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| 6月15日から16日の読書と生活 #0717 |
| ■書感『そして夜は蘇る』 著者:原寮 出版:ハヤカワ文庫JA 定価:640円 初版:1995年4月10日 関連:原寮 原寮の「りょう」は実はウ冠のない文字なのですが、PCでは出ないので仕方なく「寮」を代字としています。僕も本名はPCで出ないので別な字を使っています。それはさておき、この『そして夜は蘇る』は原寮のデビュー作品。いきなり山本周五郎賞の候補になったそうです。 レイモンド・チャンドラーに心酔したというだけあって、作品は根っからのハードボイルド。 新宿の一角に探偵事務所を構える沢崎は依頼を受け、行方不明のルポライター、佐伯を追うことになる。佐伯の足取りはやがては東京都知事の狙撃事件へとつながり、思わぬ展開を見せはじめる……。 『天使たちの探偵』のあとがき「探偵志願の男」で沢崎が探偵になったきっかけに触れられており、この『そして夜は蘇る』が初事件かと思ったのですが、考えてみれば経験を積んだ渋い探偵でないとハードボイルドは成り立ちにくいですよね。 と、いうわけですでにベテランの沢崎が活躍するこの作品ですが、『天使たちの探偵』に比べるとミステリに近いかも知れません。 もっともハードボイルド色が強く出るのは解決の部分。短編集であった『天使たちの探偵』ではそれが何度も見られますが、こちらはただ一度だけです。大岡裁きと同じような感覚かも知れません。事件を解決してかっこよく去る姿が何よりハードボイルドなわけです。 苦労を振り返ることも感慨に耽る事もありません。ただ、事実を自分のものとして正直に受け止めるのが探偵、沢崎という男。これからさらに渋みを増していきそうな気がします。 (2002/06/15) ■映画『ハリーポッターと賢者の石』 監督:クリス・コロンバス 主演:ダニエル・ラドクリフ たまたま実家の母親が借りてきたので、ついでに見てしまいました。見に行こうと思っていたものの結局、行かなかったのでようやくという感じです。しかし、やはりこれは大画面の映画館で見るべきだったかもと少々後悔。 幼い頃に両親を亡くし、叔母の家で不遇の生活を送るハリーはある日、魔法学校からの迎えが来て自分が魔法使いだという事を知る。ホグワーツ魔法学校に入学し、学び始めたハリーはやがて賢者の石を狙う悪との対決を迎える……。 今時の映画はCGですばらしい映像を作れる事はもう当たり前。正直、思っていたほど高レベルな特撮というわけではなかったのですが、その美しさはすばらしいです。 魔法世界のディティールなど細かいところまで映像になっていて目が離せず、原作でどう書かれているのかが気になります。主人公のハリー・ポッターはあまり強い個性を持っていないキャラクターという感じではなく、むしろ周囲の友人や先生たちの方が強烈。中でも親友となったハーマイオニー、ロンの二人はいいキャラです。大きな力を持ち、将来に何かを背負った少年が温かい人々に囲まれて成長していく……という物語の第一歩なんでしょうね。 疑問に思ったものの映画の中ではなんだったかよくわからない部分もいくつかあり、やはり原作が読みたくなります。 高いですけどね、これは放っておけません。 (2002/06/16) |
| 6月17日から18日の読書と生活 #0718 |
