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8月1日から3日の読書と生活 #0738

■書感『劫尽童女』
 著者:恩田陸
 出版:光文社
 定価:1500円
 初版:2002年4月20日
 関連:恩田陸

 久々の恩田陸。これこそがファンタジーと言うような小説を書く恩田陸ですが、今回はちょっとSFよりかも知れません。珍しいものを読んだという気分です。

 世界的に広がる謎の組織「ZOO」に所属していた天才科学者、伊勢崎博士が子供と友に失踪した。行方を追っていた工作員たちは10年後、博士の元へたどり着く。そこで出会ったのは恐るべき能力を持った少女だった……。

「劫尽火」とはこの世の終わりに世界を焼き尽くす炎のこと。
 仏教用語っぽいですが、そもそも恩田陸の小説ではこの世界からの脱出や、人間として一つ上の存在への解脱などの要素が多いですね。
 そういったファンタジックなテーマからは少し離れ、今回は科学によって驚異的な頭脳と感覚を持って生まれた女の子が主人公。静かに、冷静に人を殺すことのできる彼女は、そこに何の感慨も感じない。むしろ、その能力を発揮する事に喜びさえ憶えます。しかし、一方ではそれが世間の人間とは異なる感覚である事に怯え、自分の存在に疑問を持つのです。
 ここまでは既存の作品にもよくある話ですが、恩田陸はその解決にやはり恩田陸らしいラストで以て応えます。
 正直、一般的な恩田陸作品が好きな人には物足りないものがあるかも知れませんが、これは新たな恩田陸作品への架け橋として読む価値があるのではないかと思います。
(2002/08/01)

■書感『奥様はネットワーカ』
 著 者 :森博嗣
 イラスト:コジマケン
 出 版 :メディアファクトリー
 定 価 :1600円
 関 連 :森博嗣

 本の雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載されていた『奥様はネットワーカ』ようやく単行本化しました。
 たいていの作品はそう遠くないうちに文庫化するので、わざわざハードカバーで買うこともないと思うのですが、森博嗣作品は装幀やデザインの良いものが多いので、買って損はありません。この『奥様はネットワーカ』の場合、随所にコジマケンのイラストが入り、この作品独特の雰囲気に色をつけています。

 某国立大学の化学工学科秘書として勤務する内野智佳(ハンドルネームはスージィ)の周囲で発生する傷害事件と殺人事件。上司の家田やその助手の堀江、友人の鈴木奈留子、そしてスージィの愛する旦那様、三枝など6人の視点から見た事件の結末は……?

 久々にシリーズものではないミステリ作品。6人の視点によるザッピング手法により、お互いをお互いの視点で眺める事ができるわけですが、実は以外と彼らの間に接点はなく、けっこう遠い他人同士だったりします。
 ネットワーカというタイトルからはインターネットを連想しますが、そういう要素はほとんどありません。ネットワーカとはネットワークを駆使する人の事ですが、どんなそのネットワークがインターネットとは限らない、というわけですね。
 コミカルな雰囲気で始まってはいますが、段々と最古サスペンスの様相を呈し、緊張感のあるラストへと突入していきます。森作品独特の詩的な考察が多く、初めて森博嗣を読む人には少々しつこいかも知れませんが、ファンならもちろん楽しめる一作です。
(2002/08/03)


8月6日の読書と生活 #0739

■書感『新・ひでおと素子の愛の交換日記』
 著者:新井素子
 挿絵:吾妻ひでお
 出版:角川書店
 初版:1986年7月
 関連:新井素子

 新井素子は一時期、かなり読んだものですが、今回はけっこう久しぶり。中高時代に読んだ作品が多いので、世網書庫のデータベースにもあまり書感がありません。
 新井素子はSF作家で、この人の『グリーンレクイエム』はSFとしても恋愛小説としても本当にすばらしい作品でした。
 他にも半エッセイのような『結婚物語』や『新婚物語』などでもかなり笑わせてくれてます。
 そんな新井素子が漫画家、吾妻ひでおと組んで書いたエッセイがこの本。吾妻ひでおと言えばちょっとシュールな漫画を書く人ですね。
 新井素子のエッセイに、吾妻ひでおが一コマ漫画のようなイラストをつけているわけですが、新井素子の天然ボケさ加減がこの絵にぴったり。
 内容はと言えばまあ、他愛のないものですが、15年以上も前のものだけになんとなくノスタルジィが漂っています。
 まあ、これはこれで面白かったのですが、読んでいるうちにやはり新井素子の小説が読みたくなってきました。
 近々、『チグリスとユーフラテス』でも読もうかなと思っています。


