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11月26日の読書と生活 #0777
■書感『数学的思考』
 著者:森毅
 出版:講談社
 定価:800円
 初犯:1991年7月
 関連:森毅

 数学者である森毅ですが、この人は大の読書家で、著書には文系的なものがおおいですね。これまで紹介したものにも『ゆきあたりばったり文学談義』や『電脳は自由をめざす』などがあります。
 そんな森田毅が数学について書いたのがこの本。
 実を言うとデービスとヘルシュの『数学的経験』を読もうと思っていたのですが、図書館になく、なおかつ4800円とかなり効果なのであとまわし。代わりに似たジャンルの本をと思ってこちらを見つけました。
「数学的」ということについていろんな人の考えを読んでみたかったわけですが、そういう意味では『数学的思考』はちょっとはずれていました。
 森毅の目的はどうやら数学に携わる人や、数学そのものについての偏見を振払おうというものらしく、古今東西の数学者のエピソードや現在の数学の成り立ちなどについて解説しており、数学史のようなものになっています。
 考えてみれば森毅はそういった方面も専門なので、当然と言えば当然の流れです。
 まあ、期待とは違っていましたが、読み物として十分面白く読めました。これで偏見が解けるかどうかはちょっと微妙ですけどね。

11月19日の読書と生活 #0776
■書感『獣の数字 2』
 著者:ロバート・A・ハインライン
 訳者:矢野徹
 出版:ハヤカワ文庫SF
 定価:660円
 初版:1993年4月
 関連:ハインライン

 ハインラインの長編SF『獣の数字』の第2巻。
 6の6乗の6乗だけあるという平行世界を移動する装置を発明したバロウズ博士たちは謎の生命体に追われ、異なる世界から世界へと逃げ回る事に……。

 ハインラインと言えば『夏への扉』のイメージが強かったのですが、『メトセラの子ら』などの未来史シリーズを読むと、そのリベラルな思想が見えてくるようになります。本が出た当時はヒッピーに愛読されたと言いますが、なんとなく納得。
 科学的根拠のないタブーにはこだわらない登場人物達の奔放ぶりが60年代の合衆国では好まれたのかも知れません。
 しかし、今SF作品として読むとちょっとイマイチ感が漂いますね。『愛に時間を』はエピソードの連続で面白かったのですが、今回はバロウズ夫妻とゼバディア、ディーティーの会話に終始してしまって、話の進展が遅いです。面白い事は面白いのですが、あくまで一要素なのでそればかりだと飽きてしまいます。しかしまあ、3になるとラザルス・ロングが出てくるという事なので2はがまんして読んだという感じでしょうか。
 ハインラインと同じ年代のSFファンにはマニアックなパロディなどがたまらなく面白いのかも知れませんが、そこまで深くないと逆に楽しめなさそう。
 まあ、こういう作品もあるのだな、という事で。

11月16日の読書と生活 #0775

■書感『人狼城の恐怖 第3部 探偵編』
 著者:二階堂黎人
 出版:講談社文庫
 定価:895円
 初版:2001年9月
 関連:二階堂黎人

 二階堂蘭子シリーズの長編ミステリ小説、『人狼城の恐怖』第三弾です。ひたすら殺人事件が続き第1部ドイツ編、第2部フランス編が終わり、ついに第三部で二階堂蘭子が登場します。

 周囲に現れた様々な符号が蘭子自身のドイツ行きを表していると直感した二階堂蘭子。以前の事件の縁でフランス政府に招かれた蘭子は、銀の狼城で起こった事件の事を知り、調査を始める……。

 ついに登場した二階堂蘭子ですが、物語の始まりは事件の地と遠く離れた日本。その蘭子を導くように様々な出来事が双子の狼城のあるドイツを示します。
 これまでも宗教や歴史に関わる事件が数多く見られた蘭子シリーズ。今回はキリスト教の本場であり、その裏に潜むナチスの遺産など、事件が起こった段階から明らかにオカルト的な展開が広がっています。その全てに、蘭子の合理的な説明が為されるのかが何よりの注目。
 元々、オカルト的な要素の強いミステリを展開しているこのシリーズは、実のところ物語世界の中でのオカルトを完全に否定してはおらず、本当の超常現象が起こる可能性を否定できないのが面白いところです。
 元来、オカルト的なものを信じていない蘭子が様々な現象から自分のヨーロッパ行きを予感したように、彼女自身も明確な根拠がなければオカルトを肯定も否定もしません。
 史上最長のミステリと言われ、二階堂蘭子シリーズとしても明かに最大の事件であるこの人狼城。第3部では蘭子の推理が冴えて様々な真相が明かされますが、事件の解決はまだまだ。
 第4部へと続きます。