| ■書感『マレー鉄道の謎』 著者:有栖川有栖 出版:講談社ノベルズ 定価:940円 初版:2002年5月8日 関連:小説家有栖シリーズ 犯罪学者火村英生と小説家有栖川有栖が登場する国名シリーズの最新作です。短編集だと思っていたのですが長編で、なんとなく得をした気分。別に短編の方が好きというわけではないのですが、事前情報を知らずに読んで、思っていたのと違うのは嬉しいものです。もちろん、それは外れなしの有栖川作品だからこそ言える事ですが。 さて、今回は国名シリーズでもこれまでと大きく違うところが一点。この作品はタイトルの通り、本当にマレーシアが舞台です。 バカンスのため、学生時代の友人、衛大龍のいるマレーシアを訪れた火村英生と有栖川有栖。二人はそこで密室殺人事件に遭遇する……。 あくまで本格にこだわる有栖川有栖らしい密室殺人事件。 ここは細かく語らずにおきますが、すごい密室を考えれば考えるほど著者自身はトリックを考えるのが難しくなり、苦労するんでしょうね。 学生有栖シリーズとこの小説家有栖シリーズはまったく別物ですが、語り手である主人公有栖の暖かな性格が殺人という殺伐とした題材にセンチメンタルな色を添えるのは共通。 今回は、陽気でありながら有栖以上に優しく繊細な衛大龍という友人もいるし、いつものめちゃめちゃな思いつき推理は宿で一緒になった英国人(米国人?)小説家にとられてちしまっていますが、英語に堪能とは言えない有栖の視点で小説が書かれているため、英語での会話は『』で囲まれ直訳調になっているなど、存在感は十分です。 殺人犯に対し、並々成らぬ敵対心を持つ火村は今回、特に感情的な場面も見られます。 火村の過去はシリーズを通した謎ですが、まったく進展がないまま続いていますね。それが明かされるときがシリーズの最後なのでしょう。 (2002/06/17) ■サッカー日本代表 ついに日本代表、負けてしまいましたね。ベスト8入りがかなわず残念。一方の韓国は強国イタリアを破って進出したので悔しさも倍増です。常に自分たちのサッカーをしていく……という事でしたが西澤のワントップでこれまでと布陣を変えてしまったのはまずかった、なんて考えたりもしますが、いい攻撃をしてはいたし、圧倒的に相手より強くない限り、負ける事もあるということですね。今回のワールドカップは特にそういった番狂わせが多いです。 ここぞというときに驚異的な執念を見せる韓国と、常に自分たちのペースを守る日本。どちらが良い悪いではなく、タイプの違いが結果に出たと言えます。トーナメント戦のような形式だと韓国は特に力を発揮するのかも。 とりあえず目前の大きな目標はなくなってしまいましたが、次のワールドカップに向けてがんばって欲しいですね。 日本代表の平均年齢は25歳。今の中心メンバーの大半は次も出られるでしょう。そして、力のある若手が入ってくるのが何より楽しみです。特にMFは充実しているのでFWが欲しいですね。 ここ数試合で特に印象に残ったのは小野でした。どちらかと言えば守備に回り、相手の攻撃を事前につぶす場面が多く見られましたが、やはりトップ下で最終パスを出して欲しいです。 フライボールからのダイレクトパスなどに関しては世界トップクラスと言えるくらいのセンスを持っているのではないでしょうか。一瞬、ボールのコントロールミスかと思うほどあらゆる方向にボールが飛んで行きます。言われるように、本当に天才かもと思います。 中田はやはり安定して力を発揮していましたが、目の前の敵選手にパスしてしまったりという場面も多く見られました。 ゴールにからんでいくのは攻撃的MFとしてさすがです。中田をFWにというような報道もありましたが、実際に試して欲しかったかも。 三都主は合流が遅かったためかコンビネーションが合わない場面が目立ちました。しかし、突破力は随一なのでこれからの活躍に期待です。 稲本はあれほどドリブルが出来、ゴール前で強いなんて驚きですね。予選の前二戦では最も活躍した選手である事は間違いないでしょう。しかし、後二戦はボール持ちすぎ。 あとはミドルシュートをきっちり枠に入れて欲しいです。強国はどこでも強い守備的MFがいるので、稲本には世界と勝負できる選手になって欲しいですね。 柳沢と鈴木は、突破とシュート以外は良かったという感じですが、肝心なところがイマイチでしたね。