8月7日から9日の読書と生活 #0738

■書感『黒猫の三角』
 原作:森博嗣
 作画:皇なつき
 出版:角川書店
 定価:680円
 初版:2002年8月1日
 関連:森博嗣

 好きな漫画家が好きな小説家の作品をコミック化するなんて、もともと挿し絵などで組んでいる場合を除き、ほとんど奇跡のような現象ではないでしょうか。
 この皇なつきと森博嗣というタッグはまさにそれ。
 書感ではこれまで紹介していませんが、皇なつきは主に中国の歴史をテーマにした漫画を描く人で、非常に繊細でありながら大陸の雄大さを感じさせるタッチが僕は好きです。

 ぞろ目の日にぞろめの年齢の女性が殺される。アパート阿漕荘に住む小鳥遊練無、香具山紫子、保呂草潤平と彼らの友人、瀬在丸紅子は奇妙な連続殺人事件に巻き込まれる……。

 登場人物の視覚的な情報が少ない森作品ですが、読んでいるときはけっこう明確なイメージが頭の中に浮かんでいます。コミック化された作品はまずキャラクターデザインから見ていくわけですが、当然ながら自分のイメージとはずれがあります。
 しかし、皇デザインのキャラクターたちはどれを見ても納得するような人々ばかり。中には自分と解釈が大きく違ってしまっているキャラもいるのですが、それはそれで「皇なつきには森作品がこう見えているのか」という感動があります。
 特に爽やかな感じの保呂草さんと、ちょっと崩れた感のある林刑事が印象的でした。
 内容自体は割と優等生的で、原作に忠実なのですが、心証表現などの表現がうまいというのは新しい発見。
 浅田寅ヲの『すべてがFになる』は衝撃的であったのに対し、皇なつきの『黒猫の三角』は作品世界をゆったり楽しませてくれるというコミックでした。
 どちらのシリーズも原作はすべて読んでいますが、コミック化作品として持っていたい出来。いいですね、これからも楽しみです。
(2002/08/07)

■書感『魔法株式会社』
 著者:ロバート・A・ハインライン
 訳者:冬川亘
 出版:ハヤカワ文庫SF
 初版:昭和57年12月31日
 関連:ロバート・A・ハインライン

 ハインラインと言えば、クラークやアシモフと並ぶ著名なSF作家。ストーリーテリングで言うならこの人がナンバーワンだと僕は思っています。さて、この作品はタイトルから想像できるようにSFではなく、ファンタジー作品。中編2本が収録されています。
『ウォルドウ』は生まれつき筋無力症で不自由な体を持つ男、ウォルドウの話。

 ほとんど力のない手足を、自らの発明で補ってそれを世界中に売り、巨万の富を得たウォルドウは他人を見下し、弱みにつけこむ実に嫌な性格の人間。しかし、そんなWウォルドウの元に、エネルギー危機を救って欲しいという依頼人が現れ……。

 というストーリーで、けっこうSFっぽいですが、最終的にはちょっと変わった結末が待っています。実は表題作よりこっちの方が面白かったです。ハインラインの場合、実に心の温まるラストを用意してくれるのが何よりのサービスかも知れません。久々でしたが、ハインラインのすばらしさを噛みしめてしまいます。
 表題作『魔法株式会社』は魔法が一般に認知され、使われている世界が舞台。ちょっとハリー・ポッターを思い出します。
 社会的に魔法が使われていたならこうなる……という想像力あふれる作品です。そうした世界にもさまざまな権力闘争、企業闘争があり、詐欺もあり……といった展開になっていきます。ストーリーテリングのハインラインですが、これは筋よりも世界の描写に労力を割いたという感じ。もちろん、暖かなテイストのハインラインらしい作品でした。
 最近はアシモフばかりでしたが、やはりハインラインもいいと再確認。クラーク作品なども読みたくなってきます。
(2002/08/09)