11月14日の読書と生活 #0774

■書感『麦酒の家の冒険』
 著者:西澤保彦
 出版:講談社文庫
 定価:619円
 初版:2000年6月
 関連:西澤保彦

『彼女が死んだ夜』から続くタックこと匠千暁シリーズ長編、第二弾です。

 多くの友人を失った事件の傷心から旅行に出たタック、タカチ、ボアン先輩、ウサコの4人。その帰路、遭難しかけた彼らがたどり着いたのは無人の家だった。そこにはベッドが一つとビールがいっぱいの冷蔵庫があるのみ。疲労した彼らはビールを飲み続けながら家の謎について推理を巡らせる……。

 あいかわらず力の入らない設定の匠千暁シリーズ。とにかく飲み会をしながら推理をするという独特のスタイルにふさわしく、今回は山のように詰まれたビールの正体に迫ります。
 メンバー4人がそれぞれの仮説を立てては崩す、というプロセスを繰り返して真相に迫っていく消去法推理ですが、あまり真面目に解決しようと思っているわけでもなさそうで、次々と珍説が飛び出します。名探偵が登場する作品とはまた別な、登場人物と共に頭をひねる楽しさがここにはあります。
 そして、最後に決定的な推理を披露するのがタック。酔えば酔うほど真相に近づいていく、彼の推理力と言うか想像力で事件は幕を下ろします。と言っても、調査をするわけでもなく、推理の裏付けをするわけでもないので、結局誰もが納得できる説が出た時点で推理ゲームはおしまい、という事になります。
 作品も面白いのですが、みんなで知恵を絞って推理を繰り広げるというシチュエーションがまたいいですね。ちょっとあこがれます。事件に恵まれ(?)さえすれば出来る……のでしょうか。
 このシリーズは素人推理ゲームの傑作と言っていいでしょう。西澤保彦はなかなかはまれる作家です。


11月10日の読書と生活 #0773

■書感『人狼城の恐怖 第2部 フランス編』
 著者:二階堂黎人
 出版:講談社文庫
 定価:933円
 初版:2001年7月
 関連:二階堂蘭子シリーズ

 ドイツとフランスの国境付近、アルザス地方にそびえ立つ双子の城、「蒼の狼城」と「銀の狼城」
 ドイツで幻の古城を訪ねるツアーに参加した一行が次々と殺された事件と時を同じくして、フランス側にはアルザス地方の独立を夢見るアルザス独立サロンの面々が、城主への表敬訪問で訪れていた。悲劇はフランスでも起こるのか……。

 669ページをかけて次々と登場人物が殺されていく第1部のドイツ編に続き、734ページのフランス編も殺人のオンパレード。ちなみにフランス編でも二階堂蘭子は名前すら登場せず、おぼろげにその存在が浮かび上がるだけです。
 人狼伝説とからめた第1部と同様、こちらも第2部もオカルトに満ちたストーリーが展開しますが、こちらは第二次世界大戦のナチスドイツにまつわるよりB級なホラー。これから後、二階堂蘭子が登場してすべてに合理的な説明をつけてしまうとわかりきっていても、途中からほとんど伝奇ホラーを読んでいるような気分になっていました。
 正直、第1部と第2部を読み通しても、この事件の謎はさっぱり見当もついていません。そもそもトリックがわかったところで、二階堂黎人が想像できるような結末で落ち着くわけがないですからね。もう二階堂蘭子の登場が待ち切れません。


11月8日の読書と生活 #0772

■書感『彼女が死んだ夜』
 著者:西澤保彦
 出版:角川文庫
 定価:517円
 初版:2000年5月
 関連:西澤保彦

 西澤保彦のデビュー作、『解体諸因』に登場した就職浪人の安楽椅子探偵、匠千暁ことタックが主人公となるシリーズものです。ちなみに時系列は短編集『解体諸因』よりも前で、タックが遭遇した初めての事件という位置づけになっています。

 夏休みを前に飲み会を開いたタックの友人たちだったが、その一人、箱入り娘のハコちゃんが家に帰ると、そこには女性の死体が転がっていた。楽しみにしていたアメリカ旅行を目前に控え、この死体を片づけてくれなければ自殺すると泣き叫ぶハコちゃんを前に、男性一同は呆然とした。事件はその後、思わぬ展開を見せることに……。

 安楽椅子探偵と、いうかタックの場合は酔いどれ探偵かも知れません。仲間達と集まってはビールを飲み、段々と酔いを深めながら様々な想像を巡らせていく、というパターン。自分たちで捜査はしないので、仮説を立てては崩していくという事の繰り返しになります。仲間うちで特に優れているという位置づけにはなっていないため、タックは飲み仲間のボアン先輩やタカチなどの説の聞き手に回る事が多いのですが、最終的にこれという説を出してくるのはいつもタック。推理を披露するとい
うよりは、破綻無く物語を紡ぎだしていく才能があるというタイプですね。
全体的に、ノリ重視に見せておきながら最後にはあっと言わせてくれるのが、西澤保彦の持ち味。
 いつも異色のミステリワールドを楽しませてくれます。