Jリーグでの柳沢の活躍を国際試合でも見たいものです。西澤も同様。高原がいないのが悔やまれました。どの選手も、安貞桓(アン・ジョンファン)に負けないで動きができるはずです。 守備はミスで点を取られた意外はかなり良かったですね。それだけに失点シーンはかなり痛いですが。あとはDFの選手層をもっと厚くして欲しいところですね。選手が交代するとちょっと不安があります。 しかし、結果として負けましたが、日本代表は世界と戦う力を見せてはくれました。たまたまホームで開かれた大会でベスト16などではなく、コンスタントな本戦入りのできるチームへ成長していけるのではないでしょうか。 国際試合を重ね、日韓戦に勝利し、アジアカップを制覇してドイツ大会のアジア代表……という流れが見えてきます。 とにかくこれからですね。未来があればこのワールドカップの興奮は永遠に去らないでしょう。 (2002/06/18) |
| 6月19日から20日の読書と生活 #0719 |
| ■書感『頭文字D 24巻』 作者:しげの秀一 出版:講談社ヤングマガジンコミックス 定価:514円 初版:2002年6月6日 関連:頭文字D ヤングマガジンの二大車漫画『湾岸MIDNIGHT』と『頭文字D』なんと同時発売。まあ、同じ雑誌なのでそんなに不思議な事ではないですね。同じ日に両方の作品が出たので、比較するような読み方になってしまいます。 二回目の埼玉遠征を迎えたプロジェクトDを待ち受けたのは、エリアの連合チームだった。拓海のハチロクを研究した彼らの出した切り札は超軽量の軽スポーツカー、カプチーノ。これまでとまったく毛色の違う相手に拓海は苦戦する……。 パワーに勝る相手をコーナリングで追い込んでいくのが爽快だったこれまでの『頭文字D』ですが、今回はまったく立場が逆転。コーナーで離され、直線で追いつくという道のバトルに拓海はとまどいます。今回ばかりはさすがの高橋涼介も勝利の確信がありません。 しかし、これまでさんざん大パワーの車に勝利している拓海のテクニックを神業と描いてきたのに、逆の立場になったら苦戦するというのは少々疑問。まあ、軽量コンパクトの利点を知って完全に乗りこなせれば十分に強いという事でしょうか。 これまでバトルの勝敗をあまり重視しなかった拓海に対し、涼介は勝つということを徹底的にたたき込みます。その辺りもこれまでの展開を否定するように見えて気になりますね。 まあ、これからの展開でちゃんと納得させてくれるのかも知れませんが。速さという事に対する作者の考えにも迷いがあるのかも知れませんね。 スポーツとして走りを捉える『頭文字D』では、勝利する事にこだわるのもまた一つの美学と言えます。 (2002/06/19) ■書感『湾岸MIDNIGHT 23巻』 作者:楠みちはる 出版:講談社ヤングマガジンコミックス 定価:514円 初版:2002年6月6日 関連:湾岸MIDNIGHT 『頭文字D』とは対称的に、ただ自分の走りだけを追い求める『湾岸MIDNIGHT』 自分と通じ合える人間としか走らない彼らには勝敗はなく、ただ自分の納得があるだけです。 オーバーホールの終わったアキオのZ、かつての速さに加え、ロータリーを愛するプライベーター、林の手によってさらなる力を手に入れた城島のFC、そしてすべてを捨て、パイプフレームにカーボンボディという究極の軽量化に乗り切ったっブラックバード。誰がいちばん速いのか……? 『湾岸MIDNIGHT』を読んでいると意識せざるを得ないのは車の寿命。特に30年も前の車であるアキオのZは常に走れなくなるという危機感を抱えています。しかし、アキオはZを本来のZから変えたくないため、手を加える事をしません。 ブラックバードこと島はZだけを見て10年間走ってきた男。 車に愛着を持たず、あくまで走る道具として捉えてきた彼ですが、現在の愛車、ポルシェだけは違うようです。 