8月13日から14日の読書と生活 #0741

 前回の晴読雨読からだいぶ日が空いてしまいました。
 代休を使ってお盆休みが九連休となったため、2回旅行に行ってきたので、今回はその話題。
 まず、13、14日は鎌倉旅行。
 目的は毎年第二火曜日に由比ヶ浜で行われる鎌倉花火大会が目当てです。日帰りで行ける距離なのですが、帰りはかなり混雑してたいへんらしいので、藤沢に宿を取ってついでに鎌倉観光をしてきました。
 7月の仕事帰りに横浜の花火大会に当たってしまって桜木町駅で入場制限がかかってたいへんだったという事もあったので、早めに行ってゆっくり帰ろうという計画……でしたが、なんだかんだでちょっと遅くなってしまい、由比ヶ浜へ行くための江ノ電は大混雑。7時開始だったのですが、江ノ電に乗れたのは開始直前。さらに運行が遅くて、会場へ着いたのは終了予定の8時直前でした。周囲からはもうほとんど見られないだろうという会話も聞こえていましたが、行ってみたら意外と終了まで長く、クライマックスは楽しむ事ができました。
 由比ヶ浜の花火は海上から打ち上げているようで、低いため遠くからではあまり見えません。その代わり、海上まで行けば間近という感じの大きな花火が見られます。
 海上から尾を引いて四方へ広がる水中花火が特に見事でした。帰りは開いている屋台でたこやきなどを食べながらのんびりと宿に戻りました。
 2日目、14日は江ノ電の乗り放題切符を買って鎌倉周辺見物。まず鎌倉駅まで行って鶴岡八幡宮を見物。観光客はかなりの数でした。八幡宮はまあ、普通の神社という感じ。戻る途中にそばを食べ、次は鎌倉大仏を見に江ノ電の長谷へ。
 江ノ電は小さい頃一度乗った事があるのですが、久々に乗ってみたらいろいろびっくり。本当に鎌倉のまっただ中を走っているので、電車は民家の軒先すれすれを通過していきます。
 中には家やお店の出入り口が線路に面しているところもあるし、車と併走する事もしばしば。実は鎌倉観光でいちばんインパクトが大きかったのは江ノ電かも。
 鎌倉の大仏は高徳院というところにあります。奈良の大仏と違って民間からの寄付で作ったものだそうです。まあ、そのせいかだいぶ小さいですね。高徳院はほんとに大仏しかないというところなのですが、のんびりした雰囲気で散策には良いところでした。
 その次は近くの長谷寺。かなりの規模のお寺で、日本最大と言われる木造観音像があります。目の前で見たらかなりの迫力でした。大仏より印象に残っています。
 その後、鎌倉と言えばやはり甘味処……と思ったので雑誌で調べた和田塚の無心庵というお店へ行きました。「和田塚からすぐ」とあったので、徒歩一分以内だろうと見当をつけていたのに、地図にある場所へ到達するための道が見つからず、歩き回るはめになりました。
 一周して戻ってみるとなんてことはない、和田塚から下りて線路を歩けば目の前……というオチ。道路の方からは細い道をどこまでも奥に進んでいくというすごいロケーションです。
 苦労しただけあって、食べたクリームあんみつは最高でした。お店も民家の軒先という感じで、いい雰囲気です。
 そんな感じで2日間を過ごした鎌倉。前々から行こうと思っていたのにきっかけがなく、しばらくぶりでしたが、街そのもの雰囲気が何よりいいところでした。
 15、16は別な旅行をしてきましたが、それはまた次回。


