが、もしかしたら本当に「少林拳は最高なのかも」と思ってしまいます。 監督・主演のチャウ・シンチーはほんとに少林拳好きなんでしょうね。 物語の中に織り込まれた太極拳の達人、ムイとシンのロマンスなどが取ってつけたようだと思っていたのですが、最後まで見ていたらそれがラストへの伏線になっていて驚きです。 アクションとかお笑いとかだけではこんな映画はできません。そこに注ぎ込まれたパワーの強さを最初から最後まで感じ続け、圧倒されるような作品になっています。 (2002/06/07) |
| 6月10日から11日の読書と生活 #0715 |
| ■書感『ヒカルの碁 17巻 なつかしい笑顔』 原作:ほったゆみ 作画:小畑健 出版:集英社少年コミックス 定価:390円 関連:ヒカルの碁 『ヒカルの碁』はこの巻で第一部が完結。ジャンプで囲碁漫画というのがそもそも異色でしたが、平安時代の棋士の幽霊が何も碁を知らない主人公ヒカルに取り憑くという、一見軽めの始まりからは想像もつかない緻密で硬派なストーリー展開と、レベルの高い小畑健の作画で一気にブレイクしましたね。 『キャプテン翼』でサッカーがはやったり、『スラムダンク』でバスケットボールがはやったりと、ジャンプ漫画は影響力が強いですが、今回も囲碁人口、増えているようです。 佐為が消え、囲碁への情熱をなくしたヒカルは、中国から帰った伊角との対局で自分の中にいる佐為に気づく。自分が対局する事こそ佐為を生かすことだと悟ったヒカルはついに塔矢アキラとの対局を迎える……。 なんと言っても、後半のヒカルの成長ぶりがすばらしいです。成長というのは少年漫画に必須の要素ですが、説得力を持ってそれを描ける漫画家がすべてではありません。原作のほったゆみのプロットが素晴らしいのはもちろんでしょうが、小畑健の画力が一役買っているのも間違いないでしょう。 そしてまた、ヒカルの知らない別なところで囲碁界は動きだします。これまでに登場してきた中国や韓国の少年棋士たちや、インターネットで世界の囲碁の同行を探っていた各国の選手たち。 これからのヒカルのライバルは世界中から出てくるのでしょうね。 この巻で完結でも十分に納得のできる作品でしたが、こうなるともう面白いところできっちり終わって欲しいとは思いません。第二部ではさらにレベルの高い『ヒカルの碁』を展開して欲しいですね。 (2002/06/10) ■書感『あずまんが大王 4巻』 作者:あずまきよひこ 出版:メディアワークス 定価:680円 関連:あずまんが大王 12歳の天才高校生ちよちゃんとおかしな仲間たちの高校生活を描いた4コマ漫画『あずまんが大王』 連載中、実際の季節の移り変わりに合わせて進行してきた漫画だけに、開始から3年経ってメンバーはみんな3年生。 大学受験を控えた彼女たちですが、結局ノリは同じで、あいかわらずテンションの高いぼけた会話で笑わせてくれます。 また、この4巻は単にギャグやノリで面白いだけではなく、流れてきた年月やキャラの造形の深さなどを実感する内容でもありました。 榊のライバルとしてレギュラーとなり、ともちゃんとのバカコンビになった神楽は、イマイチ他との差別化がされておらず、キャラを増やし過ぎではないかと思っていましたが卒業近くなってからいろいろな面が見えてきて今回は見せ場が多かったです。また、最初から登場しておきながらだんだん影が薄くなっていたかおりんも最終巻でふたたび立場を取り戻したという感じ。 3巻ではこのまま大学編に突入するのかなと思っていましたが、最終的にはみんな自分の進路を選び、離ればなれに。 ちょっと寂しい最後かなと思いましたが、担任だったゆかり先生や黒沢先生は年月を越えて友情を保っているという意味で、ちよちゃんたちの大先輩なのかも知れません。 絶妙な間と柔軟な発想で読者の笑いを呼ぶこの『あずまんが大王』ほどの傑作はなかなか生まれないでしょうが、あずまきよひこにはこれからも注目ですね。 (2002/06/11) |
| 6月12日から14日の読書と生活 #0716 |