このポルシェが死ぬとき、ブラックバードも消える……という言葉はその走りに終わりがある事を示しています。 一方、城島は一度走りを離れておきながら戻ってきた人間。 FDのマサキや、Rの平本など、戻り組はZと走って自分が納得いくまで走りきってしまったと悟った人物ばかり。しかし、この城島にはひと味違うものを感じます。 ドライビングに対する姿勢や機械への執着。『湾岸MIDNIGHT』のキャラクターたちはすべてを車にかけている人間ばかり。しかし、走りというのはそういったものを越えたところにあるというのが彼らの一致した見解です。 機械を愛し、そして機械に愛される者だけが限界の向こう側を見ることが出来る。そして主人公アキオこそがその条件を備え、Zに選ばれた人間なのです。 わかりそうでわからない。しかし、わかりたい。『湾岸MIDNIGHT』は常にそうした思いと共にあります。 (2002/06/20) |
| 6月21日から22日の読書と生活 #0720 |
| ■書感『風化水脈 新宿鮫VIII』 著者:大沢在昌 出版:光文社カッパノベルズ 定価:895円 関連:『新宿鮫』シリーズ 前作『灰夜』が九州を舞台にした番外編だったため、ずいぶん長く鮫島が新宿を離れていたような気になります。しかし、ようやく戻ってきました。 かつて中国マフィアのボスを射殺し鮫島に自首したヤクザ、真壁が出所し、新宿へと帰ってきた。一方、自動車窃盗団を追う鮫島は古くから新宿を知る老人、大江と出会う。一見関係のない複数の出来事が運命のように重なり合う……。 鮫島は犯罪者となれ合わない、取引もしない刑事。警察官はもっとも犯罪と近い場所にいる人間、一歩間違えばそちら側に引き込まれてしまうと危惧します。そんな鮫島を「根性がある」と認める真壁も、気が付けばヤクザの世界で一匹狼のような存在になっています。どこかに通じるところのある鮫島と真壁ですが、やはりヤクザはどこまで行ってもヤクザ。鮫島は出所した真壁が自分の追う事件の延長にいる事を予想します。 どこの世界にもひたむきにその仕事に生きる人間がいて、事件を通して鮫島と出会う事があります。大沢在昌はこれまでの『新宿鮫』の中で決して犯罪者やヤクザとヒーローとして描いていません。どれだけの人物でも、最後には悲惨な運命が待っています。増して、新宿に生きるヤクザであればなおさら。真壁と鮫島に精神的な類似点はあっても、互いを味方だと認識することはないのだろうと思ってしまいます。今回、この真壁が魅力的に描かれているだけに、読んでいてどうしてもあきらめのようなものがあります。 しかし、今回のラストはこれまでの作品の中でもっとも良かったかも知れません。事件のクライマックスから一気に収束する大沢在昌流のエンディングがこれほど心地よかったのは初めてでした。 第八作に来ても力を失わず、これまでの蓄積を得てさらに魅力ある作品になっているようです。 (2002/06/21) ■書感『グッドラック 戦闘妖精・雪風』 著者:神林長平 出版:ハヤカワ文庫SF 定価:860円 初版:2001年12月15日 関連:神林長平 SF小説家、神林長平の代表作『戦闘妖精・雪風』の続編がこの『グッドラック 戦闘妖精・雪風』です。実は『戦闘妖精・雪風』を読もうと思っていたのにミスで続編が先になってしまいました。 突如、異世界からの侵略を受けた地球は防衛軍を編成し、侵略者ジャムとの戦闘を開始した。そして30年。未だ正体のわからない敵に対向するため、特殊戦隊が結成される。彼らの任務は機械知性を搭載した最新鋭の戦術戦闘電子偵察機で出撃し、敵の情報を収集し、持ち帰ること。味方の危機をも無視して任務を遂行しなければならない特殊戦のメンバーに選ばれるのは他人に興味がない性格の者ばかり。その中でもっとも優秀なパイロットにしてもっとも非人間的であったのが主人公、深井零。 