8月15日から17日の読書と生活 #0742

■自動車日記第12回
 関連:無計画ドライブ

 15日から17日まで初の長距離ドライブに行ってきました。
 そもそも僕が免許を取るきっかけとなったのが、昨年の5月に大学時代の友人と行ったドライブ。今年は免許も取ったし、自分でと思ったので計画しました。メンバーは昨年から一人増えましたが、日頃から乗っているのは去年のドライバーと僕の2人だけです。
 栃木に職場のある友人は定期的に車で東京荻窪の別な友人宅に出てきているので、その帰りに待ち合わせ、そのまま会津若松へ行こうというのが当初の計画。最初は友人がシビックで荻窪から外環を使い、東北自動車へ出て蓮田インターで僕のリバティと待ち合わせ……という予定でしたが、8時に荻窪を出発したものの、環状八号線が混雑したため下道で川口市まで来る事に。近くのスーパーの駐車場で待ち合わせし、僕が慣れている道を使って浦和インターから東北自動車道に入ろうという事になりました。
 シビックのドライバーである友人は途中、宇都宮のアパートに寄って車を置き、4人でリバティに乗ろうという事だったので目的地を宇都宮にセットして出発。さあ、高速……と思ったら、乗ったのは川口インターでした。途中経由で浦和を指定しなかったのでいちばん近い川口で乗ってしまったんですね。
 川口は首都高なので、川口浦和というわずかな距離で500円取られてしまいました。大失敗。
 まあ、それにもめげず、なんとかドライブして蓮田のサービスエリアまで行きました。やはり軽いシビックの方がずっと加速が良く、置いていかれる事もしばしばでしたが、リバティのシフトををスポーツモードに入れるとびっくりするほどの加速が得られてなかなか良かったです。思っていたよりだいぶ最高速度も出るようでした。
 宇都宮の友人宅で一休みして4人ともリバティに乗り、今度は地元で慣れている友人が運転。自動車会社に勤める友人はいろいろ細かいところをチェックしていたようですが、概ね良好でさすが日産車という事でした。
 そのまま車は東北自動車道の白川インターへ。その辺りで再び運転を交代し、今度は僕が山道を運転しました。川口周辺は完全に市街地ですが、実は旅行の際に軽自動車であちこちワインディングしていたので割と慣れてます。リバティは思った威よりもよく走ったので満足でしたが、本格的な山道に入ったところで天候は土砂降りに。
 真っ暗で何も見えない山道を走るのはかなりスリリングでした。実を言うと面白かったですけどね。
 途中、観光しようかとも言っていましたが、なにしろ雨がひどいのでやめて直接目的のペンションへ行き、その日は一日ぼーっと過ごしました。4人ともトランプも何も持っていなくて、することがないのがかえって新鮮だったかも。
 次の日は会津若松市へ出て観光。午前中に会津若松に帰省している友人と待ち合わせし、5人で会津若松城と武家屋敷を見物して釜飯を食べ、友人の実家である碁会所を冷やかして2時過ぎくらいに会津を出ました。
 しかし、その後がたいへん。郡山インターから入ったのですが、昨年の5月と同じく帰省ラッシュに引っかかり、宇都宮近くまでは大渋滞。白川インターで下り、下道を行ったら今度は国道4号が渋滞し、あまりにひどいのでカーナビで迂回路を調べてなんとか宇都宮までたどりつきました。距離は倍になりましたが、おそらく早かったはず。
 僕はそのまま宇都宮の友人宅に泊まる事にしましたが、他二人は新幹線で帰宅。次の日の朝7時頃に宇都宮を出たのですが、一人のドライブはつまらないのでせっかくだからと下道で川口まで帰りました。途中、かなり流れがよくてなんと2時間半で到着。こうして免許を取って初の高速道路と長距離ドライブは終了しました。
 帰りの混雑を甘く見ていたのが敗因と言えば敗因ですが、ドライブは楽しめたのでまあ良し。
 来年は日本海に挑戦予定です。


8月19日から21日の読書と生活 #0743

■書感『ヒカルの碁 18巻 番外編』
 原作:ほったゆみ
 作画:小畑健
 出版:集英社ジャンプコミックス
 定価:390円
 初版:2002年8月7日
 関連:『ヒカルの碁』