11月7日の読書と生活 #0771

■東京モーターショー2002

 毎年恒例、幕張メッセで行われる自動車業界最大のイベントがこのモーターショー。今年は商用車ということで、コンセプトカーなどはほとんどないのですが、技術的には面白そうなので行ってみました。
 行く途中、東京駅で京葉線に乗り換えるときにはかなり混雑したものの、大半はディズニーリゾートへ行くため舞浜で下りる親子連れでした。
 やはり乗用車・二輪車のときとは違い、大盛況というわけにはいかないようです。商用車というのは言い換えれば「働く車」昨年と違い、若い人はあまりいませんでしたが、トラックやバスの運転席に乗せてもらっている子供などが目立ちました。会場にはヴィンテージカーの展示などもあり、オート三輪やロータリートラックや、ホンダのボンゴなどなかなか歴史を感じさせます。
 各社とも、エコ関係に力を入れており、水素自動車やハイブリッドカーの展示が数多く見られました。実用化されているものも多いようですね。ノンステップバスや荷物の積み下ろしが楽なトラックなども各社こぞって出展していました。
 だいたいどこの会社もベースとなる車があり、その派生という感じ。同じ車種でトラック、冷凍車、消防車などが並んでいるのを見るのはなかなか面白いです。
 一つだけ異彩を放っていたのはホンダブース。おなじみASIMOのパフォーマンスと共に、話題の燃料電池車や、商用と趣味と両面で使えるアクティのトレーラータイプなどが展示され、人気を集めていました。
 商用、乗用という垣根はやがてなくなり、消費者のニーズに合わせてオリジナルの車を注文していくような時代になっていきそうな気はします。
 派手さはないが興味深い商用車のモーターショー、なかなか勉強になりました。


11月2日の読書と生活 #0770

■書感『完全無欠の名探偵』
 著者:西澤保彦
 出版:講談社文庫
 定価:714円
 初版:1998年5月
 関連:西澤保彦

 山崎みはるはその名に似合わず、身長2メートルに達しようかという大男。非常に真面目なのに頼りなく、少し抜けている彼だったが、ある一つの特技を持っていた。彼を前にすると、誰もが自分の事を語りだし、語っているうちに様々な出来事の真相に気づいてしまうのだ。ある企業家が孫の様子を見るためにみはるを派遣した四国の女子大で起きた事件を巡り、あらゆる人間が探偵となって事件の真相に迫る……。

 異常なまでに聞き上手で、あらゆる人間が筋道を立てて自分の体験を話してしまい、その裏に潜む真相に気づくという解決法はまさしく前代未聞。もちろん、一人一人が細かい事に気づいて納得してしまうだけなので、全体像は誰にも把握できません。すべてを知ることが出来るのは、読者の視点だけで、山崎みはるに至っては何一つ知らなかったりします。
 タイトルこそ『完全無欠の名探偵』ですが、山崎みはるはほとんど何もしません。しかし、現場に出て捜査をする探偵よりも安楽椅子探偵の方が高い能力を持っているように見えたりするのと同じように、何も知らず、何もしない探偵の方がむしろすごいのかも知れません。
 たたみかけるように推理の連鎖が起き、事件の真相へと突進していくこのスピード感は他ではなかなか得られない興奮を提供してくれます。この特異な発想こそ西澤保彦の最大の武器でしょう。


11月1日の読書と生活 #0769

■書感『鳴風荘事件 殺人方程式II』
 著者:綾辻行人
 出版:光文社文庫
 定価:686円
 初版:1999年3月
 関連:綾辻行人

 前作、『殺人方程式』に続く飛鳥井叶と響の双子シリーズ第二弾。館シリーズやホラー作品の印象が強い綾辻としては珍しいユーモアミステリです。

 10年ぶりに中学の仲間と再会した深雪は、かねてからの夢であった「刑事の奥さん」になった事を証明するために警視庁の刑事である夫、叶を同行するはずだった。タイミング悪く盲腸で入院した叶に代わって双子の兄、響を連れていく事に。
 かつて姉を殺された中学の頃の同級生、夕海は、その姉そっくりに変貌していた。その驚きもつかの間、再開の場である山中の別荘を舞台に殺人事件が発生する……。

 血が苦手な警視庁の刑事、叶とその双子の兄である趣味人の響。刑事の弟と、ふらふらしているが推理力の優れた兄という二人のコンビで事件を解決するのがこのシリーズです。
 今回は盲腸でダウンした叶に代わって、推理小説マニアである兄の響がより「刑事らしく」振る舞っているのが笑えるところです。
 タイトルにある「方程式」が示すように、前作も今作も響が事件の謎を解き明かすために計算をするのがクライマックスなのですが、正直、わざわざ方程式と銘打つほどのものではないです。全体的に割とよくあるタイプのミステリとなってしまっていて残念ですが、それはあくまで綾辻トリックを期待するからであり、決して出来が悪いというわけではありません。
 綾辻本人にとってはむしろこういった作品が息抜きなのかも……と思わせます。




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