乗機、雪風にのみ執着を見せた彼は『戦闘妖精・雪風』のラストにて雪風を撃墜され、意識不明の重体となります。そこから始まるのが『グッドラック 戦闘妖精・雪風』です。 戦闘機や戦闘のディティールの細かさは近未来ミリタリー小説とも言うべき内容になっています。しかし、この小説がそれだけでは終わりません。 人かどうかもわからない侵略者ジャムとの戦争は、人類に様々な疑問を投げかけます。そして、その間に立つのが人間の戦争を支援する機械知性。深井零は雪風を通じて、言葉でのコミュニケーション手段を持たない機械知性が独自に思考し、行動しているのではないかと考えるようになります。 ジャムとの戦争に勝つのが機械知性の使命なら、人が足手まといとなったとき、機械知性は人間を排除するかも知れないのです。しかし、互いの能力を補強し、力を発揮する深井零と雪風はそれを否定する存在のようでもあります。 人とは何か、知性とは何か、コミニケーションとは何かという根本的な問い。苛烈な戦争に巻き込まれながらも深井零を初めとする登場人物達は答えを模索していきます。 以前『Uの世界』を読んだときはそれほど面白くもないと思った神林長平でしたが、この『戦闘妖精・雪風』は本格SFであると同時に、一級のエンターテインメント。迫真の描写と共に投げかけられる深いテーマは読めばとりこになる事、間違いありません。もちろん、先に『戦闘妖精・雪風』を読んだ方が良いでしょうね。こちらは20年の時を経て改訂版として出たばかりのようです。 (2002/06/22) |
| 6月23日から24日の読書と生活 #0721 |
| ■書感『バガボンド 14巻』 作者:井上雄彦 原作:吉川英治 定価:524円 初版:2002年6月21日 関連:バガボンド 宮本武蔵のライバルと言えば佐々木小次郎。 その佐々木小次郎は武蔵の幼なじみ、又八の行く末なのか……と思っていたのに又八はあいかわらずのダメっぷり。 しかし、ついに本物の佐々木小次郎が登場しました。 武蔵に破れた宍戸梅軒こと辻風黄平は、自分を変えたきっかけとなった男の事を語る。その名は、佐々木小次郎。戦乱の世に親を亡くし、中条流鐘巻自斎に育てられた小次郎はいかにして剣を学んだのか……。 初めて武蔵以外のキャラクターが表紙になったこの14巻はまさに小次郎の巻。武蔵を初めとするこれまでの登場人物たちは一切出てきません。 そして、井上雄彦の描く小次郎にはこれまでまったく書かれた事のない特徴があります。武蔵がただ本能のように強さを求めるのに対し、小次郎はおっとりとした様子で育っていきますが、後に物干し竿と言われるであろう長剣はその頃から彼に運命を投げかけます。 まだ武蔵と吉岡兄弟の対決すらありませんが、この小次郎が物語のラストに武蔵と対決すると思うだけでわくわく。 さすが井上雄彦、想像もしない小次郎像を見せてくれます。 (2002/06/23) ■書感『ロボットと帝国 上・下』 著者:アイザック・アシモフ 出版:ハヤカワ文庫SF 定価:660円 初版:1998年12月 関連:鋼鉄都市シリーズ 『鋼鉄都市』から続くシリーズの第四弾。地球のロボット史とファウンデーションの中間にあたる作品で、『ファウンデーションと地球』で語られた地球史の最後がようやく(読む順番の問題ですが)語られます。 イライジャ・ベイリの没後160年。地球人類は宇宙に進出し、銀河へと広がっていた。惑星オーロラのファルストフ博士が亡くなり、親地球派が力を失い、代わりに台頭したアマディロはベイリによって敗北した屈辱を忘れず、地球に対する復讐心を燃やす。一方、グレディアに仕える事になったダニールとジスカルドは彼女と共にソラリアへ向かう事に……。 『夜明けのロボット』で心を読むロボット、ジスカルドから人類の未来を示唆されたイライジャは見事にその役目を全うし、亡くなったようです。