 サブタイトルの通り、今回は番外編。主人公ヒカル以外のメインキャラ、塔矢アキラや佐為にスポットが当たるのは当然ですが、嬉しい事に本編でも気になっていた倉田さんや、ヒカルの囲碁部時代の仲間、院生時代の仲間などが主人公として登場します。
 そういえば16巻も院生仲間の伊角が中国棋院へ留学する話で、そちらも番外編のようなものでした。あくまでヒカルを中心とした物語の展開をしている原作者のほったゆみですが、こうしてサブキャラのエピソードを書かせてみるとその一つ一つが光っています。それだけほったゆみの頭の中には生き生きとした世界が広がっているという証拠なのではないでしょうか。
 ヒカルの碁はヒカルという主人公が選ばれ、その視点で囲碁の世界を眺める物語ですが、登場人物一人一人には自分の物語があるということを実感できます。
 僕がもっとも注目しているのは倉田さん。絶好調の緒方さんを負かせた若手として名前だけは序盤から出ていましたが、まさかあんなキャラだとは……。しかし、番外編では底知れない凄みというか、他の棋士にない強さを感じられて良かったです。ヒカルの碁もこれから新展開に入っていくのでしょうが、ほったゆみの原作ならますます面白くなっていくのではと期待できます。

■書感『蒼天の拳 4巻』
 作者:原哲夫
 出版:新潮社バンチコミックス
 定価:505円
 初版:2002年8月15日
 関連:『蒼天の拳』

 潘光琳を救出し、青幇の復活を果たした拳志郎。次は、同じ北斗の流れを組む宿敵、霊王こと芒狂雲との対決に臨む……。

 諸国の思惑の間で揺れる1935年ごろの上海を舞台にしたこの『蒼天の拳』は、『北斗の拳』とまったく違った魅力を持つ作品。『北斗の拳』が主人公ケンシロウの圧倒的な強さと、その裏にある人間愛の物語なら、『蒼天の拳』は義に厚く、破天荒な拳志郎とその周囲に集まる熱い男達の人間模様を描いた作品です。
 拳志郎が朋友と認める人間は皆、どこかに筋の通った義侠心溢れる人物ばかり。その中でも救出された潘光琳は一声十万人と言われる巨大組織のボスにふさわしく、拳志郎にも似たカリスマを持っています。
 拳志郎と芒狂雲の鍛え上げられた肉体の激突と同時に、青幇と紅華会の戦争も始まります。
 しかし、原哲夫の描く悪役は昔通り、ひどい顔にねじ曲がった精神、えげつない悪さと三拍子揃った人間ばかりで、ほとんどギャグの領域にまでさしかかっています。しかし、そんな奴らだからこそ潘光琳の容赦ないやり方が爽快に思えるわけですね。一つの様式美とまで言えそうです。
 さて、今回拳志郎が対決した芒狂雲は三国志の時代に別れたという北斗神拳の分派、北斗孫家拳の使い手でした。やがては劉家拳、曹家拳と出てくるのでしょうね。
 対決シーンの少ない『蒼天の拳』だけに、拳志郎が拳を奮うシーンにはかつてないほどの迫力がこもっています。
 拳法家だけでなく、襲い来る時代の波と拳志郎がどう戦っていくのかも見物です。


8月22日から23日の読書と生活 #0744

■書感『クィディッチ今昔』
 著者:J・Kローリング
 定価:900円
 出版:静山社
 初版:2001年9月1日
 関連:『ハリー・ポッターと賢者の石』

『ハリー・ポッターと賢者の石』の中で、ハリーとハーマイオニーが読んでいたのがこの『クィディッチ今昔』です。
 クィディッチというのは、ハリー・ポッターの世界で魔法使いたちがほうきに乗って空を飛びながら得点を取り合うスポーツの事。マグル(人間)の世界でサッカーが熱狂的な人気を誇るように、魔法世界ではクィディチが圧倒的な人気を誇っています。
 この本はまず、クィディッチの歴史から始まり、ルールやテクニックの解説、反則やチームの紹介へと続きます。本当に存在するかのようなリアルさとはまったく無縁ですが、相変わらずのユーモアあふれる語りで楽しませてくれます。
 本編でハリーが背負っている宿命は重く、行く手には激しい戦いが待ち受けていそうな予感がします。しかし、それでも物語が明るい雰囲気を失わないのは、ローリングの想像したこの魔法世界が根本的に持っている陽気で明るい雰囲気があるからでしょう。

