金属同士がぶつかる鈍い音が、カハーサ砦の中庭に響いた。二人の騎士が、長剣と楯を手に稽古をしている。一方の騎士は背の高い若者、もう一方は壮年期も終わりにかかろうかという年齢の騎士だ。
流れ落ちる汗が若い騎士の栗色の髪を濡らし、地面へと落ちる。だが、壮年の騎士は汗どころか、呼吸も乱していない。
気合いと共に、若い騎士が右手の剣を打ちつける。だが、壮年の騎士の楯がそれを阻んだ。反撃を封じるために、若い騎士は体ごと楯にぶつかろうと踏み込む。しかし、壮年の騎士はそれをするりとかわし、楯を持っていない右側へと回り込んだ。そして、平衡を失った若い騎士に鋭い斬撃を放つ。
若い騎士はとっさに長剣をかざしたが、受けとめた衝撃は予想よりはるかに軽い。疑問を感じた瞬間、壮年の騎士の逃第二撃が、若い騎士の喉元につけられた。
「参りました、レオネル様」
一瞬の静寂の後、若い騎士は、乱れた呼吸を整えながら言った。
「受けとめたからといって油断してはいかん。二撃、三撃への備えを忘れてはならぬ」
「はい、まだまだ未熟なようです」
壮年の騎士、レオネルは肩を落としている若い騎士を見て、思わず微笑を浮かべた。
「なに、経験が足りないだけだ。お主ほどの才能はまれなものだよ」
「恐縮です」
二人は剣を納めた。
「お父さま、マルケン様」
中庭の隅から、長く黄金の髪を伸ばした美しい娘が手を振っていた。
「ユーリアよ、見ていたのか」
「ええ。お父さまったら、マルケン様にはまるで手加減しないものですから、ユーリアは気が気ではございませんでした」
若い騎士は耳まで真っ赤になった。
「そ、そんなことはありません。私が未熟なだけなのです」
「いや、それは違うぞ、マルケン。お前相手には手加減はできん。すれば一本とられるのは私の方だ」
レオネルは白いものが混じり始めた口ひげをしごきながら言う。
「だが、今日はどうも動きが固いと思ったら、こいつめ、ユーリアにいいところを見せようとしていたな」
「と、とんでもございません」
ユーリアはあわてるマルケンと人の悪い笑いを浮かべたレオネルを交互に見て、おかしそうに口元を隠した。
ダネル公カイネンの親書を携えた伝令が早馬でやって来たのはそんな午後だった。
ハ