物語中、ベイリの子孫などは出てきますが、それはあくまで子孫であって本人ではなく、そっくりさんでさえありません。ベイリなしのシリーズに最初は違和感を憶えましたが、やはり彼を受け継いだ者は残っています。それがベイリのパートナーであったヒューマノイド型ロボット、R・ダニール・オリヴォーです。巻が進むにつれてより人間らしくなっていくダニールは、同じロボットであるジスカルドからさえも人間のようだと言われるようになります。 今回、主人公となるのはこのダニールとジスカルドの二人。 ロボット三原則に支配され、人間に仕えるのが使命である彼らですが、その法則の中で懸命に本当に人間のためになるのはどういう事かを模索します。 ファウンデーションへと続く壮大な歴史の瞬間がこの巻では訪れます。人は自分たちのためにロボットを作り、三原則によって支配し、働かせます。そしてロボットは三原則の下に人類の未来を考え、そして彼らを導く存在となるのです。 どこまでもつながっていくアシモフ世界の無限の広がりこそ、何にも変えられない作品の魅力であると言えます。 (2002/06/24) |
| 6月25日から26日の読書と生活 #0722 |
| ■書感『ダブルオー・バック』 著者:稲見一良 出版:新潮社 定価:427円 初版:1992年1月 関連書感:稲見一良 狩猟の道具としての銃にこだわる稲見一良のデビュー作であるこの『ダブルオー・バック』は、狩猟小説とでも言うべき連作短編集です。一挺のショットガンが数奇な運命によって次々と人手に渡っていきます。 物語の初めは『オープン・シーズン』 独特のスタイルでクレー射撃のトップ選手となった男と、それに惹かれた女を軸にした渋めの話。淡々と男の生き方を描写した作品で、あまり物語の起伏がないのですが、最後はなんとももの悲しくなっています。 父と子をテーマにした『斧』は突然山で生活を始めた父を子供が訪ねるというもので、生きるために狩るという点が前の作品とは大きく違います。たくましい父親を見て子供が自立という事を憶えていく典型的な成長物語です。 やはりデビュー作という事なのか、『セントメリーのリボン』のような物語の深さを持ち合わせていないと思いながら読んでいましたが、その次の『アーリータイムス・ドリーム』はちょっと軽い感じのノリが楽しいユーモアあふれる小説でした。主人公はさびれたバーをやっている青年なのですが、ふとしたことで自分が映画の主人公となってシーンを演じる様を妄想してしまうのです。 現実からナチュラルに妄想へ入り込んでしまうので、読んでいて突然かっこよくなる主人公に驚き、そして笑ってしまいます。まあ、結局映画的ではなくてもおいしい活躍をするのですが、それも周囲の人々がそんな彼を好いているからでしょう。 そして最後を飾る『銃執る者の掟』は山に生きる老人と、迷い込んできた男のハードボイルドなストーリー。共通するものを感じながらも敵対する二人の駆け引きがスリリングです。 一対一で知恵を絞って戦うという作者がもっとも好むシチュエーションだけに力も入っているようです。やはりこの辺りが後の小説の原点かも知れません。 永遠の不良老人を自称した稲見一良。かなり年輩になってデビューした作家ですが、その小説が読者を魅了するのは何十年とため続けた夢が詰まっているからなのでしょう (2002/06/25) ■ワールドカップ準決勝 ついにきました、ドイツ。 アメリカ大会、フランス大会と期待していたのですがどちらも不発。今回は体力不足と言われたベテラン中心だった以前とは大幅にメンバー構成が変わっていますが、スター選手不在なのでイタリア、ポルトガル、スペインなどに対するには辛いと思っていました。 しかし、サッカーはタレントだけで決まらないという事をドイツは証明しているようです。守備型と言われるチームは守ってカウンターというパターンが多いですが、ドイツは守りつつボールを奪ったらパスをまわしながら全員が少しずつ前進するというバランス型。