■書感『愛に時間を 1』
 著者:ロバート・A・ハインライン
 出版:ハヤカワ文庫SF
 定価:520円
 初版:1984年9月30日
 関連:ハインライン

 ハインラインの長編シリーズ作品です。

 はるか未来、20世紀から4000年も生き続けたラザルス・ロングは死の他すべてを体験してしまった。強大な権力を持っているはずの彼は、銀河に広がる多くの子孫の目を欺いて自由な死を選ぼうとするが、ついには発見され、軟禁生活を送る事になる。ラザルスは遠い子孫たちに、4000年の人生でも体験したことのないことを探せと命じ、自分の長い人生を語り始める……。

 老齢に達したら若返りの処置を受け、再び人生を続ける事ができるという未来。不慮の事故や病気による急死の他、人はしにおびえる事のない生活をしています。しかし、永遠とも言える寿命を持ちながら、多くを生きた人は自分の意志による死を選んでしまうのです。そんな中でただ一人、4000年もの時を生きているラザルスは多くの人間の興味を惹く存在。
 次々と職業や名前を変え、あらゆるピンチを生き残ってきたラザルスは生き残るための強い意志と長年培ってきた知恵や経験を持っています。彼の話は一つ一つが教訓の宝庫であり、子孫達は熱心に耳を傾けるのです。
 いわば、これは未来の千夜一夜物語。
 その一つ一つが人の一生分ほど長く、波瀾万丈の驚きに満ちています。多くの勘違いやホラを含んだラザルスの話は、人類の未来史を含んで続いていきます。


8月24日から25日の読書と生活 #0745

■書感『ドミノ』
 著者:恩田陸
 出版:角川書店
 定価:1400円
 初版:2001年7月25日
 関連:恩田陸

 つい最近読んだ恩田陸の『劫尽童女』は珍しいSF作品でしたが、あまり恩田陸の良さが出ていないというのが正直な感想でした。やはり恩田陸ならファンタジー……と思ったのですが、この『ドミノ』はいい意味で恩田陸らしい作品となっています。
 タイトルの『ドミノ』はまさにドミノ倒しの意味。
 冒頭のイラストつき人物紹介はなんと28人も人間が登場しています。この小説、決まった主人公は存在せず、すべての人間の行動が少しずつお互いに影響を与えて進展していくというもの。その目まぐるしい展開はジェットコースターという表現がふさわしいかも知れません。
 舞台は東京駅。ある人はインターネット句会のオフ会で、ある人は別れ話で、ある人はお菓子を買いに……とさまざまな理由で東京駅の敷地に入った登場人物たち。一日に万単位の人日とが通り過ぎる駅だけに、そこには様々な人間模様が存在します。そんな彼らをユーモアたっぷりにドタバタを交えて描いた恩田陸ですが、そのあたりはなかなか新鮮でした。人間が多いだけに次々いろんな人物が顔を出し、半分くらい読み進めてみてもなんとなく序盤という雰囲気でしたが、後半はそれが一気に加速して結末へと向かっていきます。
 こういうザッピング系の小説って別段新しいものではないかも知れません。しかしそれを恩田陸が書くとこうなる、という感じ。インパクトの強い事件や登場人物たつは当分印象に残っていそうです。

■映画『キス・オブ・ザ・ドラゴン』
 監督:クリス・ナオン
 脚本:リュック・ベッソン
 主演:ジェット・リー
    ブリジット・フォンダ
 関連:『ロミオ・マスト・ダイ』

 アクションが好きなら是非おすすめと言われ、DVDを借りてみました。『ロミオ・マスト・ダイ』はジェット・リーのアクションにCG特撮を加えた大胆な格闘シーンが売りでしたが、こちらは正真正銘の拳法アクション。