| ■書感『試験に敗けない密室』 著者:高田崇史 出版:講談社ノベルズ 定価:740円 初版:2002年6月5日 関連:「千葉千波」シリーズ 『試験に出るパズル』の続編となる千葉千波シリーズの第二弾。名前の明かされない主人公「八丁堀」または「ぴぃくん」と浪人仲間の慎之介、そして天才さわやか高校生の千葉千波くんのトリオが夏休みの旅行先で事件に巻き込まれます。 土砂崩れで電車も道路も普通となった山奥の村。そこの小さな旅館で起きた事件というシチュエーションで、まさに作られたような状態。 全開のパズル的事件に続いて、今回は密室クイズというところでしょう。この密室、真面目に考えてはいけません。いや、アンフェアなわけではないんですけどね、反則すれすれというところかも知れません。しかしまあ、シリーズのノリを考えてみれば真面目な密室よりこういったものを期待します。 三人のかけあいはあいかわらずなのですが、語り手である主人公が実は何より笑えます。独白なので他の登場人物には頼りなげな人間にしか見えないというのも面白いです。 『試験に出るパズル』と同様、探偵役の千葉千波くんはあざやかな推理を店ながらも実は最後の一歩で詰めが甘く、主役がおいしいところを持っていくのも健在。 しかし、結局独白なのでそれを知っているのは読者だけなんです。他に類を見ないワトソン役が何より好きです。 (2002/06/12) ■書感『皮膚の下の頭蓋骨』 著者:P・D・ジェイムズ 出版:ハヤカワミステリ文庫 定価:680円 初版:昭和61年10月20日 関連:「コーデリア・グレイ」シリーズ 『女には向かない職業』で自殺した上司から仕事を引き継ぎ、プライド探偵事務所を運営している主人公、コーデリア・グレイ。彼女が遭遇した第二の殺人事件がこの『皮膚の下の頭蓋骨』です。 命を狙われていると主張する女優、クラリッサ・ライルの護衛のため、秘書兼話し相手として雇われたコーデリア・グレイ。舞台のため、孤島に渡ったクラリッサに同行したコーデリアだったが、開演を前にクラリッサは死体として発見されてしまう……。 解説に曰く「この世でもっとも無垢な探偵」コーデリア。 いたずらに感情を外に出さず、愛想もこびもなくクールに振る舞う彼女に、多くの登場人物たちは好意を感じます。 その振る舞いはまるでこの世の利害のすべてと関係がないと言わんばかりで、ニュートラルな誰の味方でもないという雰囲気に周囲の人物は心を開くのかも知れません。 わがままで誰にも好かれないクラリッサという人間を知っても真摯に職務を遂行し、命を守ろうとしていたコーデリアはその死に大きなショックを受けます。 この作品、ミステリではありながら、殺人事件の捜査はあくまで警察に任せ、コーデリアは独自に自分の考えを追い求めますが、その内心は推理や捜査よりも殺人という事件を起こした悪や、自分の心理の追求などに費やされています。 『皮膚の下の頭蓋骨』は殺人という悪によって叩きのめされたコーデリアの精神が犯人との対決によって再生していく物語でもあります。 コーデリアは周囲に揺るがされず、何があろうと自分の道を歩いていくのです。探偵という『女には向かない職業』は彼女にいったい何をもたらすのか、その答えは示されません。 探偵という人生は永遠の葛藤との戦いなのかも知れません。 (2002/06/13) ■サッカー日本VSチュニジア さて、ついにやりましたね。日本、チュニジアに2-0で勝利し、念願のワールドカップ決勝トーナメント進出です。韓国もポルトガルに勝ち、進出を決めました。開催国が必ず決勝トーナメントに進むという伝統は破られませんでした。 この試合、見たかったんですがベルギー戦でも会社を半休してしまったのでさすがにできず、仕方がないのでキリンの懸賞で当たった勝ちTを着て仕事をしてました。 しかし、当然と言うか周囲も落ち着かない様子。廊下に出れば誰もがサッカーの話題でした。みんなこんなにサッカー好きだったっけ……と思うくらい誰もが気にしていましたが、こんなお祭り気分もいいですね。 職場ではYahoo!の実況を盗み見しながら仕事。しかし、試合の2時間は気が気でありませんでした。 定時で会社を出て帰ると、渋谷や新宿は青いユニフォームを来た人々でいっぱい。国立競技場のスクリーンで試合を見ていたのでしょう。すれ違う人々が握手やハイタッチを交わしていました。僕も青いTシャツだったので握手を求められ、乗り換えのわずかな時間だけで10回くらいしてきました。 さて、まだしばらくサッカーが気になって仕方のない日が続きそうです。次は18日の火曜日です。 (2002/06/14) |
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