とにかくシンプルで正確なプレイの繰り返しで、入らなくても同じパターンの攻撃を何十でも繰り返します。普通のチームなら途中でもっと有効と思われる攻撃に切り替えてくるかも知れません。しかし、ドイツの選手は伝統的に自分たちの攻撃を繰り返す事によって正確さを増し、いつかは得点できると知っています。 それでも、自分たちを信じ、自分たちのサッカーを最初から最後まで保ち続けるには強靱な精神力が必要となるでしょう。 ゲルマン魂というのはまさにこの事かも知れません。 圧倒的なテクニックを持ったチームを相手にドイツはかなり不利でしょうが、決勝は面白い試合になりそうです。 (2002/06/26) |
| 6月27日から28日の読書と生活 #0723 |
| ■書感『もっとも危険なゲーム』 著者:ギャビン・ライアル 出版:ハヤカワ文庫HM 定価:466円 初版:1976年6月30日 関連:稲見一良『ソー・ザップ!』 稲見一良の『ソー・ザップ!』のあとがきで紹介されていたのがこの『もっとも危険なゲーム』 互いに銃を持ち、森の中で相手を狩るというゲームが理屈を越えてもっともエキサイティングだと言います。 フィンランドで水陸両用機を操縦し、あらゆる仕事を引き受けるパイロット、ケアリ。クマ狩りのために単独で森へ入るという変わり者の大富豪を運んだ後、ケアリは様々なトラブルに巻き込まれる。そして、その一連の事件の最後に待っていたのは意外な対決だった……。 中盤まではケアリが自分の周囲で起こる事件を追い求めるミステリ、終盤は飛行機と銃撃戦のアクションという構成。文庫化が76年という事で話も訳もさすがに古い感じがしますが、なかなか読ませてくれました。 登場人物はなかなか癖のある人間ばかりで、大富豪、ケアリの同業者、街で悪事をたくらむ小悪党など、誰がケアリをトラブルに巻き込んでいるのか予想させません。さらにはケアリ自身が何物なのか、という疑問や彼の過去の問題などがからみ、すべてがラストに向けて見事に収束していきます。 そして何より、最後の対決がエキサイティング。稲見一良が決闘小説として名前を挙げるだけありました。 互いの知力、体力、精神力を尽くして戦うというシチュエーションには確かに惹かれるものがあります。 「銃を持った人間こそもっとも危険な獲物」 かっこいいですね。 (2002/06/27) ■自動車日記 第11回 かなり久々の自動車日記です。 もう最近は普通に乗っている日常なので、どこか遠出をしたりトラブルがあったりしないと話題にならないですね。で、今回はトラブルの方です。 先々週の終わりごろ、母が乗っていて坂道でふいに車がエンストしたとの事でした。前のカリーナEDはしょっちゅうエンストしていたらしいので、ベテランの母はすぐにエンジンをかけなおして発進したそうです。 まったく余談ですが、カリーナでエンストを起こしたときは初めてでパニックになったそうです。しかし、たまたま通りかかった日産のディーラーの方がいろいろ見てくれたという事で、トヨタから日産に変わったのはそのあたりの印象の良さが大きかったのかも。 古い車に乗り慣れていたので、エンストを特に異常と思わなかったようなのですが、僕は買ってから3ヶ月でエンストはおかしいと思ったのでディーラに連絡して話を聞いてみるように言っておきました。 なんだかんだで日産には連絡していなかったようなのですが、再びエンストを起こしたのでその日のうちに連絡し、ディーラーに車を持っていったもらいました。 調べてもらった結果なのですが、発進時にエンジンを回すための燃料が希薄になり、エンストしてしまうとの事でした。 うちのリバティはリーンバーンと言って、通常より燃料を希薄にしてエンジンを回し、燃費をよくする機能があります。 