 麻薬取引の現場を押さえるため、中国警察から派遣された主人公リュウ(ジェット・リー)はフランス警察のリチャード警部(チェッキー・カリョ)の罠にかかり、殺人の汚名を着せられ、追われる事になる。リチャード警部に娘を人質に取られた娼婦ジェシカ(ブリジット・フォンダ)と出会ったリュウは、ジェシカの娘を取り戻すと約束し、単身、巨悪と戦う事に……。

 リュック・ベッソンとジェット・リーという組み合わせはまた面白いですね。監督ではないですが、やはり作品にはリュック・ベッソンの雰囲気が漂っており、汚職警官やギャングがホテルや街角で平気で銃を撃つすごい世界としてパリが書かれています。リュウを追うのもリチャード警部の息がかかった何人とかではなく、警察署が全力を挙げて追いかけ回すといった様子。しかし、ジェット・リーのアクションの前にそんなリアリティは吹き飛んでしまいます。
 表情豊かなジャッキーと対称的に戦いに臨んではまったく無表情なジェット・リー。小柄な身体から達人の迫力がにじみ出てきます。ラストでようやくタイトルの『キス・オブ・ザ・ドラゴン』という意味がわかりますが、その場面のためにそれまでのアクションの積み重ねがあったと言えるほど、印象的な場面でした。
 アクション映画好きならやっぱり見て欲しい一作。
 特撮を駆使した『スパイダーマン』などももちろん素晴らしいですが、生の肉体のぶつかりあいというのはやはり他に変えられないものです。



8月26日から29日の読書と生活 #0746

■書感『奇想、天を動かす』
 著者:島田荘司
 出版:光文社文庫
 定価:667円
 初版:1993年3月
 関連:島田荘司

 これまで御手洗潔シリーズを中心に読んできた島田荘司シリーズでしたが、これはまた別のシリーズ。警視庁捜査一課の刑事、吉敷竹史が主人公です。

 ホームレスの老人が消費税を払えと言われ、追ってきた女店主を刺殺。事件は単純な衝動殺人と断定される。だが、吉敷はその事件に何か引っかかりを感じた。捜査を進めるうちに、老人は北海道で起きた世にも奇怪な事件へとつながっていく……。

 久々の島田荘司長編です。
 そして、島田荘司のすごさを再確認してしまいました。
 まず、何よりも挙げられるのは事件の奇怪さ。あまりにあり得ない、怪談としか思えない数々の目撃証言。
 変人で、誰よりも気むずかしい御手洗のような探偵こそこういった事件に似合うと思ってしまいますが、常識人である吉敷刑事は信じられないと思いながらもわずかな可能性を追って、地道に捜査を進めていきます。笑いもあり、冒険もありという御手洗ものとちがい、吉敷シリーズは事件はあまりそういう色が強くなく、主人公の吉敷も真面目そのもの。今回の物語は特に、島田荘司が前から声高に主張している冤罪事件が起こる背景を克明に描いています。
 事件の捜査が進むに連れて明らかになる老人の人生。この老人こそ、物語のもう一人の主人公と言えます。
 島田荘司はエンターテインメントこそ面白いと思っていましたが、御手洗シリーズにも潜む社会派色がこちらでは全開。どちらも悪くないですね。吉敷シリーズも読んでみなければ。

■テレビ『怪人二十面相対明智小五郎』
 主演:田村正和、ビートたけし
 放映:2002年8月28日 TBS系列
 原作:江戸川乱歩

 前々から電車の中などでポスターを見るたびに気になっていたこのドラマ。小学校の頃、図書室で読みふけった二十面相がドラマになるというのだから、もちろん見逃せません。
 明智小五郎に田村正和、二十面相はビートたけし、脇を固めるのも西田俊之や伊藤四郎、そしてヒロインに宮沢りえとかなり豪華な顔ぶれです。
 終戦直後の日本。世間は大胆な手口で様々な犯罪を引き起こす怪人二十面相の話題で持ちきりだった。その二十面相に対抗できる人間はただ一人、名探偵明智小五郎のみ。何度も対決を繰り返してきた二人だが、ついに二十面相は明智小五郎の抹殺を目論む……。
 何故か子供に関わる事件の多い二十面相。しかし、原作では子供にとって恐ろしい存在であると同時に、どこか憎みきれない存在でもあります。二十面相は手の込んだトリックで子供を脅かしたり、明智小五郎と対決するのを楽しんでいるようなところがあり、それが読者としても安心だったりするのです。
 しかし、このドラマではちょっと様子が違いました。ビートたけし演じる二十面相は本当に明智を憎んでおり、殺意すら抱いています。そして、子供であっても容赦ありません。
 原作の二十面相はどこかの金持ちが莫大な費用をかけて趣味で犯罪をしているという雰囲気でしたが、こちらはなんと戦争中に旧満州で人間の顔を他人そっくりに作り変える実験により、自分の顔を奪われてしまったという設定。
 終わってしまったドラマだからこそ、結末まで言ってしまいますが(ビデオなどに録ってまだ見ていない方はご注意!)二十面相の顔はその研究者としてのライバルであった明智小五郎そっくりになってしまっているのです。
 自分の顔を失い、明智の顔になってしまった二十面相はその顔を隠すために様々な変装をし、あげくの果てには明智を抹殺して自分が明智になろうとたくらんだ……という顛末。
 ラストで、正体を見せた二十面相(田村正和)がビートたけしの表情やしぐさで明智小五郎(こちらも田村正和)に語りかける場面は圧巻でした。
 ドラマとして素晴らしかったとはあまり言えません。しかし、見え見えの罠に引っかかる明智をやきもきしながら見ていると、明智はわかっていてあえて挑んでいる……のようないかにもという展開や、ビートたけしの怪人ぶりのはまり具合が楽しかったです。
 そして、意外にもきちんと終戦後の時代の日本を洋館や車などを使ってきちんと表現していて好感が持てました。
 お祭り的な作品ですが、またこういうのをやって欲しいです。



8月30日の読書と生活 #0747

■書感『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
 著者:J・K・ローリング
 訳者:松岡佑子
 出版:静山社
 定価:1900円
 初版:2000年9月19日
 関連:ハリー・ポッターシリーズ

『ハリー・ポッターと賢者の石』に続くシリーズの第二弾。ホグワーツでの1年目を終えたハリーの、次の一年を描いた作品です。
 夏休みで、プリペッド通りのダーズリー一家のところへ戻ったハリーはロンやハーマイオニーと連絡も取れず、退屈な日々を送っていた。そんなハリーのところに屋敷しもべ妖精の土ビーが現れ、ハリーの命が危ないから学校へは戻るなと忠告。

 夏休みが明けてホグワーツへ戻ったハリーは謎の声に脅迫され、その周囲では生徒たちが石にされるという事件が勃発。
 ハリーの身に、再び危機が迫る……。

 赤ん坊の頃、闇の魔術に染まった大魔術師ヴォルデモートから生き残ったハリーは魔法会でも特別な存在。しかし、ホグワーツに入ったハリーは特に優等生というわけでもなく、箒で飛ぶのが得意な普通の子供に過ぎません。
 ハリーがいったい、どう特別な存在なのか。それがこの物語のいちばん大きな謎なわけですが、二巻であるこの『秘密の部屋』ではその一端が解き明かされます。
 この物語が面白いのは、何もかもきちんとした筋立てによって物語が進行していくこと。ハリーが特別であったり命を狙われたりするのにはきちんとした理由があるのです。
 最初の一冊であった『ハリー・ポッターと賢者の石』でも、ハリーの大きな謎以外はきちんと劇中で完結しているのですが、『秘密の部屋』を読んでいくと、『賢者の石』で起こった様々な出来事にもきちんとした理由がつくのです。巻が進むほど面白くなる、という評判は確かのようで、次の巻の事を考えるとまたこれまでの二冊を読み返したくなってきます。
 また、あいかわらずハーマイオニーから「規則を五十も破る」と言われるロンとハリーですが、前作より勇気も知恵も少しずつ成長し、頼もしくなっていて何より。
 10月に出る四巻『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』に向けて9月には『ハリー・ポッターとアズバカンの囚人』を読んでおく予定です。



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