しかしそれはあくまで回転が安定してからの話で、回転数を上げていかなければならないときにそうなってしまうのは、おかしいわけです。 結局、エンジンを制御するための燃料調整データの問題ということで、どこかを交換したようですがどこを変えたのかは不明です。どこかのチップでしょうか。または単にデータだけ書き換えたのかも知れません。 結局、同じ部品を使って同じような調整をしてもエンジンは一台一台特性が違ってくるわけで、たまたまプログラムで対応しきれない部分が出たという事ですね。 車はいろいろトラブルが起きるものかも知れませんが、買ってから三ヶ月にトラブルが2つ。ちょっと多いです。 実際、乗っていても「こんなもの」だと思ってトラブルと認識していない事が多いのかも知れませんが、ちょっとでも異常を感じたら言ってみた方が良いですね。 (2002/06/28) |
| 6月29日から30日の読書と生活 #0724 |
| ■書感『霧越邸殺人事件』 著者:綾辻行人 出版:祥伝社ノンノベル 定価:1,238円 初版:平成14年6月30日 関連:綾辻行人 平成2年に新潮社から刊行された『霧越邸殺人事件』をノベルズとして再刊行したのがこの本。解説は恩田陸です。 猛吹雪にあい、遭難寸前で山奥の洋館「霧越邸」にたどり着いた劇団「暗色天幕」の一行。館内の各所で見つける自分たちの名の暗合にとまどいながら夜を過ごした彼らの一人が殺される。現場には北原白秋の詩集。奇妙に見立てられた死体。 館に潜むのは何物なのか……。 いい意味で綾辻らしい作品です。おなじみの館シリーズにこの霧越邸が入らないのは建築物そのものが事件に関わるわけではないのと、この作品がミステリであると同時にホラーであるからでしょう。 山奥の洋館、一行を歓迎しない館の住人。一行は殺人事件と洋館という二つの謎を抱える事になります。 主人公達が劇団員だからか、論理的に推理を押し進めていくと同時に、館の謎について様々な哲学的思索を巡らせます。 未来をあきらめたような人々だけが住む霧越邸は、一見すると殺人という生々しい事件には無縁な場所。吹雪に閉ざされた山奥の山荘という絵に描いたようなミステリの舞台を、綾辻は幻想的に色づけしています。 著者本人が「本格ミステリへの想いをすべて封じ込めた」というこの作品。さすがに一作です。こうなると館シリーズの次作が楽しみになりますね。 (2002/06/29) ■ワールドカップ決勝 ワールドカップもついに終了。 応援していたドイツは残念ながら負けてしまいましたが、順当にいちばん強いチームが優勝したという感じでしょうか。 ドイツは意外と攻勢に出ていましたが決定打に欠け、ブラジルはいつも通りロナウドとリバウドで決めてきましたね。 それにしてもカーンの活躍は素晴らしかったです。キーパーがカーンでなかったらもっと早くに負けていたかも知れません。ドイツは今回、故障者も多くベストメンバーではなかったようですが、2006年の地元開催に向けてメンバーの入れ替えなどが出来たのではないでしょうか。 今回、強豪と言われるチームが早くに負けてしまったのは残念。もっと彼らの試合を見たかったです。バティストゥータ、ジダン、フィーゴ、ベッカムなどですね。逆に勝ち上がってきたトルコなどは当初、ほとんど選手を知らなかったのにだいぶ詳しくなりました。イルハンあたりはこれからも活躍していきそうな気がします。 本当にナンバー1を決めるのならば、トーナメントではなくリーグで行うべきなんでしょうけどね。しかし、トーナメントで負けたチームが消える方式だからこそ全力のぶつかりあいが見られるのかも知れません。 しかし、ほんとうにすごい1ヶ月でした。いったい何時間サッカーを見ていた事か。こんなにサッカー漬けの毎日はもう一生ないと思います。 (2002/06/30) |
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